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『漱石と倫敦ミイラ殺人事件』あらすじと感想【文豪×探偵!?交わらない2人が挑む奇妙な事件】

『漱石と倫敦ミイラ殺人事件』書影画像

実在した日本の文豪、夏目漱石。

コナン・ドイルが生んだ架空の探偵、シャーロック・ホームズ。

同時代を生きながらも交わることが決してなかった2人が、小説の中で邂逅する。

こんな人におすすめ!

  • 文豪、夏目漱石が好きな人
  • ユーモアのあるミステリが読みたい人
  • シャーロック・ホームズの雰囲気を継承したミステリが読みたい人

あらすじ・内容紹介

ときは1984年のロンドン。

チャリング・クロス・ノックス銀行の頭取、K・パイスン氏の孫にあたるM・パイスン氏の裏納屋で、ジョン・H・ワトスン氏のものと思われる未発表の原稿が見つかった。

そこには、日本人ならだれもがその名を知る夏目漱石(なつめ そうせき)が関わる、シャーロック・ホームズのとある事件の顛末が書かれていた。

明治33年10月、イギリスに留学していた漱石は、下宿する先々で幽霊の声に悩まされていた。

指導してくれているクレイグ先生に相談すると、ベイカー街に住むシャーロック・ホームズという風変わりな探偵を紹介された。

会ってはみたが、あまりの変人ぶりに漱石は辟易としてしまう。

しかし、ホームズは奇妙なセリフを言って幽霊の声を解決してしまった。

時を同じくして、ホームズのもとにメアリー・リンキイという未亡人が依頼しに来る。

行方不明だった弟を探して新聞広告を出した。

結果、無事に弟は見つかったのだが、近頃その弟の様子がおかしいというのだ。

依頼を承諾したホームズだったが、メアリーの弟・キングスレイはなんと密室で一晩のうちにミイラになり、死亡してしまった。

夏目漱石とシャーロック・ホームズ、同時代に生きていた実在と架空が重なり合う異色のミステリ。

『漱石と倫敦ミイラ殺人事件』の感想・特徴(ネタバレなし)

どちらが真実のホームズなのか

ホームズが風変わりな人物ということは小耳に挟んだことがあるだろうか。

イギリスBCC作製の大人気海外ドラマ「SHERLOCK」のベネディクト・カンバーバッチ演じるホームズも、暇を持て余して部屋で拳銃を打ちまくっていたらしい。

ホームズにとって依頼される事件が、ある種の退屈しのぎなのだ。

その退屈しのぎがなければ、ホームズは薬物へ走る。

不謹慎なことを言ってしまえば、人が困っていることがホームズの快楽へと繋がっている。

正典(コナン・ドイルが書いたシャーロック・ホームズ)の中での変人振りはそこまででないのに、本書の漱石視点でのホームズが、まあ、ひどいこと。

まず、ホームズは漱石に会うたびに毎回名前が変わる。

最終的には「ナツミ」に落ち着くのだが(「め」が発音しにくい?)、それまで喋るたびに漱石を「ゲルソンさん」と呼び、次に呼ぶときは「シュプレンドールさん」になる。

ホームズは本気なのか、冗談を言ってるのか。

真意は分かりかねる。

そんな風なコメディ要素がたっぷりあり、特に漱石から見たホームズの前半には、笑い半分、戸惑い半分かもしれない。

彼は自分の推理が固まるまでヒントすら言わないのだけど、逆にそこが読者を煽るいい味になっていると思う。

しかしそこが、漱石には一種、異様なホームズとして映ってしまったのか?

漱石が真実のホームズの姿をこの本の中で描写しているかというと、正典をかじった者からすると首を傾げる。

けれど「こういうホームズもありだね」と思って読むとやけに面白く感じてしまう。

ワトスン視点でのホームズはこの事件に対して、

「僕のこの最近の失敗の傷が僕の内で癒えるまで、この事件の記録は発表を待ってくれと君に頼むことはわがままだろうか」

と、なんともまあ慎ましやかなことを言っている。

そうかと思えば、次の漱石視点でのワトスンが言ったホームズについての苦情がおかしな様相を見せる。

少し略してお伝えしよう。

「(略)ホームズ君は1880年頃から脳の調子がおかしくなって、仕事でヘマばかりやるようになったんです。見当違いの男を犯人だと言ったり、一度はレストレイドを逮捕させかけたこともあるんですよ」

さらにワトスンは続ける。

「そしてホームズ君がいよいよいけないということになって、私は親友を精神病院へ入院させた方がよかろうと判断したのです。これが1891年のことでしてね、入院は3年間でした」

1981年といえば、ホームズが宿敵モリアーティと対決し、スイスのライヘンバッハの滝に落ちた年である。

正典ではこれを「最後の事件」としている。

ホームズはこれで一度死んだことになっているのだが、著者の島田さんは大胆にもホームズが精神を病んでしまったので、モリアーティという大悪党の存在をでっち上げ、モリアーティと相討ちをし、死んだことにして、精神病院に入院させたのだ(という解釈)。

