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『ざんねんないきもの事典』あらすじと感想【奇跡の生き物たちにもっと愛着が湧く!】

『ざんねんないきものずかん』あらすじと感想【奇跡の生き物たちにもっと愛着が湧く!】

「生きた化石」の名を持つシーラカンス。

ずっと絶滅したと考えられていたけれど、1938年に発見され深い海の底で静かに生きていたことが分かった。

その姿はなんと3億5000万年前とほとんど変わらない。

一説によると3億5000万年もの間、深海の環境がほぼ変わらなかったため、姿を変えずに生き残ったのではないかと言われている。

本書に登場する生き物は、何らかの形で窮地に追い込まれている。

進化しなかったシーラカンスとは反対に進化せざるを得なかった生き物たちのことを知ることができる。

知れば知るほど生き物の不思議は深まる。

進化どころか退化ではないかと思うような生き物もいるからだ。

一風変わった行動は全て、生き残るための術である。

映画のコピーにありそうな「生き残りをかけた壮大な命の物語」が限りなくゆるーく、コミカルかつポップに描かれている。

こんな人におすすめ!

  • 生き物が好きな人
  • サクッと楽しみたい人
  • 新しい発見をしたい人

あらすじ・内容紹介

ミスチルの『進化論』という曲には

首の長い動物は生存競争のためにそのフォルムを変えてきた

というフレーズがある。

強く願うことで生き物は進化し、生き抜いてきた。

そのなかには簡単には理解できないような進化を遂げた生き物もいる。

本書はエキセントリックな進化を遂げた生き物たちにフォーカスを当てて紹介するユニークな事典で、現在はシリーズ第5弾まで発売されている人気作だ。

キュートな挿し絵に、読みやすいように砕けた文章、1〜2ページほどで完結するので、老若男女タイミング問わずに楽しめる。

監修を務めるのは、数多くの動物関連の書籍を書いてきた今泉忠明(いまいずみ ただあき)さん。

私たちが住んでいる地球には信じられないくらい様々な生き物がいることを、子どもでも分かるように説明してくれる。

『ざんねんないきもの事典』の感想・特徴(ネタバレなし)

