〈忍野扇(おしの おうぎ)〉の暗躍によって蛇神と化した少女、〈千石撫子(せんごく なでこ)〉。
これまでの気弱さは息を潜め、無邪気かつ奔放な性格となった彼女は、これまで抱え込んできた想いを全て吐き出すかのように、想い人であった〈阿良々木暦(あららぎ こよみ)〉とその恋人〈戦場ヶ原ひたぎ(せんじょうがはら〜)〉の殺害を決意する。
吸血鬼としての能力を最大限まで発現させた阿良々木暦と、かつて伝説の吸血鬼であった〈忍野忍〉ですら歯が立たない怪異となった千石撫子。
戦場ヶ原ひたぎは命懸けの交渉により、殺害の日程を〈高校の卒業式〉まで先伸ばすことに成功。
そして彼女は、かつて自らを苦しめた因縁の詐欺師〈貝木泥舟(かいき でいしゅう)〉に、〈神騙し〉を依頼するのだった…。
『〈物語〉シリーズ』セカンドシーズン、ついに完結‼︎
こんな人におすすめ!
- 〈貝木泥舟〉推しの人
- 西尾維新氏のファンの人
- 『〈物語シリーズ〉』が好きな人
あらすじ・内容紹介
専門家の元締め、〈臥煙伊豆湖(がえん いずこ)〉の計画を利用した〈忍野扇(おしの おうぎ)〉の暗躍により、欺瞞が暴かれ、蛇神となってしまった中学2年性の少女〈千石撫子(せんごく なでこ)〉。
人間であった頃には見せなかった奔放さや無邪気さでこれまで抱え込んできた手前勝手な想いを爆発させる彼女は、想い人であった〈阿良々木暦〉とその恋人〈戦場ヶ原ひたぎ〉、更には阿良々木暦の周辺人物である〈阿良々木月火(あららぎ つきひ)〉や〈神原駿河(かんばる するが)〉たちの殺害を決意する。
そんな凶悪な蛇神に対し命懸けの交渉に挑んだ戦場ヶ原ひたぎは、口八丁で殺害の予定日を〈卒業式〉のその日まで先伸ばすことに成功。
そしてその猶予期間。
限界まで〈吸血鬼度〉を上げた〈阿良々木暦〉と〈忍野忍〉が千石撫子に幾度となく挑み、そして敗れ続けているその最中。
卒業式後も生き延びるため戦場ヶ原ひたぎは、かつて自らを苦しめた因縁の詐欺師〈貝木泥舟〉に〈神騙し〉を依頼する。
依頼を受けた貝木泥舟は神をも騙すため、〈千石撫子〉に関する情報を集め始めるのだった…。
シリーズで初めて〈専門家〉の視点から描かれた1冊にして、『〈物語〉シリーズ』セカンドシーズンの最終話。
そして物語は、〈ファイナルシーズン〉へと続いていく…。
『恋物語』の感想・特徴(ネタバレなし)
『〈物語〉シリーズ』初の、〈専門家〉視点による物語
「信じる」ということは、「騙されたがっている」ということだと、俺は思っている
今作『恋物語』は、『〈物語〉シリーズ』で初めて〈専門家〉の視点で描かれた物語だ。
語り部を務めるのは、かつて〈戦場ヶ原ひたぎ〉を騙し家庭を崩壊へと追い込んだ詐欺師、〈貝木泥舟〉。
専門家、〈忍野メメ(おしの〜)〉や〈影縫余弦(かげぬい よずる)〉の同輩であり、〈なんでも知ってるおねーさん〉こと専門家の元締め、〈臥煙伊豆湖(がえん いずこ)〉の大学の後輩。
そして、かつて詐欺の一環として街に〈おまじない〉を流行らせ、結果〈千石撫子〉が蛇の呪いを受ける大元の原因でもある人物、それが貝木泥舟だ。
今作では、そんな必ずしも〈味方〉とは言い切れない嘘吐きの目線で、物語が進行していく。
神すらも騙して見せようとする詐欺師の手口や、これまでの事件に対する専門家としての所見など、既刊では描かれなかった様々な情報が得られるのは、今作の大きな魅力だろう。
詐欺師VS神
お前のことは—お前しか知らないんだから、だから、お前のことはお前しか、大切にできないんだぜ
そして今作の大きな見所は、詐欺師と神の戦いにある。
全ての髪の毛が毒を持った白蛇となり、作中屈指の強さを誇る怪異となった千石撫子(通称、〈神撫子〉)。
彼女は、〈吸血鬼度〉を限界まで上昇させて身体能力や回復力を強化させた阿良々木暦や、かつては〈怪異殺し〉とも呼ばれた伝説の吸血鬼の成れの果てである〈忍野忍〉ですらも、その強力な毒で苦しめ、全くと言って良い程に歯が立たない存在へと変貌している。
そんな強力な怪異を相手取り、(常人よりは高い身体能力が予想されるが)肉体的には単なる人間でしかない詐欺師が、どのような戦いを繰り広げるのか。
そして、その戦いはどのような結末を迎えるのか。
物語の終局まで、目を離すことができない。
そして、〈物語〉はファイナルシーズンへ
命は取り返しがつかない、絶対に
今作『恋物語』で、『〈物語〉シリーズ』セカンドシーズンは完結し、残されたいくつかの〈謎〉はファイナルシーズンへと持ち越しになる。
〈臥煙伊豆湖〉の計画と、その目的。
行方知れずとなっていた専門家、〈忍野メメ〉の所在。
そして暗躍を続ける転校生〈忍野扇〉の目的と、その正体。
ファーストシーズンで持ち越しとなっていた、各キャラクター達が抱える問題に区切りが付き、そして物語は最終局面へと動き始める。
終局へと向かっていく〈物語〉の盛り上がりを、堪能して欲しい。
まとめ
『〈物語〉シリーズ』セカンドシーズンの、最終話となる今作。
シリーズで初めての、〈専門家〉が語り部を務めるという特殊性や、『囮物語』で蛇神と化した〈千石撫子〉との決着など、シリーズを通して読んできた読者にとっては注目ポイントの多い作品となっている。
また、今作で『化物語』からのヒロイン達が抱える問題や、それらに付随する〈謎〉は概ねの収束を見る。
その結果、物語の根幹に関わる大きな〈謎〉だけが残されており、来る〈ファイナルシーズン〉への期待値が跳ね上がる構成となっている。
セカンドシーズンの完結作として、そしてファイナルシーズンの第0章として楽しめる作品だ。
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