シンガーソングライター・伊東歌詞太郎(いとう かしたろう)さんの初エッセイ。
著者自身の小学生時代からの過去を紐解きながら、その中で自分だけの譲れない信念や生きていくためのヒントを見つけていく。
こんな人におすすめ!
- 今の自分に悩んでいる人
- 伊東歌詞太郎さんが好きな人
あらすじ・内容紹介
本書は幼少期からシンガーソングライター・伊東歌詞太郎として活動している現在までのエピソードを綴っている。
小学生の頃に感じた孤独のおかげで1人の楽しみを学んだ。
中学生の頃には人生初めての挫折を学び、高校生の頃には家族との縁について考え、ちょっとした寄り道も有意義な事だと知り、大学生の頃にはがむしゃらにやり抜くことを突き通し、シンガーソングライターとしてデビューしたての頃には音楽への感謝を感じた。
これらは全て現在の糧になっていった。
そして、誰にでも気持ちの浮き沈みがあったり、不安、迷い、恐怖といった自分の自信を削いでしまう感情を持つことがあるが、彼には1つだけ絶対的に自信をもっていることがあった———。
『僕たちに似合う世界』の感想・特徴(ネタバレなし)
過去の経験が教えてくれたこと
小学生の頃はいじめを受けていた。
それでも学校に通い続け、たった1人で孤独な戦いをしていた。
昼休みに1人で過ごす音楽準備室は好きな音楽に浸れる憩いの時間で、この時間があったから好きなものにのめり込む大切さを知れた。
何より人との距離の取り方を肌感覚で学んだ。
人の顔色を伺うことに長けた。
そのおかげで社交的になれた。
小学生の頃には頭で考えるまでに時間もかかっていたが、大人になるにつれて短い時間で人が不快にならない言葉を自然に返すことが出来ていた。
「人の顔色をうかがう」というと、あまりいい印象ではない言葉かもしれないが、こうやって社交性に繋がるケースもあるのだ。
中学生の頃、初めての学園祭でバンドのメンバーと地味だけど演奏・歌唱力の高さはエントリーしていた中ではトップクラス。
自分達が高評価をもらえるのは当然だと思っていた。
結果は、当然ながら1位になったもののメンバー達は本気でプロを目指そうとしていた伊東さんの期待を裏切る一言を発した。
これから先、当たり前に音楽で生きていくと思っていたから、プロになる気がないという発言は衝撃的だった。僕の人生初の挫折と言っても過言ではない。
そして、この時が彼にとって人生のターニングポイントになった。
自分を好きでいることは、自信を持つこと
自分本位のナルシストになればよいという意味ではなく、自分が好きでいるということは、自分という器を満たすことで周りに対して気を遣えるようになったり、優しくなれるということだ。
自信を持つには、
常に自分に向き合い続け、この人は好きだなと思えるように生きていくことだ。
この様な余裕のある状態だと、より一層自信を高められ、周囲との関係もうまくいく。
あとは、悩んだり辛いことや苦しいことがあっても、とことんもがいてみることだ。
とことん悩み抜いてみると、いつの間にかスッと視界が晴れてくる。
悩みつくして嫌なものではなかったならば、それが才能になる。
伊東さんの1番の才能は音楽に対する愛だ。
他者の評価は二の次で、たとえ誰にも評価されなくても自ら作った音楽は全て好きで、世界で1番のファンが自分自身である。
それが天才であり、才能があるということだ。
比較の対象を他人から自分にすることで承認欲求から解放され、ストレスもなくなっていく。
「自己からの欲求は絶え間なくある」という伊東さんは昨日の自分に負けない様に今を一生懸命生きている。
毎日全力シンガー
足を引っ張るような言葉は聞かなくていい 君は夢を見るべきだ
「好きなことを仕事にするな」という人もいるけれど、それは間違いで好きなことは仕事という感覚を忘れて楽しくなれるもの。
彼自身が毎日幸せでいるのは音楽が大好き大好きでたまらず、毎日歌っているからだ。
例え、結果が上手くいかなくてもそれは失敗ではなくて、それまでのプロセスを全力でやっていればそれはもう成功と同じだ。
努力が報われないからといって、そこで諦めてしまうよりも、全力でやり切った方が良いことを彼は知っている。
レベルアップの瞬間というのは、突然やってくる。だけど、常に本気で向き合っていなかったら、その瞬間は訪れない。
お客さんの前で歌うことは彼にとっては常に最高の姿を見せることで、伊東歌詞太郎という生き様を見せているのだ。
まとめ
本書の語り口は読者に向けて喋りかけて来る様な気さくな感じで、読みやすい。
自らの様々な体験をはじめ、良い思い出とは言えない苦い経験もさらけ出している。
しかし、自分の好きなことや楽しいと思うことも同じくらい書き記されている。
ファンへの感謝が尽きず、自身が叶えたい夢の話も大きい。
これだけ歌が好きな歌手は彼以外にはいないのではないかと思ってしまう。
本に音を載せることは出来ないが、本書はシンガーソングライター・伊東歌詞太郎が歌う歌の様に力強くも優しく語りかけて来る。
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