2002年、記念すべきデビュー作『クビキリサイクル』でメフィスト賞して以降、異常とも言える執筆速度で多数の人気シリーズを生み出し続ける奇才、西尾維新。
独特な語り口とブラックユーモア、登場人物の特徴的な思索に気を衒った設定などが見事に融合し、癖になる独自の作品を数多生み出している。
メディアミックス無しに10万部を超える数少ない作家、とも呼ばれる氏の人気ぶりは、〈西尾維新展〉として個展が開かれる程だ。
ここでは、そんな西尾維新氏の作品の中でも、特におすすめの作品を絞って紹介する。
目次
〈戯言〉シリーズ
記念すべき、西尾維新氏のデビュー作!
デビュー作『クビキリサイクル』を始めとする、ミステリー/バトルシリーズ。
殺し名や呪い名、仲間(チーム)が跋扈する混沌とした世界の中で、戯言遣いの〈ぼく〉は事件に挑む。
深い虚無を湛えているが故、本人はまともなつもりなのに周囲を狂わせていく戯言遣いの〈ぼく〉や、その対偶の存在である面倒見の良い連続殺人鬼、零崎人識。
さらには、青い瞳と青い髪を持つサヴァン症候群の少女、玖渚友や、人類最強の請負人、哀川潤など、深い異常性を抱え込んだクセの強いキャラクターがたちが、それぞれの思惑を胸に物語を織りなす。
最初はミステリー作品でありながら、徐々にバトル小説にシフトしていく様子はまるで少年漫画のようで、非常に読み応えがある。
ネタバレに徹底的に配慮されており、どの作品から読んでも楽しめる親切設計。
詳細は後述するが、派生シリーズも多い作品であるため、西尾維新氏の作品群の中でも、まずは抑えておきたいシリーズだ。
シリーズ作品
- クビキリサイクル 青色サヴァンと戯言遣い
- クビシメロマンチスト 人間失格・零崎人識
- クビツリハイスクール 戯言遣いの弟子
- サイコロジカル(上) 兎吊木垓輔の戯言殺し
- サイコロジカル(下) 曳かれ者の小唄
- ヒトクイマジカル 殺戮奇術の匂宮兄妹
- ネコソギラジカル(上) 十三階段
- ネコソギラジカル(中) 赤き制裁VS橙なる種
- ネコソギラジカル(下) 青色サヴァンと戯言遣い

〈人間〉シリーズ
血ではなく流血で繋がる一族の、戦いと家族愛の物語
先述の『〈戯言〉シリーズ』の、派生シリーズが1つ。
血では無く流血で繋がる殺人鬼の家族、殺し名序列第3位の零崎一族に主眼を置いた、バトル小説となっている。
巨大な鋏、自殺志願(マインドレンデル)を手に人間を試験する、零崎双織。
愚神礼賛(シームレスバイアス)なる釘バットを振り回し、零崎の中で最も激しい殺し方をすると恐れられる、零崎軋識。
凡ゆる音を巧みに使い熟し、敵を翻弄する音楽家、零崎曲識。
零崎三天王と呼ばれる彼らと、零崎の中の零崎、生粋の殺人鬼同士の間に生まれた鬼子である零崎人識の4人をメインに据え、殺し名同士の壮絶な戦いを描いている。
『〈戯言〉シリーズ』の外伝作品とはなっているが、こちらはこちらで物語として作り込まれているため、単独シリーズとしても十分楽しめる。
しかし、共通して登場する人物の存在や互いのシリーズの裏側を補完し合う構成上、どちらも読んでおくことで其々がより楽しめるシリーズとなっている。
シリーズ作品
- 零崎双識の人間試験
- 零崎軋識の人間ノック
- 零崎曲識の人間人間
- 零崎人識の人間関係 匂宮出夢との関係
- 零崎人識の人間関係 無桐伊織との関係
- 零崎人識の人間関係 零崎双識との関係
- 零崎人識の人間関係 戯言遣いとの関係



