『四畳半神話大系』原作小説あらすじと感想【ほろ苦くもめっぽう面白い青春物語】

『四畳半神話大系』原作小説あらすじと感想【ほろ苦くもめっぽう面白い青春物語】

悪友、謎の師匠、サークルの後輩、歯科衛生士。

「私」の周りに跋扈する、特殊過ぎる人間たち。

はなして「私」の薔薇色のキャンパスライフの運命は?

こんな人におすすめ!

  • 青春物語が好きな人
  • 個性派の登場人物が好きな人
  • 薔薇色のキャンパスライフを夢見ている人

あらすじ・内容紹介

主人公「私」は冴えない大学3回生。

薔薇色のキャンパスライフを夢見るも、入るサークルではことごとく疎外感を覚え、隅に追いやられ、黒髪の乙女との恋に落ちることなく怠惰な生活を送っていた。

映画サークル「みそぎ」に始まり、「弟子求む」の謎の師匠との生活、宗教系ソフトボールサークル「ほんわか」、組織「福猫飯店」。

「私」は並行世界の中で、4つのサークルを彷徨い歩く。

悪友・小津(おづ)とはしょっちゅう出会うし、謎の師匠・樋口(ひぐち)は相変わらず台風が通過したようなもじゃもじゃ頭で無理難題を突き付けてくるし、サークルの後輩の明石(あかし)さんは密かに暗躍し、歯科衛生士の羽貫(はぬき)さんは酔ってとんでもない癖を暴発させる。

「私」の青春はどこへ行ったのか?

「私」が求めていた青春とはこれなのか?

京都の大学を舞台にした、ほろ苦くもめっぽう面白い青春物語。

『四畳半神話大系』の感想・特徴(ネタバレなし)

憎めなくて、可愛い奴

事は、この物語の主人公である「私」(名前は一切登場しない)が大学3回生になったところで始まる。

大学三回生の春までの二年間、実益のあることなど何一つしていないことを断言しておこう。

読者諸君、特にこれからキラキラのキャンパスライフを夢見ている学生たちに何の希望も抱かせない「私」のおでましである。

「私」の大学生活はまあ、ひどい。

まず、まともな友人が1人もいない。

あ、いや、友人がいないというわけではないのだ。

いるのだ、1人。

とんでもない奴が。

その名を小津という。

「私」が描写する小津の表現が、ひどいこと、ひどいこと。

野菜嫌いで即席のものばかり食べているから、なんだか月の裏側から来たような顔色をしていて甚だ不気味だ。夜道で出会えば十人中八人が妖怪と間違う。残りの二人は妖怪である。弱者に鞭打ち、強者にへつらい、わがままであり、傲慢であり、怠惰であり、天の邪鬼であり、勉強せず、誇りのかけらもなく、他人に不幸をおかずにして飯が三杯喰える。およそ誉めるべきところが一つもない。

これを一息で言うあたり、本当に「私」は小津が嫌いなのだな、と思う。

散々な言われような小津だけれど、何の誇張もなく本当にこの通りなのである。

でも、小津がいるからこの物語が面白くなっていると言っても過言ではない。

 

第1章では、「私」に自分も自主追放になったサークルへの攻撃をけしかけ。

第2章では、謎の師匠・樋口のために暗躍することに「私」を巻き込む。

第3章では窃盗まがいのことに「私」を引き込む。

数々の悪行をやってのける小津なのだけれど、なぜか私は小津を嫌いになれない。

むしろ主人公の「私」よりも小津が好きだ。

三つ子の魂百までと言うのに、当年とって二十と一つ、やがてこの世に生を受けて四半世紀になんなんとする立派な青年が、いまさら己の人格を変貌させようとむくつけき努力を重ねたところで何となろう。すでにこちこちになって虚空に屹立している人格を無理にねじ曲げようとすればぽっきり折れるのが関の山だ。

どうだろう、この「私」のねじ曲がった根性ぶりは。

書いている森見さんは昭和の人間だというに、まるで平成のゆとり世代の「一生懸命はカッコ悪い」という思考を思い出ださせるような主人公に、私は自分もゆとり世代なのでニヤリとしてしまった。

 

それに比べて小津は、師匠と崇める人のためにせっせと動き、サークルからサークルへと根回しをし、日々、暗躍に暗躍を重ねる。

サークルの先輩の大切なものを奪い(もとい盗み)、

「だって師匠とその人は五年来の友達ですからね。たぶん分かってくれますよ」

とのたまう小津。

失踪した師匠を止めなかったことを咎められれば、

「師匠は大事な人ですから」

と何の謝罪にもなってないことをのたまう小津。

すべてが言行不一致な小津に振り回される「私」は、

もし彼と出会わなければ、きっと私の魂はもっと清らかであっただろう。

と言うのだけれど、「私」も「私」でかなりおざなりな性格なものだから、結局は小津に付きまとわれ、策略にはまり、暗躍に巻き込まれるも、

「僕が悪うございましたよ。ね。御機嫌直して。これは師匠のためなんですよ」

なんて、なだめすかされ加担するはめになる。

 

