原田マハおすすめ作品15選【アートと旅に魅せられた作家が描く情景】

絵画、陶器、演劇、音楽など、「アート(芸術)」と呼ばれる領域を「小説」という形で表現している作家がいる。

彼女の名は、原田マハ。

作家デビュー前は、馬里邑美術館(現在は閉館)、伊藤忠商事や森美術館などでキュレーターとして活動しており、その経験が「アート小説」という著者が開拓した分野に盛り込まれている。

アートというと、高尚で近寄りがたく感じる人もいるだろう。

しかし、原田マハ氏の小説を読んでいると、アートは日常生活の一部であるかのように、身近に感じられるから不思議である。

また、旅好きを公言されているのもあり、旅を題材にした小説やエッセイも発表されている。

今回は数ある原田マハの著書の中でも、おすすめの15冊をご紹介する。

『カフーを待ちわびて』【沖縄の離島を舞台にした純粋で穏やかなラブストーリー】

作家・原田マハのデビュー作。

本書は第1回日本ラブストーリー大賞を受賞し、玉山鉄二主演で映画化もされた。

沖縄の離島・与那喜島(よなきじま)を舞台にした本書は、「嫁に来ないか」と書いた絵馬から恋愛が始まる。

その唐突さに反して、島人(しまんちゅぬ)の主人公・友寄明青(ともよせ あきお)と、内地から嫁に来たちゅらさんな幸(さち)との恋愛は、穏やかで純粋だ。

恋愛模様だけでなく、沖縄地方の暖かい穏やかな気候や、古来の風習が生活に根付いている様子、島の密な人間関係も、まるで明青と幸を包むかのように、丁寧に描かれている。

また、特徴的な産業がない与那喜島に持ち込まれたハイリゾート建設計画もストーリーにスパイスを与えているだろう。

ストーリー全体から沖縄らしさを感じられる、デビュー作とは思えないほど濃密な小説である。

『カフーを待ちわびて』書影画像『カフーを待ちわびて』あらすじと感想【沖縄の離島に現れた果報(カフー)】
『カフーを待ちわびて』の基本情報
出版社 宝島社
出版日 2008/05/12
ジャンル 恋愛
ページ数 346ページ
受賞 第1回日本ラブストーリー大賞大賞受賞
発行形態 単行本、文庫

『一分間だけ』【愛犬リラと過ごした愛しき日々】

愛らしいラブラドールレトリバーの寝顔が特徴的な本書は、モード誌編集者の主人公・神谷藍(かみや あい)と飼っているラブラドールレトリバーのリラとの物語である。

セレブ御用達のペットショップで殺処分寸前だったリラを引き取った藍。

しかし、編集の仕事は昼夜問わず働きずくめのため、同棲しているフリーのコピーライターの彼氏・浩介(こうすけ)に平日のお世話を任せ、自分は週末のみ世話をしていた。

ところが、浩介との関係に変化が生じ、藍とリラの生活も一変する。

本書を読んでいると、近所の人とペットを通じて交流する様子や、雑誌の校了前で藍がイライラして、自分が引き取ったとはいえ、リラを疎ましく思う様子など、良いことも悪いことも含め、犬を飼ったことがある人には、実感できる描写が多いと思う。