〈最強〉シリーズ
人類最強が挑む、人類代表としての戦い
こちらも、『〈戯言〉シリーズ』の派生シリーズの1つ。
『〈戯言〉シリーズ』で、主役を差し置いて圧倒的な主役ぶりを見せつけた人類最強の請負人、哀川潤が主役を務めるバトルシリーズとなっている。
『〈戯言〉シリーズ』や『〈人間〉シリーズ』が、(ほとんど人間を辞めているような者達ばかりとは言え)人間同士のバトルを描いていたのに対し、こちらは完全にSFチックな人外バトルの域に達している。
対戦相手は、ガス宇宙人から魚人、岩人間、果ては本、という異形っぷり。
もはや人類最強ならぬ、人類代表とでも言うべき哀川潤の戦い様を、存分に堪能できるシリーズだ。
また、王道バトルモノのようで一捻り効いた結末は、西尾維新氏ならでは。
『〈戯言〉シリーズ』や『〈人間〉』シリーズの後日談的な要素も挟まれているため、前述した2作品を読了した後は、こちらも是非とも押さえておきたい。
シリーズ作品
- 人類最強の初恋
- 人類最強の純愛
- 人類最強のときめき
〈物語〉シリーズ
続き続ける、少年少女の物語
言わずと知れた、西尾維新氏の代表作が1つ。
『化物語』〜『続終物語』は全てアニメ化もされており、更にそのうちの『傷物語』は3部作に分けてアニメ映画化もされていることから、その人気の程が窺える。
主人公の阿良々木暦を中心とした、個性溢れるキャラクターたちの掛け合いと、彼ら彼女らが織りなす物語は非常に魅力的。
特にキャラクター同士の雑談は、言葉遊びからメタネタまで、西尾維新節とでも呼ぶべき要素が多分に盛り込まれており、氏の作品の魅力を特に楽しめる部分でもある。
西尾維新氏のシリーズ作品の中で、最も作品数の多いシリーズでもあり、その巻数から手を出すのが躊躇われるかもしれない。
しかし、軽妙な文体故に非常に読み易いため、気がつけば全巻読み終わっているような、そんな作品となっている。
また最近では、西尾維新氏の他シリーズヒロインが多数登場するコラボ短編集、『混物語』も刊行されている。
前述した3作品に加え、後述するシリーズのヒロイン達が、阿良々木暦に襲いかかる。
氏の全てのシリーズを抑えておくことで、『〈物語〉シリーズ』そのものも、より楽しめる筈だ。
シリーズ作品
- 化物語(上)
- 化物語(下)
- 傷物語
- 偽物語(上)
- 偽物語(下)
- 猫物語(黒)
- 猫物語(白)
- 傾物語
- 花物語
- 囮物語
- 鬼物語
- 恋物語
- 憑物語
- 暦物語
- 終物語(上)
- 終物語(中)
- 終物語(下)
- 続・終物語
- 愚物語
- 業物語
- 撫物語
- 結物語
- 忍物語
- 宵物語
- 余物語
- 扇物語
- 混物語



〈刀語〉シリーズ
西尾維新氏が描く、架空歴史バトル小説
西尾維新氏の中では珍しい、時代小説。
刀を使わない剣術、虚刀流の7代目頭首である鑢七花が、架空の為政者、尾張幕府の遣いの者である奇策師とがめと共に、伝説の刀鍛冶、四季崎記紀の作った12本の〈完成系変体刀〉を求めて旅をする、非常に王道なストーリー展開。
主人公の鑢七花が、戦闘において真っ当に強いキャラクターであることは、氏の作品の中でも珍しい要素ではないだろうか。
加えて、12本の刀を集めるために、其々の所有者と戦わなければならない、という要素も、バトル作品として非常に真っ当だ。
ただし、主人公とその相棒や、12本の刀の現所有者たちの個性は、西尾維新節が炸裂している。
島育ち故、世事に疎く、朴訥とした性格の鑢七花に対し、〈私に惚れて、私を助けるために共に旅をしろ〉などと宣言できるヒロインや、〈拙者に、ときめいてもらうでござる〉が決め台詞の剣士などは、他の作品には中々登場出来ないクセの強さであろう。
その他にも、其々に個性を持った刀や、ともすれば刀より個性的な所有者たちとの激戦は必見だ。
個人的に、物語の魅力は敵役の魅力だと考えている。
その点において、其々の刀とその所有者に其々の格好良さがある、読み応え抜群の作品となっている。
シリーズ作品
- 第一話 絶刀・鉋(ゼットウ・カンナ)
- 第二話 斬刀・鈍(ザントウ・ナマクラ)
- 第三話 千刀・鎩(セントウ・ツルギ)
- 第四話 薄刀・針(ハクトウ・ハリ)
- 第五話 賊刀・鎧(ゾクトウ・ヨロイ)
- 第六話 双刀・鎚(ソウトウ・カナヅチ)
- 第七話 悪刀・鐚(アクトウ・ビタ)
- 第八話 微刀・釵(ビトウ・カンザシ)
- 第九話 王刀・鋸(オウトウ・ノコギリ)
- 第十話 誠刀・銓(セイトウ・ハカリ)
- 第十一話 毒刀・鍍(ドクトウ・メッキ)
- 第十二話 炎刀・銃(エントウ・ジュウ)
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