そこの部分についてワトスンは、

「あれだけ名をあげた男ですのでね、その辺のチンピラとさし違えたことにはできない、それで大急ぎでモリアーティという世紀の大悪党をでっち上げたのです」

と言っている。

ホームズの宿敵で、犯罪界のナポレオンと呼ばれている人物が、まさかワトスンにでっち上げとは。

ホームズの言動がおかしいのは(そういう風に映ってしまうのは)、ホームズが退屈凌ぎに頼る薬物のせいだと思っていた。

しかし、

「ゆうべ寝ている僕のことを、突然ホームズがフライパンでぶったんですよ。もうほとほと疲れましたよ」

と言っているところを見ると、ワトスンがホームズを精神病院に入院させたというのもあながち間違いではないかも?と思えてしまう。

しかし、これはあくまで漱石視点のホームズ。

ワトスン視点のホームズはまともな、独自の推理を繰り広げるいつものホームズなのでご安心を。

視点が交互に入れ変わるので、対比させて読むのがとても楽しい。

一方ではおかしなホームズ、一方ではまともなホームズ。

果たしてどっちのホームズの姿が真実なのか。

「ミイラ」という材料の落とし所

この事件の最大の謎は、人が一晩のうちに密室でミイラ化したことだ。

なぜ一晩でミイラ化してしまったのか?

自殺なのか?他殺なのか?

人は一晩でミイラ化することは可能なのか?

調べてみると、有名なツタンカーメンを生んだエジプトのミイラを作るのには、70日かかるらしい。

まず、腐りやすい内臓や脳を取り出し、防腐処理のための塩の一種を塗り、リネンを巻きつけ、最後は布で包み、麻布で固定すれば完成だという。

ミイラを見たことがある人ならお分かりかと思うが、基本的にミイラという物体はカサカサに乾燥している。

それは、ミイラができる環境の条件に、水分含有率20%以下というのがあるからだ。

という風に考えても、現実的に人間が一晩でミイラ化することはまずあり得ない。

ミステリとは趣向を凝らした芸術作品だと思っている。

不可能を可能にし、論理的に解き明かし、説明できないことを解決する。

それこそまさにミステリ。

そうであってこそミステリ。

そう思うからこそ、一晩で人がミイラ化してしまった謎についての落とし所を、その答えにしてしまっていいのだろうか、と思えてしまう。

事件の特性と、犯人の動機から考えて、導きだされたミイラ化の答えは、恐らくこれがいちばん自然で、いちばん理にかなっている。

では、どこが引っ掛かるのか。

それはやはり、ミステリというジャンルを1つの芸術として見るとしたら、トリックの整合性を重視するよりも、無理やりにでも、「一晩でミイラ化」という奇怪な事実を論理的に説明してほしいと思うのだ。

正統派なミステリは「犯人は幽霊でした」というのは許されない。

だとしたら、「一晩でミイラ化する」というひときわ大きな謎の解決法は、生意気かもしれないけれど、もう一声あってもいいかもしれないな、と思った。

次の読書へ繋がるもの

ホームズは本書の中で、ある新聞広告を出す。

その名も「左眉の傷互助委員会」。

この委員会に入会するための条件はただ1つ。

ズバリ、左眉に傷があること。

もちろん面接などを経ないと入会できないわけだが、あれ?もしかしてこれは?と引っ掛った人は立派なシャーロキアンか、かなりの読書家だと思う。

ホームズが出したこの広告は、恐らくホームズの正典の中にある短編「赤髪(あかげ)組合」を似せて書かれている。

この「赤髪組合」に入る条件も「赤髪」であること(左眉の傷限定という部分が酷似している)。

どうして赤髪ではないといけないのか?

赤髪組合の本当の目的はなんなのか?

短い物語なので、興味のある方は是非。

 

もう1つ、本書には有名な架空の事件が登場している。

それはこんなセリフから分かる。

「モグル街の事件の再現ですよ、ホームズさん。有名なパリのあの事件のね」

ミステリを愛してやまない人ならもうお分かりかと思う。

そう、これはかの有名な、世界初の、推理小説の原型とも言われるエドガー・アラン・ポーが書いた「モグル街の殺人事件」のことを指しているのだ。

こちらも短編なので割とサクッと読める。

是非、冒頭の語り手である「私」が探偵役のオーギュスト・デュパンについてまどろっこしい説明をしている部分に挫折せずに読了してほしい。

物語の本筋に直接関係なかったり、少し知識がないと分からないパロディ的要素だったり、派生してヒントのようにちりばめられた他の作品への言及を読むと、嬉しくなったり、興味が湧いてくるのは読書の醍醐味じゃないだろうか。

まとめ

島田荘司さんと言えば「御手洗潔シリーズ」が有名であるし、「占星術殺人事件」のトリックはまさに鮮烈、戦慄の仕掛けだった。

それをこの作品に求めると、読者はどこか物足りなさを感じるかもしれない。

しかし、ノンシリーズのこちらでも著者独特の文章は健在だし、何より日本人に馴染み深い夏目漱石を登場させることによってミステリの敷居を少し下げてくれている気がする。

文豪好きにも、ミステリ好きにも大変美味しい作品となっているのだ。

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