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『屍人荘の殺人』原作小説あらすじと感想【ミステリー賞4冠達成のかつてない「クローズドサークル」】

『屍人荘の殺人』あらすじと感想【ミステリー賞4冠達成のかつてない「クローズドサークル」】

湖畔のペンション、謎の脅迫状、自殺したサークルの女子部員。

謎の美少女探偵・剣崎比留子(けんざきひるこ)がもたらした、ミステリファンには堪らないシチュエーションでの合宿の誘い。

まんまと釣られたミステリ愛好会会長の明智恭介(あけち きょうすけ)と、会員の葉村譲(はむら ゆずる)を待ち受けるのは、前代未聞の事件。

「このミス」や「鮎川哲也賞」など、様々な賞を総なめにし、実写映画化までされた驚愕のミステリー小説!

こんな人におすすめ!

  • ミステリー小説初心者の人
  • ロジカルな謎にときめく人
  • よくあるミステリーに飽きてきた人

あらすじ・内容紹介

真紅大学経済学部一回生にして、ミステリ愛好会会員の青年・葉村譲。

彼はミステリ愛好会会長にして自称「深紅のホームズ」、同大学の理学部三回生の明智恭介の暴走に振り回されながらも、ミステリ談義をして過ごすという平和な学生生活を送っていた。

しかし、突如彼らの前に現れた美少女探偵・剣崎比留子の誘いが、平穏な日々に終わりを告げる。

明智がなんとか介入しようとしていた、映画研究部の撮影合宿への招待。

更に、「合宿は湖畔のペンションで行われる予定」で「開催を中止させようとする謎の脅迫状」が届き、昨年の合宿では「自殺者と曰くありげな噂」が生まれているという、ミステリーオタクにとっては垂涎モノの、魅力的なシチュエーション。

魅力的な謎にまんまと釣られた明智と葉山は、剣崎比留子とともに合宿へと向かう。

しかし彼らを待ち受けていたのは、驚天動地の大パニックと、その中で次々と起こる殺人事件だった…。

極限状態で殺人を起こす、犯人の動機とは?

そして明智と葉山を合宿に招待した、剣崎比留子の目的とは⁉︎

「このミステリーがすごい!」や「鮎川哲也賞」など、計4冠を成し遂げた驚異のミステリー小説!

『屍人荘の殺人』の感想・特徴(ネタバレなし)

かつてない「クローズドサークル」

そうなると警察の手が及ばず、捜査の手がかりが圧倒的に少なくなりますからね。論理的な推理に頼る場面が増えるってわけです

ミステリー小説の定番中の定番といえば、『そして誰もいなくなった(アガサ・クリスティー著)』に代表される「クローズドサークル」モノだ。

よくある例としては、「嵐に閉ざされた孤島」や「吹雪に閉ざされた山荘」だろうか。

外部との連絡が取れない中で次々と起こる殺人事件には、自身の隣にいる人物が犯人かもしれないという状況故に緊張感を覚える。

本作も例に漏れず、事件現場のペンションはクローズドサークルとなっている。

多くの場合「嵐」や「吹雪」といったクローズドサークルを構成する要素には、舞台装置としての用途しか存在しない。

しかし今作では、この「嵐」や「吹雪」に相当する舞台装置に、これまでのミステリーからは想像もできない「あるモノ」が登用されている。

これまで舞台装置だったものに意味を与え、ストーリーに大きく絡ませてゆくこの発想は、ミステリーを読み慣れた読者にこそ大きな衝撃を与えるだろう。

精緻にして丹精な謎

カレーうどんは、本格推理ではありません

もちろん、斬新な設定を加えた程度で評価が決まるほど、ミステリーの世界は単純ではない。

本作を名作としている1番の要因は、斬新な設定を活かした、丹精で良質な謎にある、と言っても過言ではない。

緻密な計算の上に組み上げられた謎とトリック、そして殺害方法までもが見事の一言。

ネタバレに配慮しながらその謎の魅力を伝えることは難しいが、例えるならば「吹雪で閉ざされてはいるが中は暖かい山荘の内部で、凍死した死体が発見される」といったところだろうか。

嵐や吹雪に相当する「あるモノ」という舞台装置を、ただクローズドサークルを構成するための要素だけではなく、凶器としても利用出来るのは、今作ならではのものだろう。

加えてこの作品は、読者に対して非常にフェアに作られている。

推理のヒントとなるものは解決編までに全て提示され、ロジカルに考えていけば真相に辿り着くことは充分に可能だ。

異様とも言える世界観に惑わされることなく、是非とも推理を試みながら読んで欲しい。

「ミステリー初心者」におすすめ

葉村君はもう全員の名前を覚えた?

この小説が、既存のミステリーファンを唸らせるものであるのは、ここまでに述べた通りだ。

しかしこの小説は敢えて「ミステリー初心者」にこそ、最もお勧めしたい。

今作は、主人公・葉村譲の一人称視点で進む。

彼の性格が砕けたものであるため、サクサクと読み進めることのできる軽めの文体となっているのだ。

更にこの作品には、登場人物の名前と特徴を紐付けて、どのキャラクターが誰なのか、ということを分かりやすく解説してくれる。

ミステリーにおいて、恐らくは新規の読者を妨げる要因であろう、「誰が誰だか分からない」という状態を解消してくれるため、見事な本格推理小説ながら、あらゆる層の読者に読みやすい作品となっている。

映画化もしているので、興味を持った方はそちらからでも、是非とも一度この作品に触れてみて欲しい。

まとめ

今作は、読みやすい文体とエキセントリックな設定でありながら、その実は実に精緻に組み上げられた謎を大量に盛り込んだ本格推理小説だ。

これまでのミステリーに慣れ親しんだ読者にも、これまでミステリーを敬遠してきた読者にもお勧めできる、新機軸の王道ミステリー小説だ。

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