けんめいなLove story:ミツクリエナガチョウチンアンコウのオスはメスのいぼになる

過酷な環境のため、変わった進化を遂げた生き物も多い深海。

そんな場所で生きるのが、このミツクリエナガチョウチンアンコウだ。

オスがなぜメスのイボと化してしまうのかというと、そもそもメスと出会うこと自体が難しいからである。

生殖、繁栄の貴重なチャンスを失わないために、彼らはメスと出会うと体に噛み付いてくっつく。

次第にメスと血管や皮膚を合体させていき、最終的にはメスの体内に精子を送りこむイボになってしまうのだ。

他の生き物の苦労が本を捲っているだけで味わえることに深海のような安堵を覚えた。

深海の過酷さもさることながら、オスとしての役割を痛感させられる。

メスの方が優位に立つ生き物はミツクリエナガチョウチンアンコウ以外にも多く存在している。

カマキリのオスは生殖中にメスに食べられるし、ハチやアリは女王なくして機能しない。

一説ではライオンの群れを治めているのもメスだという。

子どもを産める上、種によってはそのまま育て上げるメスに対して、ほぼ精子を提供するだけのオスはどれだけ役立つだろうか。

先日、角田光代の代表作『八日目の蝉』を読んだ。

誘拐犯の女性が逃走しながら子育てをする物語なのだれど、男性はほとんど出てこない。

出てきてもロクな人間性じゃない。

女流作家が母性や家族をテーマに書いた小説で男性がほとんど活躍しないということに、どこかリアリティを感じてしまう。

そういう物語のなかや実生活に於いても、女性が大切な役割を担っていることを知る瞬間は割合多い。

色々な意味で女性には頭が上がらない。

野生の生き物のなかでは雄はあまり役に立たない。

交尾が終わったらさっさと居なくなる生き物の方が多い。

もしくはメスの方が強い。

モラハラ気味の男性が野生だったらすぐに淘汰されてしまうだろう。

そういう意味では家庭で立場のない男性の方がかえって野生的なのかもしれない。

ちなみにメスのミツクリエナガチョウチンアンコウは複数のオスを体にくっつける。

そのため自分の精子が受精されなかったらただのイボとして人生を終えることになる。

本当にミツクリエナガチョウチンアンコウに生まれなくてよかった。

人とチンパンジーの隔たり:チンパンジーがしゃべれないのは、のどの構造のせい

遡れば人間と同じ祖先を持つほど、チンパンジーは限りなく人間に近い生き物である。

バラエティー番組でも知ってる方が多いと思うけれど、チンパンジーはものすごく賢い。

手話を使って人間と話すこともできる。

それでも言葉を発せないのは、チンパンジーは口呼吸ができず口から出す息の量が調節できないからだ。

脳は言葉を理解しているのに口の構造が追いつかないもどかしさ。

分かっているのにそれを伝える手段が制限されることは結構なストレスなんじゃないだろうか。

そう思うのとほぼ同時に、会話は凄まじい行為なのだと改めて気づかされた。

コミュニケーション能力が高い人間の方が結局強いのだということを、口下手な人は歯を食いしばるような思いをして痛感する。

もしもチンパンジーが今よりも更に人間と密接に関わるようになったとしたら、いつか言葉を話せるチンパンジーが出現するのではないだろうか。

突然変異的に喋れるようになった猿が、人間の悪行にしびれを切らして人間に逆襲するような、『猿の惑星』みたいな出来事が本当にいつか起こるんじゃないだろうかとも思う。

葉の臭い:モンシロチョウの幼虫はキャベツを食べると天敵に襲われる

キャベツの葉が大好きなモンシロチョウ。

小学生の時に飼っていたという人も少なくないんじゃないか。

実はキャベツの葉には昆虫がまずいと感じる成分が含まれるため、モンシロチョウの幼虫は争うことなく好物が食べ放題。

幼虫は好きなのものをバリバリ食べ、やがては蝶になって大空を優雅に舞う。

なんてイージーな人生なのだろうかと羨ましさすら覚える。

けれど実際はそんなに上手くいかないのは人間もモンシロチョウの幼虫も同じだ。

キャベツは葉を食べられると特別な臭いを発し、その臭いで誘き寄せられた寄生バチがモンシロチョウの幼虫に卵を産みつけるというのだ。

この説明を受けて自然界の厳しさを思い知らされた。

キャベツにモンシロチョウの幼虫がいて、空を飛ぶ生き物があたりをブンブンと飛び回っているという地味な光景を田舎出身の自分は見て育ってきた。

けれど何気ない光景にもそれだけのドラマがあるとは全く知らなかった。

生きていくことは甘くないなと塩っぱい思いをする。

モンシロチョウの幼虫、キャベツ、寄生バチと視点が変われば、それぞれ別のストーリーを持つ小さな生き物たちに畏敬の念を抱いた。

そう思うと居酒屋でお通し的に出される「バリバリキャベツの盛り合わせ(おかわり自由)」にももっと感謝した方がいいのかもしれない。

何の苦労も壮大なドラマもなしで食べさせてもらえているのだから。

まとめ

少しずつ姿を変えながら、今日も体を張って種族の安定性を試し、見つかった弱点を遺伝子に刻み込んでいく生き物たち。

サイやクジラ、ハチ…例を挙げたらキリがないけれど、今を生きている生き物たちは現在の形が最終形態ではなく、もしかしたらまだ進化の過程にいるのかもしれないと思うようになった。

普段見ている世界に彩りが加わったような希望に満ちた読後感を得られる。

しかし、「残念」という枕詞には違和感を覚えた。

ここで使われている「残念」には少なからず他の生き物を見下したニュアンスを孕んでいる。

悪意がないのは分かっているけれど、人間目線で品定めし、他の生き物を小馬鹿にするのはちょっとどうだろうか。

ましてや子どもたちに愛されている本なのに。

同じ地球で暮らしている生き物たちをもっと身近に感じられる良い本だからこそ、タイトルだけはもっと美しくあって欲しかったなと思う。

少し気になるところはあるけれど、子どもも大人も満足して楽しめる本だ。

何かにとっての完璧は、また別の生き物にとっては不完全でしかない。

この本で紹介されている生き物はどこか不器用だけれども懸命に生きようしている。

その純粋な真っ直ぐさに心を打たれ、愛着が湧いてくる。

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