『魍魎の匣』あらすじと感想【異なる謎が重なる時、姿を現す魍魎の正体とは?】

『魍魎の匣』あらすじと感想【異なる謎が重なる時、姿を現す魍魎の正体とは?】

刑事、〈木場修太郎(きば しゅうたろう)〉が関わった、女学生と列車の人身事故。

その被害者が運ばれたのは、〈匣の館〉とでも呼ぶべき施設だった。

作家、〈関口巽(せきぐち たつみ)〉が耳にした、武蔵野連続バラバラ殺人事件の話題。

被害者は皆、体の一部が〈箱詰め〉で発見された。

古本屋、〈中禅寺秋彦(ちゅうぜんじ あきひこ)〉のもとに持ち込まれた、新興宗教〈御筥様〉の噂。

教主は悪いモノを、〈筥に封じる〉と言う。

不気味な符号を見せながらも無関係だった事件が重なる時、〈魍魎〉が姿を現す…。

〈百鬼夜行シリーズ〉最高傑作とも呼ばれる、京極文学の真骨頂!

こんな人におすすめ!

  • 妖怪が好きな人
  • ミステリが好きな人
  • 幻想文学が好きな人

あらすじ・内容紹介

〈私たちは互いが互いの生まれ変わりなんだ〉

女学生〈楠本頼子(くすもと よりこ)〉はある日、同じ学校の美少女、〈柚木加菜子(ゆずき かなこ)〉にそう話しかけられる。

親交を深めていく2人はある日、湖を見にいくために最終電車に乗ろうとする。

しかし、突如何者かの手で線路に突き落とされた加菜子は瀕死の重傷を負い、〈匣の館〉とでも言うべき施設に送られる。

更に、加菜子の身元や脅迫状の存在によって、人身事故は殺人未遂事件と認識される。

事故現場に居合わせた刑事〈木場修太郎〉は、とある偶然から否応なく事件に巻き込まれていくこととなった。

作家〈関口巽〉は、新進気鋭の小説家〈久保俊公(くぼ しゅんこう)〉と出会う。

関口の恥部を見透かすかのような久保の言動に、関口は自信を失う。

雑誌記者の〈鳥口守彦(とりぐち もりひこ)〉と新聞記者〈中禅寺敦子(ちゅうぜんじ あつこ)〉が追う、〈武蔵野連続バラバラ殺人事件〉。

無理に取材に付き合わされた関口が見たのは、加菜子が運び込まれた〈匣の館〉であった。

そして起こる、〈柚木加菜子誘拐事件〉。

巷には、止む気配のないバラバラ殺人事件。

更に、〈魍魎を封じ込める〉という新興宗教、〈御筥様〉の存在も相まって、事態は益々混迷する。

不気味な符号を見せながらも無関係な其々の事件を、憑物落とし〈中禅寺秋彦〉はどう読み解くのか…。

〈百鬼夜行シリーズ〉最高傑作とも呼ばれる、京極堂の憑物落としが始まる。

『魍魎の匣』の感想・特徴(ネタバレなし)

刑事〈木場修太郎〉という箱の中身

今作では、刑事である〈木場修太郎〉の内面が大きくクローズアップされる。

前作『姑獲鳥の夏』では如何にもな〈豪快な刑事〉風であった彼の、繊細な一面が明かされていく様は、〈人は皆一様に悩む〉ということを改めて教えてくれると同時に、〈皆、自分らしいキャラクターを演じているのではないか〉という何とも言えない感情を沸き起こす。

そんな〈木場修太郎〉という匣の中身が、情緒的に明かされていく様は、今作の大きな見所だ。

京極堂の、煙に撒くかのような妖怪談義

〈百鬼夜行シリーズ〉を語る上で欠かせないのが、〈京極堂〉こと〈中禅寺秋彦〉による、妖怪談義と憑物落としだろう。

〈古本屋〉と〈神主〉、そして〈憑物落とし〉の3つの顔を持つ中禅寺秋彦は、類稀なる妖怪好きである。

今回の妖怪は、作品のタイトルにも含まれている〈魍魎〉。

あの京極堂をして、〈よく知っているが故に分からない〉とまで言わしめるほどに厄介な〈魍魎〉とは、果たして如何様な存在なのか。

何故、今回の事件に〈魍魎〉が関わってくるのか。

京極堂による解説と憑物落としからは、目が離せない。

また、新興宗教〈御筥様〉の分析の中で京極堂が語った、〈奇跡の4分類〉なども、一読の価値があるだろう。

奇跡を扱う者を〈宗教家〉〈霊能者〉〈占い師〉〈超能力者〉に分類し、其々の起こす〈奇跡〉の意義を問う語りは、そういったものに縁遠くなってきた現代においても知っておくべき事柄のように思える。

立板に水の彼の言葉、或いは〈呪〉を、是非とも堪能してほしい。

榎さんの暴走もパワーアップ

〈百鬼夜行シリーズ〉の名物探偵、〈榎木津礼二郎(えのきづ れいじろう)〉の暴走もまた、今作の大きな見所だ。

〈人の記憶を視る力〉を持つ彼は、捜査も推理もしないという、探偵にあるまじきポリシーを持つ。

前作『姑獲鳥の夏』でも、かなり破天荒な振る舞いを見せていた彼だが、今作では更にパワーアップした暴走を繰り広げる。

〈口外法度〉を口外するのは当然のこと。

動きの鈍い関口を散々〈亀〉呼ばわりした後に、ボロ車を軽快に(と言うより乱暴に)乗り回して関係者の自宅に押しかけ、急に関口を〈御亀様〉なる霊能者に仕立て上げるというやりたい放題っぷりだ。

陰惨な事件が続く今作において、彼の自由すぎる振る舞いは、一種の清涼剤のように作用している。

留まることを知らない彼の奔放さの、その本領が発揮され始めるのが今作なので、是非とも榎木津の動向にも注視して読んでほしい。

まとめ

『百鬼夜行シリーズ』の最高傑作として名高い今作は、重なり合う謎と、奔走するキャラクター達の魅力、そして憑物落としのカタルシスが満遍なく楽しめる、見事な作品となっている。

徐々に加速していく物語に、きっと夢中になれる筈だ。

また今作は、コミカライズだけでなく、アニメ化までされているので、理屈っぽい地の文を読むのが苦手な読者は、其方から観てみるのも手だろう。

兎にも角にも、多くの人に手にとって欲しい作品だ。

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