ひょんなことから1つの物事に熱中するようになり、気づけばそれが特技や趣味になっていた。そんな経験をしたことはありませんか?
これから紹介する『トリツカレ男』の主人公ジュゼッペは、まさにその道のプロフェッショナル!特技の数は十指に余るほどあるというのだから驚きです。
一目惚れした少女を喜ばせるために、ジュゼッペが次から次へと披露していく特技は一体どんなユニークなものなのか、ワクワクしながらページをめくってもらいたいです!
目次
こんな人におすすめ!
- 多趣味な人
- 一途で誠実な主人公を求めている人
- 読後感の爽やかな恋愛小説に出会いたい人
- 「何か新しいことを始めたい!」と思いつつも踏み出せない人
あらすじ・内容紹介
レストランでウエイターとして働く主人公ジュゼッペは、街のみんなから好かれる「トリツカレ男」。ひとたび何かの魅力に取り憑かれると、極めるまでとことん取り憑かれたもの一筋の生活を送ります。たとえば、オペラや三段跳び、探偵ごっこに昆虫採集など、たった2年間でジュゼッペは実に20個以上の様々なものに取り憑かれるのです。
とある休日の午後、噴水で有名な公園へ散歩に来たジュゼッペは、風船売りの華奢な美少女ペチカに出会い、彼女の笑顔を向けられた瞬間、恋に落ちます。ものの見事にペチカに取り憑かれたジュゼッペは、何度も言葉を交わすうちに、ペチカと長年の親友のような関係になっていきます。
ジュゼッペと喋るときのペチカは、いつも心底楽しそうな笑みを浮かべているように見えますが、実はその笑顔の底には「トリツカレ男」にしか気づけない灰色のくすみがあったのです。
悩みだらけのペチカの「最大の心のシコリ」とは。ジュゼッペは、愛するペチカの「本当の笑顔」を、どんな特技を駆使して取り戻すのか。
一途で誠実な主人公が大活躍する、後世に語り継ぎたい短編恋愛小説の傑作!
『トリツカレ男』の感想・特徴(ネタバレなし)
1度没頭したら極めるまで!尋常じゃない「取り憑かれ力」
なにかに本気でとりつかれるってことはさ、みんなが考えてるほど、ばかげたことじゃあないと思うよ
ジュゼッペは没頭の達人です。あるものに没頭し始めると、その道のプロ顔負けのレベルに必ず達します。中途半端な状態で飽きてしまうことは決してありません。
第1章で、ジュゼッペが取り憑かれた「三段跳び」が最も分かりやすい例です。ある日の夕方の空き地で、必死に飛んでいるバッタを見たジュゼッペは、その瞬間から三段跳びに取り憑かれ、朝から晩まで熱心に三段跳びを繰り返すようになります。その結果どうなったか。
ホップ、ステップ、ジャンプ!
嘘じゃない、ジュゼッペは試合用の砂場を跳び越えちまったんだ。
なんと、はじめて参加した三段跳びの地区予選大会を世界記録で優勝してしまうのです!
本書では、この他にもまだまだ夢のような「ジュゼッペ伝説」がジェット風船のような勢いで登場するので、楽しんで読み進めることができます。
好きな人の「悩みの種」を徹底的に取り除く!ジュゼッペの行動力に思わず脱帽
ジュゼッペが一目惚れした風船売りの少女ペチカには、彼女の力ではどうすることもできない大きな2つの「悩みの種」がありました。
1つ目の悩みは、お金の問題。ひどい喘息で寝たきり状態の母親の治療費を払うために、街のギャングの親分に借金をしているのです。借金を返そうと風船売りの仕事を一生懸命頑張るペチカですが、生活はカツカツで、食事は安いりんごだけという悲惨な状況。
ジュゼッペは、相棒の「喋るハツカネズミ」の調査によってそれを知り、1秒でも早く問題を解決するために、危険を顧みず、ギャングのアジトへ単身乗り込みます!
トリツカレ男よう、わかってんだろ。借金は借金だ。(…)痛い目にあわないうちに、帰んな、ほら、帰んな!
「童顔でやせっぽっちの小男」であるジュゼッペが、筋肉ムキムキのギャングの親分に喧嘩で勝てるわけがないのに、どうしてそんな無謀なことを…。そう筆者が思った矢先の出来事でした。ジュゼッペは以前取り憑かれていたときに手に入れた「あるもの」をギャングに差し出し、1発KOを決めるのです!
「あるもの」を受け取ったギャングのギャップある反応に、思わずクスッと笑ってしまいました。
ツイスト親分はジュゼッペの膝にすがりつき、頬ずりしながら、今後お前さんの頼みはどんなことだってきくぜ、おれの親友、いやさ兄弟、といった。
このように、ジュゼッペが持ち前の特技と行動力をもってして、愛するペチカの悩みをとことん取り除いていく所が、本書の大きな見どころの1つです。
※ペチカが抱える2つ目の悩みは、物語の根幹となる話なので本記事では触れません。ぜひ本書を手にとって、ご自身の目で確かめてみてほしいです。
「トリツカレ男」の迷いのない真っ直ぐな生き様
きみが本気をつづけるなら、いずれなにかちょっとしたことで、むくわれることはあるんだと思う
筆者がとりわけ心動かされたのは、ジュゼッペが熱中し、極めた特技や趣味の数々が彼の人生を彩り、好転させ、大切な人を守るときの大きな力(武器)になっているということです。
一見関係ないように見えた点と点が繋がって線になり、やがては面になる。そんなイメージでしょうか。
ジュゼッペが苦手な作業を嫌々とやっている描写は、本書には一切登場しません。些細なことから魅力に取り憑かれ、好きになったことについて四六時中考え没頭する。それが「トリツカレ男」の正体です。
「苦手なことや、やりたくこともないことをやりすぎていませんか?」
「自分の好きなこと・興味があることに集中すれば、今よりもっと人生楽しくなりそうではありませんか?」
「誰に何と言われようと、好きなことを続けよう。いつかきっと、ちょっとしたことで報われるかもしれないよ」
本書はピュアなラブストーリーですが、筆者は上記のような強烈なメッセージを、「トリツカレ男」の迷いのない生き様に感じました。
まとめ
多趣味な人には共感の嵐を、無趣味で悩んでいる人には一歩踏み出す勇気を与えてくれる『トリツカレ男』。
ここで紹介できなかった魅力以外にも、たった160ページの本書の中には、あなたの人生をより豊かにしてくれる感動の名言・名シーンが盛りだくさんなので、ぜひ読んでみてほしいです。
加えて、ミステリー要素も楽しみたい方は、この本の「語り部」は誰なのかを予想しながら読み進めるのも良いでしょう。
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