異様な清廉さと異常な聡明さ、異形の羽を持つ少女・〈羽川翼(はねかわ つばさ)〉。
異常な家庭環境と〈阿良々木暦(あららぎ こよみ)〉への恋心から、2度〈猫に魅入られた〉彼女の前に、今度は〈虎〉が立ち塞がる。
そして現れる、〈何でも知ってるおねーさん〉こと〈臥煙伊豆湖(がえん いずこ)〉。
〈苛虎(かこ)〉と名付けられた虎に、羽川翼はどのように向かい合うのか。
『〈物語〉シリーズ』セカンドシーズンの幕開けを告げる、新たな怪異譚。
こんな人におすすめ!
- 西尾維新氏のファンの人
- 『猫物語・黒』を読了済みの人
- 『〈物語〉シリーズ』が好きな人
あらすじ・内容紹介
異形の羽を持つ少女、〈羽川翼〉。
かつて異様な家庭環境と淡い恋心から〈猫に魅入られた〉彼女は、2学期が始まって早々に巨大な〈虎〉の怪異と相対する。
そして〈虎〉と行き遭ったその日、羽川翼の家は火事になり全焼した。
自宅を失った羽川翼は、かつて怪異の専門家である〈忍野メメ(おしの〜)〉が逗留していた学習塾跡や、友人である〈戦場ヶ原ひたぎ(せんじょうがはら〜)〉の自宅、そして〈阿良々木火憐(あららぎ かれん)〉と〈阿良々木月火(あららぎ つきひ)〉から誘いを受け阿良々木家など、あちらこちらを転々とする。
しかし、羽川翼が逗留した直後の学習塾跡が全焼したことで、彼女は火事の規則性に気付く。
更に、〈何でも知ってるおねーさん〉を自称する専門家の元締め、〈臥煙伊豆湖〉と、吸血鬼狩りのヴァンパイア・ハーフ、〈エピソード〉の登場が、物語を加速させる。
〈苛虎〉と名付けられた虎の怪異を前に、羽川翼はどのように向かい合い、どのような決断をするのか。
その決断は、彼女に何を齎すのか。
〈物語〉が更に加速する、シリーズセカンドシーズンの幕開けにして、『猫物語・黒』のアンサー作品。
『猫物語・白』の感想・特徴(ネタバレなし)
『〈物語〉シリーズ』、セカンドシーズンの開幕!
私はなんでも知っている
今作『猫物語・白』は、『〈物語〉シリーズ』セカンドシーズンの幕開けを告げる、謂わば〈新章〉の開幕となる作品だ。
セカンドシーズンは新たな人物や怪異が多数登場することで、ファーストシーズンで曖昧に終わらせていた、あるいは誤魔化していた問題が掘り下げられ、結果として登場人物たちは様々な決断を迫られることとなる。
そんな新たな登場人物の中でも、特に大きな存在感を放つキャラクターが〈何でも知ってるおねーさん〉こと、〈臥煙伊豆湖〉だろう。
ファーストシーズンに登場した3人の専門家、〈忍野メメ〉〈影縫余弦(かげぬい よづる)〉〈貝木泥舟(かいき でいしゅう)〉の大学時代の先輩にして、専門家の元締め。
〈何でも知ってるおねーさん〉と自称する通りの全能性など、そのインパクトは強大だ。
また、もう1人の要注目人物が吸血鬼狩りのヴァンパイア・ハーフ、〈エピソード〉だろう。
『傷物語』において、吸血鬼となってしまった〈阿良々木暦〉と死闘を繰り広げた彼は今作において、臥煙伊豆湖から出動要請を受けた〈味方〉の専門家として登場する。
今作で描かれる事件とは別件で動いている様子の新旧2人の専門家が、どのような活躍を見せるのかは、大きな見所だろう。
初の〈ヒロイン視点〉
だから、猫になった。怪異になった。私になった
更に、『〈物語〉シリーズ』セカンドシーズンからは、〈ヒロイン視点〉から描かれたものが加わった(もちろん、阿良々木暦視点の作品も存在する)。
今作『猫物語・白』で語り部を務めるのは、シリーズを通して大きな存在感を放つヒロインの1人(副音声ではメインヒロイン)、羽川翼だ。
彼女の視点で描かれる故、今作では本筋に影響しない雑談は少なめだ。
しかし、ファーストシーズンでは阿良々木暦の視点でしか語られなかった物語が、別の人物の視点から描かれるのは、大きな見所だろう。
また、阿良々木暦が語る〈阿良々木暦評〉と、羽川翼が語る〈阿良々木暦評〉の違いなどをはじめ、各人物への評価や描写の違いを探してみるのも面白いかもしれない。
加えて今後のシリーズでは、更に別の人物からの視点での物語も綴られる。
それらと比較することも、今後シリーズを読み進めていく上での楽しみとなるだろう。
描かれる『猫物語・黒』へのアンサー
羽川翼を自分として知るべきだ
そして今作は、『〈物語〉シリーズ』ファーストシーズンに当たる『猫物語・黒』へのアンサーとしての意味合いも込められている。
ゴールデンウィーク、そして1学期と、ブラック羽川にストレスを全て委ね、清廉且つ聡明な優等生であり続けた羽川翼。
そんな彼女が、〈苛虎〉と、〈過去〉と向かい合い、どのような結論を出すのか。
彼女の生き方・在り方はどのように変わっていくのか。
〈ゴールデンウィークの悪夢〉から続いた、羽川翼の物語の結末からは目が離せない。
まとめ
『〈物語〉シリーズ』セカンドシーズンの幕開けを告げる今作。
ファーストシーズンではヒロインの1人であった羽川翼の視点から物語が綴られており、これまでの作品とは違った味わいのある作品となっている。
更に、『猫物語・黒』『化物語』と続いてきた、ブラック羽川との向き合い方、そして抱えた家庭環境との向き合い方、自らの心との向き合い方に1つの結論を出す、アンサーとしての側面も大きい。
シリーズの大きな転換点になる作品であるため、続刊を読み進めたのちに読み直しても、また異なる味わいのある作品だ。
この記事を読んだあなたにおすすめ!
『混物語』あらすじと感想【打倒〈阿良々木ハーレム〉!阿良々木暦×ヒロインズのコラボ作品集‼︎】
書き手にコメントを届ける