大学生となった〈阿良々木暦(あららぎこよみ)〉は、危機に瀕していた。
高校生の頃から付き合っている恋人、〈戦場ヶ原ひたぎ(せんじょうがはら〜)〉から別れを切り出されていたのだ。
〈謝罪〉を巡る、『〈物語〉シリーズ』モンスターシーズン第4弾。
こんな人におすすめ!
- 『忍物語』『宵物語』『余物語』を読了済の人
- 『〈物語〉シリーズ』ファーストシーズンを読了済の人
- 『〈物語〉シリーズ』セカンドシーズンを読了済の人
- 『〈物語〉シリーズ』ファイナルシーズンを読了済の人
あらすじ・内容紹介
〈阿良々木暦〉は、大学生となって出来た唯一の友人〈食飼命日子(はむかい めにこ)〉から相談を受けていた。
彼女は、〈夜這いをかけられた…、ことになっている〉と言うのだ。
事情がうまく飲み込めず、再度聞き直す阿良々木暦に、彼女は更に説明を続ける。
曰く、〈彼氏くんと愛し合っただけなのに、彼氏くんが夜這いを掛けたと思い、周囲を巻き込んで謝罪を続ける〉と。
迷惑極まりないその謝罪攻勢に、阿良々木暦は自らの体験を重ねる。
彼もまた、恋人である〈戦場ヶ原ひたぎ〉から、猛烈な謝罪の言葉と共に、別れ話を切り出されていたのだ。
最終的に話題を有耶無耶にして話題を先延ばしにした彼だったが、このままでは破局は目に見えている。
かつてない危機に瀕した彼は、奇しくも自らと同じ境遇に置かれた友人の存在に、1つの光明を見つける。
これは、怪異の仕業ではないか。
であれば解決出来るのではないか、と…。
そして、その直後に出会った凶悪な幼馴染にして隣人、〈老倉育〉からの凶悪な謝罪を受けたことで、その疑いは確信に変わる…。
過去最大級の窮地を脱する為、奔走する阿良々木暦の活躍を描いた『〈物語〉シリーズ』モンスターシーズン第4弾!
『扇物語』の感想・特徴(ネタバレなし)
〈阿良々木暦〉を襲う、数々の〈謝罪〉
今まで本当にごめんなさい。戦場ヶ原ひたぎは心より謝罪の意を表するわ。他の女の子と、幸せになってください
今作のテーマは〈謝罪〉。
大学生となった〈阿良々木暦〉は今作で、様々な謝罪に襲われる。
彼の恋人である〈戦場ヶ原ひたぎ〉や幼馴染の〈老倉育〉などは、これまでのシリーズで描かれてきた性格を鑑みるに、何をどう考えても、阿良々木暦に対してまともな謝罪をしそうには無い。
故に阿良々木暦が、特に老倉育が謝ってきたことで〈怪異〉の仕業の断ずるのも宜なるかな、というところ。
今作はそんな2人の謝罪姿を、これでもかというほど堪能できる作品だ。
阿良々木暦というこれまで(強い言い方をすると)虐げてきた存在に対して、このプライドの高い恋人と凶悪な幼馴染はどのような謝罪を見せるのかは、要注目ポイントだろう。
学校を根城にした〈忍野扇〉とのダイアローグ
英語で『I’m sorry』と言うとき、『ごめんなさい』という意味と、『お気の毒さま』という意味の、二通りがありますよねえ。『許して欲しい』なのか、『可哀想に』なのか、どちらのほうが、謝意は深いのでしょう──
今作のタイトルロールである〈忍野扇(おしの おうぎ)〉は、阿良々木暦の青春の裏側である。
高校生だった阿良々木暦に、性格の悪い女子高生として接していた彼女は、今作では性格の悪い男子高校生として登場。
青春を終えた阿良々木暦と、〈学校の怪談〉のように学校に残り続ける彼/彼女のダイアローグも必見だ。
戦場ヶ原ひたぎと老倉育の謝罪攻勢にすっかり参ってしまった阿良々木暦を、更に意地悪く虐めながらも、考えられる可能性をすぐさま複数ピックアップする様子は、流石〈羽川翼(はねかわ つばさ)〉と双璧を成す『〈物語〉シリーズ』ミステリー担当と言ったところ。
心に寄り添う〈闇〉となった彼/彼女の振る舞いからも、目が離せない。
〈千石撫子〉の物語も佳境へ
とは言え──見違えたな。たかが一年で
『撫物語』をプロローグに、『宵物語』から始まった〈千石撫子〉の物語も、佳境を迎える。
今作で彼女が臨むのは、かつて自らを呪った2人の人物。
可愛いだけの少女だった頃から成長を遂げた彼女は、自らの過去にどのように向き合うのか。
更に、その呪いの根源にして過去に千石撫子を騙した詐欺師、〈貝木泥舟(かいき でいしゅう)〉も久々の登場を果たす。
以前から仄めかされていた新たな敵、〈洗人迂路子(あらうんど うろこ)〉の新情報も明かされ、決戦に向けて盛り上がり続ける彼女の物語も、見逃せない。
まとめ
『〈物語〉シリーズ』モンスターシーズンの第4作目である今作は、〈戦場ヶ原ひたぎ〉や〈老倉育〉といった尖ったヒロインたちの謝罪姿という、これまでにない珍しいものが見られる作品となっている。
また、『宵物語』から始まった〈千石撫子〉の物語も佳境を迎えており、全体を通して目が離せないものとなっている。
『〈物語〉シリーズ』モンスターモシーズン最終巻となる次巻『死物語』に向けて、加速し続ける〈物語〉から目が離せない。
この記事を読んだあなたにおすすめ!

書き手にコメントを届ける