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『ショコラ』ジョアン・ハリス【映画原作!誰かにチョコレートを贈りたくなる小説】

 

バレンタインと聞いて私が真っ先に思い浮かべるのは、大好きな映画『ショコラ』だ。

大人のストーリーに少しの魔法をスパイスにしたような、物語も映像も美しい作品。

その『ショコラ』に原作があると知って、今回はこの作品を紹介しようと思う。

あらすじ

フランスのある小さな村に、風とともに謎めいた母娘がやってきた。

母親のヴィアンヌと6歳の娘アヌークは教会の近くにチョコレートショップを開くが、カトリックの戒律の厳しい村は異色の母娘を快く受け入れない。

やがて、ヴィアンヌの作るチョコレートの香りが抑圧された村人たちの心をほぐしていくが、神父のレノーは頑なに拒む。

そんな中、村を流れる川にジプシーたちの舟が流れ着き、しばらく村に滞在することになった。そしてある事件が起きる。

映画も本も未体験の方へ

この物語は大人のためのおとぎ話だ。

主人公のヴィアンヌは幼い頃から母と2人で旅を続け、風とともに新しい街に移り住むというジプシーのような生活をしていた。

古代マヤのレシピでホットチョコレートをつくり、お客の好みの味をピタリと当てることができる不思議な力がある。

亡き母のタロットカードで未来を読み、鍋の中で溶けて艶めくチョコレートを水晶玉のように使うヴィアンヌ。

娘のアヌークはイマジナリーフレンドのような、使い魔のような、他人には見えない「パントゥフル」を連れ回している。

古代マヤでカカオが薬として使われていたことを合わせると、この母娘は現代に生きる魔女といった存在なのだろう。

母娘が訪れた村は大変保守的で、神父のレノーが絶大な権力を持っていた。

四旬節というカトリックの断食期にチョコレートショップを開く、なんていうことはレノーからしたらもってのほか。

ただでさえよそ者を受け入れるのに抵抗がある村人たちも、お店を覗いてはみるもののお菓子には手をつけようとしない。

そんな村でも同類は居るもので、娘と上手くいかず、孫と会わせてもらえない変わり者のアルマンド、母親に逆らえず吃音症になってしまったアルマンドの孫リュック、夫のDVで精神を病んでしまったジョゼフィーヌ、そして神父にも何か秘密がありそうだ。

人と人が交わるというのは化学反応のようだ。

セピア色だった村に色が着きはじめる。

ヴィアンヌのスカートの赤や店の日除けのオレンジ、チョコレートの箱の金色…そんな色たちが溶け出して村の色に混じり合っていく。

私は宗教に特別な思い入れはないけど、厳しすぎる戒律はどこか欲求を抑えつけて人を歪ませることもあると思う。

そのこととDVを受けているジョゼフィーヌとを重ねるのは間違っているかもしれないけど、作者はその辺も意識して書いたんじゃないかと私は思った。

夫に虐げられ、反抗することも忘れてしまったジョゼフィーヌをヴィアンヌは助けようとするけど、カトリックにおいて結婚の誓いは絶対で、それを破るのは悪い妻だとか、持病で食事制限をしないといけないけど、もう充分長生きしたから好きなものを食べて死にたい、なのに周りが許してくれないとか、本当はよそから来た人たちと親しく交流したいのに、異質なものは排除すべきとか、それぞれ問題は違うけど根っこは同じなんじゃないだろうか。

そんな村人たちに対して、ヴィアンヌ母娘やジプシーの青年ルーたちは全く正反対の存在で、彼らは彼らなりの別の問題を抱えている。

どちらの方が幸せ、ということはないのかもしれない。

私自身はほぼ同じ地方でしか生活したことがなく、この街が大きく変わることなく、昔ながらの伝統や県民性を守り続けたいと思っているクチだ。

でもたまに、ヴィアンヌのような生き方もいいなと思う。

あの街に住んだらどんな生活が待っているんだろう。どんな人たちと出会うんだろう。そこで私はどんな風に変われるんだろう。

この作品はちょっとだけそんな夢を見せてくれる。

注意
以下、ネタバレ注意です。

ショコラの感想(ネタバレ)