でもやっぱり、小津は憎めないキャラクターだと思う。

悪いことをしても、それを「悪い」とは全く思っておらず、どこかに自分の哲学や美学がある。

悪者は己の信念で動いているけれど、まさに小津はそんなタイプだ。

個性が強すぎて

この物語には「私」以外に個性豊かな登場人物たちが、各々の特殊性を発揮して「私」の大学生活を引っ掻き回す。

その最たる人物が小津なのだけれど、小津については前述の通りなのでここでは他の人たちにスポットをあてようと思う。

 

まずは「私」の後輩で孤高の人・明石さん。

第1章では、映画サークル「みそぎ」の宴会にて群衆から1人離れ、手酌でビールを飲んでいる。

この章では「私」と小津は映画サークル「みそぎ」を自主追放の原因となった人物への報復をするべくとある騒ぎを起こすのだが、その様子を気取った明石さんは、

彼女は「あ」「ほ」と口を動かし、まことに的確で鋭利な批評をやってのけた後、そそくさと立って松の木の向こうに避難した

とスマートな行動をする。

しかしながら、そんな孤高でスマートな明石さんにも弱点はあり、とあるものを見た際には「ぎょええええ」と面白い悲鳴を上げる。

なんだかすべて台無しな気がする。

 

お次は小津のどういう師匠か不明な樋口氏。

彼は「私」の下宿の真上に住んでいる常時紺色の浴衣を着ている変人である。

変人なのだけど、彼の描写をまた面白おかしく「私」がしている。

彼は茄子のような顔にいつも暢気な微笑みを浮かべ、どことなく高貴であった。しかし、顎に無精髭が生えていた。髪の毛は奇想天外としか言いようがない癖毛あり、台風が先輩の頭に上陸したように見える。

思うに、「私」は「私」以外の男性に対する描写が辛辣なような気がする。

嫌い、いやな奴、自分じゃどうにもならないと決め込むと、その相手に対する思いが歪み、捩じくれる。

そこがまた、この物語のミソでもあるのだけれど。

 

羽貫さんという人もまた癖の強い人だ。

いや、彼女のとんでもない癖が暴発するのは、多量に飲酒したときだけの限定であるけれども、酔った羽貫さんを相手にするのは恐ろしくなる癖なのである。

彼女は言って、私の眉間に顔を近づけてきた。そうして、唐突に私の眉間を舐めようとしてきた。私はびっくり仰天して、後ずさりした。彼女はあきらかにヘンテコな目つきをして、私にくっついた。

そう、彼女は酔うと人の顔を舐める癖があるのだ。

いろんな酔っ払いを見て来た私も、恐れ慄く癖。

できれば彼女とは酒を酌み交わしたくないものである。

 

そんな個性豊かな面々に「私」はひたすら振り回され、翻弄され、いやいやながらも付き合いつつも、それでも「私」は思うのだ。

二階の樋口氏のところへ行って猥談に耽るのもよい。窪塚歯科医院へ検診に出かけて、羽貫さんの繊細な指を舐めるのもよい。

小津はあいかわらず他人の不幸で飯を食っているのか。

明石さんは一匹だけ欠けた「ふわふわ戦隊モチグマン」を眺めて途方に暮れているのか、それともどこかとんでもない場所で拾いあげたりしているのか。私はそれを確かめたい。

と。

個性が爆発し過ぎているけれど、いいじゃないか。

「私」は案外、この面々との日々を楽しんでいる気がしてならない。

並行世界を彷徨う

この物語はとても不思議な構造をしている。

「私」は並行世界を歩いているのだ。

並行世界とは、とある世界(時空)から分岐して、それに並行して存在する世界(時空)のことである。

例えば、あなたがこの瞬間にこの書評を読むという選択をした時点で、この書評を読まない自分のいる世界(時空)が並行して存在するということである。

つまり「私」は4つの世界、「こっちのサークルへ入ればよかった」「こっちのサークルへ入ればよかった」という選択を物語の中で繰り返しているということである。

人生とは選択の連続である。

着る服、ランチのメニュー、今この瞬間も何かを選択し、何かを選ぶことをやめている。

「慰めるわけじゃないけど、あなたどんな道を選んでも僕に会っていたと思う。直感的に分かります。いずれにしても、僕は全力を尽くしてあなたを駄目にします。運命に抗ってもしょうがないですよ」

小津の言う「運命」なんてたいそうなものを私は信じていないけれど、でも選択することが人生だと言うのなら、運命さえも私は選択したいと思ってしまう。

たとえ抗えないことだとしても。

まとめ

読んでいくと奇妙な感覚にだんだんと捉われていくのが分かる。

「私」とともに並行世界を旅する読者は、「私」の走馬灯のような大学生活を一緒に体験する。

私は過去の自分を抱きしめたりしないし、過去のあやまちを肯定したりしないけれども、とりあえず大目に見てやるにはやぶさかではない

どこまでも自分に甘い「私」の言葉に笑みを浮かべつつ、私は自分の並行世界へと帰ることにした。

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