今いる場所を飛び出して、どこか遠いところへ行ってみたいと思うことありますよね。
そんな時におすすめの一冊が、この『あなたと、どこかへ。 eight short stories』です。
八人の豪華な作家さんが贈る素敵な「ドライブの旅」へようこそ。
ぜひ、あなただけの素敵な旅をお楽しみくださいね。
豪華なラインナップで贈る、「ドライブ」がテーマのアンソロジー
収録されている8つの作品がこちらになります。
短編の名手として名高い、中堅作家さんが中心です。
- 「乙女座の夫、蟹座の妻。」吉田修一
- 「時速四十キロで未来へ向かう」角田光代
- 「本を読む旅」石田衣良
- 「慣れることと失うこと」甘粕りり子
- 「この山道を……」 林望
- 「娘の誕生日」 谷村志穂
- 「遠い雷、赤い靴」 片岡義男
- 「夜のドライブ」 川上弘美
その中でも、特におすすめの三篇を厳選してご紹介しましょう。
角田光代「時速四十キロで未来へ向かう」
主人公の私(30歳)は、失恋がきっかけで引きこもりになってしまいます。
二か月前までは、普通の働く女性だったのですが、ブレーカーが落ちたようにその場から動けなくなってしまったのですね。
何もかもが嫌になってしまったある日、彼女のもとへ、弟の紀丈(のりたけ)がやってきます。
彼は、青い車を見せながら、姉を「ドライブへ行こう」と誘うのです。
彼女が忘れてしまっていたこと。
ふさぎ込んでしまった姉を労わる弟の優しさと、「大人」である自分をあらためて信じることができる一編となっています。
石田衣良「本を読む旅」
いつもと変わり映えしない毎日に、うんざりしてしまった石田さん。
ある日、三泊四日のおひとりさま積読本消化旅行(観光抜き)を計画します。
この作品だけ唯一「エッセイ」です。
その際語った持ち前の持論が、「本好きあるある」のど真ん中を突いているので、少しご紹介しましょう。
- 内容のない薄っぺらな本は嫌だ。
- 実際に読書をしている最中よりも、本を選んでいるときの方がよほど心が弾むのではないか。
- ぼくは作者の名前を、暇さえあれば気晴らしに読む作家のリストに加えた。これは無数にいるようで、なかなか長くならない貴重なリストだ。
読み終えた後、自分も10冊の本を抱えて、どこか旅行へ行ってみようかなと考えてしまうのが不思議です。
ここでは触れませんでしたが、きちんとドライブについて語っていますので、ご心配なく。
川上弘美「夜のドライブ」
こちらは、母と「わたし」のドライブの話です。
他のお話とは少し違い、どことなく読後にしんみりするような内容となっています。
母が亡くなった父親の下手な運転を回想するところや、母親が昔から愛用しているえんじ色の肩掛けが、くたくたになっている描写など、どこか胸がじんとつまるところがあります。
どことなく、自分の親と重ねてしまいました。
選曲 どちらの世代もドライブを楽しんで!
昭和世代、平成世代、どちらの世代も盛り上がれるようなイメージで選曲しました。
1曲目は井上陽水さんの「Make-up Shadow」です。
ドラマ「素晴らしきかな人生」の主題歌になったことによって、一躍人気を博したナンバーですね。
歌詞はシュールで、難解なのに、どことなく色気を感じさせます。
※ニューミュージックと呼ばれるジャンルの名曲として名高いですね。
(雰囲気は小沢健二さんの曲に近いです。)
2曲目は、Suchmos の「808」です。
2018年の紅白に出場することが決定したSuchmos(サチモス)。
STAY TUNEの歌詞の衝撃をいまだに忘れられていない方も多いのではないのでしょうか。(私もその1人です)
デビュー曲も、今回の808も、車のCMに起用されているだけあって、ドライブに最適な1曲に仕上がっています。
流れるように歌いあげるYONCEさんの声に乗せて運転すれば、きっと素敵な一日を過ごすことができるでしょう。
それでは皆様、195ページに渡って失ったものを取り戻す極上のドライブの旅へ、お気をつけて行ってらっしゃいませ!
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高山羽根子『居た場所』こちらも旅をモチーフにした小説です。旅行のお供にぜひどうぞ。
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