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『夜のふたりの魂』あらすじと感想【初々しい人生最後の恋愛】世界22か国でベストセラー

『夜のふたりの魂』あらすじと感想【初々しい人生最後の恋愛】世界22か国でベストセラー

素敵な恋愛が描かれた小説と出会ったので紹介します。

ケント・ハルフの『夜のふたりの魂』です。

世界22か国でベストセラーになり、Netflixオリジナル作品『夜が明けるまで』の原作となった作品です。

この小説の筆者であるケント・ハルフは妻のキャシーに「僕らの物語を書こうと思うんだ」とこの小説を書いたそうです。

ハルフが好きだったのはキャシーと夜、ベッドに横たわり手を握りあって話をしながら寄り添って過ごす時間だったから。

そしてこの物語を書き上げて、出版については見届けることなくハルフは亡くなりました。

遺作となったこの作品の邦訳版は昨年の10月に発売されました。

穏やかで初々しい人生最後の恋愛の物語を知って欲しいと思い紹介します。

あらすじ

5月の夕暮れ、シーダーストリート沿いの街に暮らす70歳の女性アディーは近所で同じように1人で暮らす男性ルイスの家を訪れます。

そして彼女は夜、ベッドで横になってお話をして一緒に眠る提案を持ちかけます。

夜を乗り切りたい、と彼女は言います。

アディーは夫を亡くしてずいぶん経っていてルイスもまた妻を亡くしてずいぶん経っています。

ルイスは驚きながらもアディーの申し出を受けて話は始まります。

それぞれの伴侶に先立たれた男女が互いの孤独を埋めるため話をしながら一緒に眠るのです。

二人はたくさんの会話やアディーの家で預かることになったアディーの孫との関わりを通して絆を深めていきます。

夜の闇の静けさの中で、穏やかですが深くて強い、ふたりの新しい愛の物語です。

注意
ここからネタバレ注意

夜のふたりの魂の感想(ネタバレ)

物語は決して平坦ではありません。

ふたりにはそれぞれ今まで過ごしてきた長い道のりがあります。

かつて共に過ごしたパートナーの記憶もあれば、世間の人からは汚点と見做されてしまうような過去もあります。

さらに70歳になるふたりの恋は近所の人や息子からすれば滑稽にうつることもあります。

2人はそんな世間の目を気にせずに過ごしていますが段々とアディーは息子の言うことを無視できなくなっていきます。

アディーには孫がいて孫との繋がりをとても大切に思っているからです。

そしてルイスもまたアディーの大切にしているものを大切にしたいと思っています。

ただ気持ちの強さで乗り切っていくような物語ではなくて、周りの目や状況の変化によって切なく感じてしまうような揺れ動きのあるストーリーでもあります。

まとめ

何といっても2人の会話が素敵です。

夜の闇の静けさの中で身を寄せ合って話をする場面はどれも夢のような時間が流れています。

邦訳された文章の会話部分には改行で分かりやすくなっていますが「」がありません。

私は読んでいて言葉がそのまま胸に届くようで、静かな雰囲気にぴったりだと感じました。

序盤でルイスがアディーの子ども時代のことや今の気持ちや好みなど色々聞きたいことがあると言います。

アディーもあなたに同じことを全部聞きたいと返します。

ふたりは急がず自分たちのペースで眠りに落ちるまでおしゃべりを楽しみます。

そんなおしゃべりの11つが温かく気持ちに残ります。

ただ世間の噂話は当然のように雑音としてふたりの耳に入ってきます。

2人の雰囲気に小さく陰を落としながらも、ふたりが夜ひっそりとお互いの話をして嬉しい気持ちになって、翌日がまた楽しみになるような日々はとても素敵です。

私は読んで、毎日を過ごす中で穏やかでほんの些細なことがどれだけ喜びに満ちているのか感じさせられました。

1番胸に残ったのはラストのシーンです。

物語の終わり、遠くで暮らすことになったアディーとルイスとの電話での会話。

ルイスは「今夜は何を話したい?」と聞きます。

その言葉を受けてアディーの言葉は

「ねえ、今夜そっちは寒い?」

この言葉で小説は締めくくられています。

大切な相手の触れている空気の温度や見ている景色に興味を抱ける関係は、周りの目はどうあったとしても、素敵だと思います。

うまくいかないふたりの関係の中で、アディーのその言葉が私にとって1番印象的でした。

すぐに自分のことや自分の気持ちばかりになってしまいがちな私でも、11日頑張って、少しでも意識を周りに向けられるようなアンテナを持てばこの小説のアディとルイスのように身近なところで喜びを感じられるようなお年寄りになれるのでしょうか。

海外の小説ですがとても読みやすく、シンプルでまっすぐな言葉で綴られています。

静かな気持ちで深い余韻を味わえる、素敵な恋愛小説でした。

主題歌:不可思議/wonderboy『Pellicule』

不可思議/wonderboy 『Pellicule』

音楽に合わせて自作の詩を読み上げるポエトリーリーディングという形式の曲です。

詩の内容は久しぶりに会った友人と会話をしているものです。

切なくなるような音楽に乗せて、過ごしてきた時間のことを思い浮かべてこれから先を見つめる詩が胸を打ちます。

アディーとルイスの会話とこの曲の友人に語り掛ける言葉に触れた時の気持ちが重なったので選びました。

残念ながら不可思議/wonderboyは2011年に交通事故で若くして亡くなりました。

彼の残す曲に込められた繊細だけども強くて熱い気持ちはずっとこれからも私の中に残ります。

この『夜のふたりの魂』も同じです。

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