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LIVE中はたまにある。あ、私今いなくなったみたいな。だから行くんだと思います
- 新井さんは文章を書かれますが、新井さんは歌詞についてはどう考えてますか?
あんまり気にしてないですね。今好きなバンドは9割くらいはどうでも良くて、たまに凄くいい言葉が入ってくる独特な感じのバンドで。自分じゃ絶対つくらないだろう言葉は好きだけど、歌を聴いているときは歌詞は全く意識してないですね。
クリープハイプはすごく歌詞がいいので、そういう意味では歌詞を読んでちゃんと聴きたくなります。そういう感覚は久しぶりです。
- なかでも何が好きですか?
尾崎さんがいない歌詞がすごい好きです。主人公が女の人の歌詞とか。尾崎さんが語り部みたいになっていて、女のアタシとか言っているんだけど変じゃない。それが小説的で好きです。それを出来るアーティストってなかなか居ないと思います。
- クリープハイプのなかで思い入れのある曲はなんですか?
さっきと反対になってしまうんだけど、『バンド』。
自分のことばっかり大事にしちゃって、それが良くないのは分かっているけど、どうしても上手くやれない、もどかしさがすごく知っている状態というか。
〈消せるということはあるということ〉
あれ、すごい。音楽がないとあの感じは出せない。『バンド』を聴いてから歌詞を聴くようになりましたね。
- 新井さんのなかでクリープハイプと共通している部分や、分かると共感できる曲はありますか?
この前自分のラジオをやったときに、『身も蓋もない水槽』をかけました。ああいうわっーとした怒りは嫌いじゃないです。というか大好きです。怒ってるんだけど、怒って自分も俯瞰しているみたいな感じがリンクするかな。
- 怒りがわいてきたときはその瞬間に表現するんですか?
そうですね。一番嫌なことはその時にじゃなくて「あの時」っていうヤツ。どうしようもできないじゃんって思います。その瞬間に言って、言った後に忘れる。
- エッセイにも筆が乗るときは怒りが湧いてきた時と書かれてましたね。
怒りとか、気分が落ちたりとか感情がブレたときに筆が乗る感じがします。書いてると怒りがだんだん変質していく。自分に対する怒りが一番書けます。他人に対しての怒りは持続性が全くないです。
- たしかに新井さんは自分の感情を客観的に見てますよね。
わりとそう。離れている感じ。冷静に見てる自分は絶対に消えないですね。それが良いことか悪いことかは分からないけど。
- それはLIVEのときも?
うーん、LIVE中はたまにある。あ、私今いなくなったみたいな。だから行くんだと思います。凄くいいLIVEで尚且つ、いろんなものがマッチすると自分がいなくなる感じはある。けどなかなか難しいですね。
すごく良すぎる時って、今死にたいと思いますね。死にたいというシュッと消えたいみたいな。とにかく声が良いとそう思います。
- だとするとバンドは声から好きになっていくことが多いんですか?
そうですね。だいたい声からかな。
- どういう声が好きなんですかね?
うーん、心地よい。あとは基本的に音を外さない人が好きですね。
旋律に対して、下目にとってカッコよくみたいなのが苦手で、ぴったり合ってるラインにフワッとのせてほしい。それが意外とビジュアル系に多いんですよ。ピアノが出来たりとか合唱団をやってたりとか。クラシックと近いとこがあって、そういう素養があって入る人が多い。
町屋良平さんの『1R1分34秒』とクリープハイプの『泣き笑い』
- 僕たちはBGMeetingという本と音楽を合わせるイベントを開催しているのですが、新井さんは本と音楽を掛け合わせることについてどう思われますか?
面白いと思います。音楽だとその場で聴けるのが良いですよね。おすすめの本とか持ち寄るけど、結局、本をおすすめされてもその場で読めないから。
ああ、じゃあ家に帰って読みます、みたいな(笑)
3分とかだとみんなで聴ける。音楽って本当に知らないもの多い。自分だけで探そうとするとなかなか出てこないものもありますし。
これに合う曲は、とか思いついたら面白いよね。歌詞がリンクしたら最高だけど曲調とか手触りとかがマッチしても面白いですね。曲をつけることによってその小説が終わったあとの印象が変わるのも良い。暗い映画のエンドロールにあえてポップスをつけるような違和感を出しても面白いよね。
今はブラック企業で働いている人の物語を読んでいるんだけど、暗い曲だけじゃなくてFall Out Boyの『I Don’t Care』をつけるのも面白いかも。
- 新井さんが音楽と小説を掛け合わせるとするとなんですか?
読んでたときに聴いてたのもあるんですけど、町屋良平さんの『1R1分34秒』とクリープハイプの『泣き笑い』。
1Rは芥川賞、純文学なので読みにくそうに思われるんだけど非常にドライブ感があって、深い意味を考えなくても流れを追うだけでも楽しめるのが気持ちいいですね。『しき』もクリープハイプっぽい。町屋さんの小説は全体的にクリープハイプと合うと思いますね。
- 尾崎さんも町屋さんの帯にコメント書いてましたもんね。
町屋さんもクリープハイプがお好きだそうです。好きなものが似ているとなんか嬉しい。文芸誌でやってた町屋さんと尾崎さんの対談が凄くて。2人があまりに言葉が通じすぎちゃってたまに何を言ってるのか分からない。これは凄いぞ!って2回くらい読みましたね。
クリープハイプ好きなら町屋さんを読むと気持ちいいし、町屋さんが好きならクリープハイプを聴いても気持ちいい。気持ち良さの感じが似ていますね。
『しき』は高校生がダンスをする物語なんですけど、その感じとかもダンスの曲そのものじゃなくて、それを経験する高校生たちの流れるような物語。合いそうなのは『手と手』かな?『死ぬまで一生愛されてると思ってたよ』のアルバムそのものが合う感じもしますね。
- ”死ぬまで〜”だと好きな曲はなんですか?
『イノチミジカシコイセヨオトメ』がすごい好きですね。自分のテーマみたいな。物語でいうと、『ちひろさん』っていう漫画が合いそう。街のお弁当屋さんで働いている元風俗嬢の美人な女性の話。ちひろさんというより、ちひろさんが居た世界にこういう女の子が居たような気がする。
- このアルバムの『ABCDC』とこだまさんの『夫のちんぽが入らない』がマッチするなと感じました。
私もこだまさんとクリープハイプは合うなと思っていて。
ゴトウユキコさんが書いた『夫のちんぽが入らない』の漫画とクリープハイプがすごい合う。新たな価値が加わっていてとても良いコミカライズでした。漫画にすると、シーンの切り方がすごく良い。
- 自分の本に曲がつくってどういう気分なんですか?
すごい嬉しいと思う。とりあえず聴いてみることができるから良いですよね。
- 来月からは日比谷にあるHMV&BOOKS HIBIYA COTTAGEで勤めると伺いました。長年働いてきた三省堂書店を辞めて、あえてHMVにしたのはどうしてなんでしょうか。
とくに大きな意味はないです。誘われたので行くって感じで。とくに断る理由もなかったので。
イベントとかも音楽に絡めたことができたら良いと思います。書店でも何度か音楽の人が来たときに余興みたいな感じで演奏してもらったことがあって。でも設備がないんですよね。マイクの音質もあまりよくなくて。
- 音楽が好きで経験者の新井さんだからこその悩みだったんですね。これを期に新しい新井ナイトがみれたりするんでしょうか。
そうですね。まだまだ面白いことがやれると思ってます。
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