先日本屋大賞が発表されましたね!
受賞されたのは瀬尾まいこさんの『そして、バトンは渡された』でした。
瀬尾まいこさんは私の母が大ファン。
ちょっと変わった、でも隣にいる、そんな人や家族を描くことが上手な作家さんだなあと思います。
そんなちょっと不思議な作品たちから『幸福な食卓』をご紹介します。
あらすじ・内容紹介
主人公の中原佐和子は中学3年生。
物語は高校の教師である父が「父親を辞める」と宣言する始業式の日の朝食から始まります。
佐和子は動揺、兄の直は「いいんじゃない?」というなんとも無責任な発言。
始業式が終わった佐和子が帰りに寄るのは家を出て行った母の家。
それぞれがそれぞれに遠慮して、打ち明けられない過去を持っています。
一見すれば崩壊しているように見える中原家ですが、家族はみんな幸せ。
これはそんな中原家の数年間を描いた短編連作集です。
『幸福な食卓』の感想(ネタバレ)
普通の家族?
普通、という言葉の定義は難しいです。
それでも中原家は普通の家族とは言えないでしょう。
一度自殺未遂をした父、家を出たあとの方が生き生きしている母、元天才児ながら大学を中退し農業を営む兄、そして父の自殺未遂をきっかけに梅雨に体調を崩す佐和子。
それでも彼女たちは「家族」でつながっています。
「うちの家庭って崩壊してるのかな?」
私がプリンにスプーンを突き刺しながら言うと、母さんが目を丸くした。
「どうして?恐ろしく良い家庭だと思うけど」
「父さんが父さんを辞めて、母さんは家を出て別に生活してる」
(中略)
「でも、みんなで朝ご飯を食べ、父さんは父さんという立場にこだわらず子どもたちを見守り、母さんは離れていても子どもたちを愛している。完璧。」
「離れていても家族」だとはよく言いますが、こんな言葉をさらっと言えるお母さんがいる家族はすごく素敵だと思います。
たとえそれがいわゆる「普通」の家族ではないとしても。
佐和子と大浦君
佐和子は高校受験のために塾に通い始めます。
兄の直は天才児で有名だったのですが佐和子の成績は真ん中くらい。
ですが直の噂を聞きつけたある生徒が模試で佐和子よりいい順位を取ると挑戦状を叩きつけます。
その生徒の名前は大浦勉学。
とても単純で素直な男子で、挑戦状を叩きつけたからには当然頭も良い、と思いきや佐和子と良い勝負。
そんな単純な大浦君にあきれながらも、佐和子は家族にいないタイプの彼と仲良くなっていきます。
そして高校に合格した時、佐和子と大浦君は付き合い始めます。
高校に入学した2人は、クラスは分かれてしまうものの仲良く通学します。
学級委員にくじ引きでなってしまった佐和子を助けたり、何があっても大浦君がいれば大丈夫と佐和子は思うくらいに大好きな彼氏でした。
その恋模様はとても可愛く、「青春だなあ」と大学生は思います。
そんな2人を突然の出来事が襲います。
変わらない日常
高2のクリスマスの1ヶ月前、大浦君はバイトを始めます。
それは佐和子にバイト代でクリスマスプレゼントを買うため。
今まではお小遣いでまかなっていた彼は佐和子のために新聞配達を始めます。
クリスマスイブの朝、佐和子は窓から彼に声をかけます。
それが最後の姿でした。
彼はその後事故に遭い亡くなります。
佐和子は深く悲しみ、傷つき、ほとんど食べなくなります。
「父さんはさ、死にたかったのに、失敗してずっと生きてる。だけど、大浦君は死にたくなんかなかったのに、死んじゃうんだもん。死にたい人が死ななくて、死にたい人が死んじゃうなんて、おかしいよ、そんなの不公平だよ」
佐和子が数日ぶりに朝食を食べに食卓に座ったときのセリフです。
人に、家族に配慮出来ないほど傷ついている佐和子。
一日のほとんどを泣いたり、眠ったりして過ごします。
そんな生活を戻すきっかけになったのは直の彼女・ヨシコでした。
彼氏はいつでも作れる。
でも家族を作るのは難しい。
だからもっと甘えていいと思う。
そう彼女は言います。
なかなかむちゃくちゃな励まし方だと思います。
でも事実は事実です。
家族は作るのは難しいけどでも離れることも難しい。
それが支えになることも縛りになることもあります。
でも、それが家族って言うものなのかなと、私はそう思います。
まとめ
家族は難しいです。
考え方が合わないと思っても血のつながりは強いもの。
時々面倒に感じることもあるでしょう。
でもそのつながりはきっといつか支えに変わるときが来るのではないでしょうか。
すごくすごく辛くて、悲しくて、苦しいとき、そばにいてくれるのは優しい友達や彼氏よりも家族なのだと思います。
たまには家族みんなで朝ご飯を食べませんか?
主題歌:星野源/Family Song
他の人から見れば不思議な家族と映るかもしれません。
この曲のMVもそう。
でも、ただ幸せが続けば、悲しいことがあっても次の架け橋になれば、それでいい。
家族ってきっとそういうもの。
離れていても、「家族をやめる」と言っても、どこかでつながっている。
離れていても気にかけている。
だって家族だから。
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