映画と小説どちらも体験した結果、いくつか違う要素があるのがわかった。

まず店名。原作は「ラ・セレスト・プラリーヌ」だが映画では「マヤ」。

これはマヤ族のチョコレートレシピからとっているんだろう。店内のインテリアや小道具もマヤを意識している。

次にレノーの職業。原作では神父だが映画では村長になっていて、若い神父を自分の部下のように扱っている。

原作のレノー神父は過去に重大な秘密を抱えているようだが、映画のレノー村長は奥さんに逃げられたことを村人たちに隠しているという設定だった。

やはり原作はそれぞれの人物を深く掘り下げてあって、ヴィアンヌの出生の秘密、母親との過去などは驚きの内容でもある。

そして大きく違うのは、ヴィアンヌとルーの関係性。

映画ではこの2人の恋愛に焦点を当てていたけど、原作では全く違う人物とルーの間に、ヴィアンヌが風のように通り過ぎるという感じ。

映画とは全く違う展開なので読みながら少しショックを受けてしまったけど、これもヴィアンヌの宿命なのかと納得もした。

まとめ

自分たちと毛色の違うものを排除し、厳しい規律を守って生活するのは、確かに安全で平和かもしれない。

でも、時々窓を開けて空気の入れ替えをしないと空気が澱んでしまうように、自分たちの慣習外のことを取り入れてみるのは大事なんじゃなかろうか。

仲間内だけで問題解決できないなら、違う分野の人間を入れてみるとブレイクスルーできたりとか。

輪を広げるって勇気がいるんだけど(私は)、ヴィアンヌやルーみたいな流浪の民にしたって、流れて生きるにしても引きこもるにしても、完全に人との交わりを絶って生きていくことはできないんだから。

他人の書評を読むということも、ある意味窓を開けることと同じかもしれない。

私の文章が誰かの何かのきっかけになってくれるといいけど、まだ要修行だ。

ホットチョコレートレシピ

この作品には何度もチョコやお菓子やホットチョコレートが出てくるので、読むときにはおやつが必須だ。

特にホットチョコレートは繰り返し何度も出てくる。マヤ族のレシピでつくったホットチョコレートに、クリームやお酒、削りチョコなどをトッピングする。

簡単なレシピを紹介してみよう。

材料

⚫︎板チョコ…1/2枚

⚫︎牛乳 or 水…150ml

作り方

1、牛乳 or 水を鍋に入れて温める

2、刻んだ板チョコを加えてよく混ぜ溶かす

レンジで作る場合

1、耐熱マグにチョコと少量の牛乳を入れ、600wで30秒ほど加熱

2、チョコが溶けたら牛乳 or 水を加え、1分〜1分半またはレンジの牛乳コースで温める

映画ではチリパウダーを加えて大人の味にしていた。

マヤ族のレシピということだったけど、ヴィアンヌのホットチョコレートは砂糖も入っているので、日本人がぜんざいに塩を入れるような効果もあるかもしれない。

ちなみに私の好みは、ハイカカオチョコ(85%以上)+牛乳+たっぷりのホイップクリーム+シナモンパウダー。

お酒が好きな人はラム酒やリキュールを垂らしたりオレンジピールを入れても美味しそう。

主題歌:手嶌葵/ショコラ

「ショコラ」手嶌葵

この作品を読んで最初にパッと思い浮かんだのは The Cardigans 「Carnival」。

でも歌詞がしっくりこないので Pramore の「The Only Exception」の方がいいかなぁと悩んでいたところでこの「ショコラ」と出会った。

タイトル、アコーディオンのノスタルジックなメロディ、そして手嶌葵の日本語っぽくないアンニュイな歌声。見つけたときはこれしかない!と思った。

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