そして、終盤に訪れるクライマックスは、涙を流さずにはいられない。

『一分間だけ』の基本情報
出版社 宝島社
出版日 2009/06/05
ジャンル 恋愛
ページ数 300ページ
発行形態 単行本、文庫

『キネマの神様』【国境を越えた熱き映画ファンたちの評論バトル】

山田洋二監督がメガホンを取り、沢田研二主演で2021年春に公開される映画の原作。

円山歩(まるやま あゆむ)は左遷を機に、大手デベロッパーを退職する。

折しも実家の父・円山郷直(まるやま さとなお)が脳梗塞で倒れ、さらにギャンブルと映画につぎ込んだ多額の借金も発覚する。

無職になった歩は、父の映画鑑賞ノートを発見し、自分なりの解釈を付け加えたところ、郷直はその文章を映画雑誌「映友」へ投稿してしまった。

これをきっかけに歩は映友編集部に採用され、父はゴウというハンドルネームで映画評論ブログを始め、評判を博す。

ところが、ブログにローズ・バッドと名乗るアメリカ人から反論が来る。

ゴウとローズ・バッド、どちらの評論も映画を詳細まで見ていないと書けない内容で、読むだけで映画を見たような気にさせてくれる。

文章もテンポが良く、映画評論が国境や言語の壁を越えて繰り広げられると想像すると思わずワクワクしてしまう小説だ。

『キネマの神様』あらすじと感想【目が釘付けになる映画評論バトル】『キネマの神様』原作小説あらすじと感想【目が釘付けになる映画評論バトル】
『キネマの神様』の基本情報
出版社 文藝春秋
出版日 2011/05/10
ページ数 331ページ
発行形態 単行本、文庫、電子書籍

『本日は、お日柄もよく』【言の葉を届けるため。二ノ宮こと葉はスピーチライターを目指す!】

「本日は、お日柄もよく」。

結婚式のスピーチで使われる文言がついたこの小説は、スピーチを作成する「スピーチライター」に焦点が当てられている。

日本ではあまり馴染みがないスピーチライターという職業であるが、政治家の演説を作成する人というと分かるだろうか。

他にも、冠婚葬祭や行事の来賓挨拶を作成しており、意外にも仕事は幅広い。

本書の主人公・二ノ宮こと葉(にのみや ことは)も、出席した結婚式で聞いた久遠久美(くおん くみ)のスピーチに感銘を受け、彼女に弟子入り。スピーチライターの道を目指す。

本書ではスピーチライターの紹介だけでなく、「話す日本語」について分析されている。

学校や職場のプレゼンテーションが苦手だという人に、おすすめしたい。

物語の冒頭が、結婚式の来賓スピーチに眠くなったこと葉がスープに顔を突っ込んでしまう場面から始まるので、肩肘張らず読めるのも魅力だろう。

比嘉愛未主演でドラマ化もされた。

『本日は、お日柄もよく』原作小説あらすじと感想【原田マハの人気作!スピーチライターのお仕事小説】
『本日は、お日柄もよく』の基本情報
出版社 徳間書店
出版日 2013/06/07
ジャンル 青春小説
ページ数 381ページ
発行形態 文庫、電子書籍

『楽園のカンヴァス』【アート小説の誕生!名画をめぐるミステリー】

原田マハの代名詞とも言える「アート小説」はこの作品で誕生した。

舞台はスイス・バーゼル。

世界的に有名な絵画コレクター・コンラート・バイラーに招かれた2人の男女、アンリ・ルソー研究者の早川織江(はやかわ おりえ)と、MoMAアシスタント・キュレーターのティム・ブラウンは、バイラーから1枚の絵を見せられる。

それは、ルソーの「夢」に酷似した絵「夢を見た」。

1週間以内に絵の真贋を正解した者に絵の取り扱い権利が行くというストーリーである。

登場人物が絵画の謎を追っていく様子は、まさにミステリー小説。

読み進めるうちに、絵画の真贋について、早く先が知りたくなってくる。

アートというと高尚で身構えてしまうが、作中に登場するアンリ・ルソーやピカソは気難しい芸術家ではなく、気さくなパリに住む人間として描かれている。

また、本の表紙がルソーの「夢」なので、芸術に造詣がなくとも読み進められるのも、おすすめする理由である。

『楽園のカンヴァス』原田マハ【ルソー作?絵の真贋を見抜く絵画バトル】『楽園のカンヴァス』あらすじと感想【ルソー作?絵の真贋を見抜く絵画バトル】
『楽園のカンヴァス』の基本情報
出版社 新潮社
出版日 2014/06/27
ジャンル ミステリー
ページ数 440ページ
受賞 第25回山本周五郎賞受賞
発行形態 単行本、文庫、電子書籍

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