ゲームを介して人間に感染するコンピュータウイルス「バグスター」。
感染者のストレスが高まれば症状は進行し、最終的には感染者は消滅、バグスターは完全体となる。
未知のウイルスに対抗するのは、衛生省から認可を受けて変身し、オペ(バグスターウイルスとの戦闘)を行う仮面ライダー。
小児科研修医、宝生永夢(ほうじょう えむ)は仮面ライダーエグゼイドとなり、患者の笑顔を守るために戦い続ける。
医療とゲーム、覚悟と信念の物語。
目次
こんな人におすすめ!
- ヒーローが好きな人
- キャラ小説が好きな人
- 仮面ライダーエグゼイドを、Vシネマ含め全話視聴し終わった人
あらすじ・内容紹介
バグスターウイルスのパンデミックと「仮面ライダークロニクル」の事件から6年、檀黎斗(だん くろと)の起こした「ゾンビクロニクル」の事件と、それに伴う檀黎斗の消滅から3年の月日が過ぎた。
小児科研修医だった宝生永夢は、味方のバグスターであるポッピーピポパポやパラドと共に、小児科医として患者の笑顔を取り戻し続けていた。
鏡飛彩(かがみ ひいろ)は失った恋人を蘇らせるという決意を新たにし、花家大我(はなや たいが)は相変わらず西馬ニコに振り回され、九条貴利矢は再生医療の研究を進めていた。
各々が信念を胸に自らの道を進み続けていたある日、宝生永夢が務める病院宛に謎の小包が届く。
中には仮面ライダーへの変身アイテムであり、ゲームソフトでもあるアイテム「ガシャット」と、消滅した檀黎斗によるメッセージが込められていた。
宝生永夢のルーツに迫る、仮面ライダーエグゼイドの正統続編。
『仮面ライダーエグゼイド ~マイティノベルX~』の感想・特徴(ネタバレなし)
各キャラクターの心情描写
俺の運命は、俺が変える
仮面ライダーエグゼイドの大きな魅力は、個性豊かなキャラクター達であろう。
物語的な主人公は宝生永夢だが、誰が主人公を張っていても違和感がないほど、それぞれが大きな魅力に溢れている(実際、それぞれのキャラクターを主役に据えたVシネマが3作も作られるほどだ)。
本書では、テレビ本編やVシネマでの活躍を見せたキャラクター達の内面を知ることができる。
特に個人的なお気に入りは、花屋大我の心情描写。
本作では、彼の「オバケが苦手」といったコミカルな要素の理由も明かされる。
本編中の小ネタまで拾ってくる著者の実力が窺い知れる。
宝生永夢のルーツ
…命の大切さもわからなかった人間ですから
テレビ本編で主人公を張った宝生永夢。
しかしその割には、彼そのものの内面や生活は窺い知ることが出来ず、主人公らしい正義感溢れる性格だけが取り上げられていた。
本作では、その宝生永夢の内面や、ときに潔癖とも言えるほどの信念の理由を知ることもできる。
テレビ本編で時折見せる、主人公にあるまじき虚無の表情や、過剰とも思えるほどの行動の理由も明かされ、主人公という仮面の裏に隠された宝生永夢の真の顔、そして過去が明かされる。
また、宝生永夢がパラドに死の恐怖を教えて改心させるため、パラドをこれでもかと言うほどボコボコにしたことや、本編ラスボスの檀政宗(だん まさむね)を欺く為とはいえ九条貴利矢をぶん殴ったことなどに対して、周囲が少し引いていたことなども明かされる。
周囲の宝生永夢に対する評価や心情などが明かされるのも、本書の大きな魅力の1つだろう。
ハイパームテキと小説オリジナルフォーム
いずれまた。才能の旅に出よう
仮面ライダーという作品の1番の魅力。
それはなんといっても「変身」にあるだろう。
強大な敵を前に、生身の肉体から強力な力を持つ仮面の戦士「仮面ライダー」となり、戦いに臨む。
数多くの子供達が、その魅力に取り憑かれたのではないだろうか。
そして現代の仮面ライダーの多彩なフォームチェンジは、今や作品に無くてはならないものとなっている。
本作では、本編で無慈悲なまでの強さを見せた「仮面ライダーエグゼイド ムテキゲーマー」、通称「ハイパームテキ」が敵に回ったときの恐怖が味わえる。
凡ゆる攻撃でダメージが通らず、多少のけぞるだけという、味方にいた時は頼もしいフォームが敵に回った瞬間悪夢に変わる恐ろしさも、本書ならでは。
更に、本編でハイパームテキに完膚なきまでに叩きのめされたパラドの雪辱戦も、非常に心が躍る。
そして、何よりテンションが上がるのが小説オリジナルフォーム「マイティノベルX」。
本編の正統続編のVシネマ『仮面ライダーゲンムvsレーザー』で初登場を果たした作中最強の「仮面ライダーゲンム ゴッドマキシマムゲーマーレベルビリオン」との戦いから生まれたそのフォームは、純白のボディを持つと描写されている。
イメージ画像や立体物が存在しないのが悔やまれるほど、その活躍は印象的。
ハイパームテキとは一味違った特殊な能力による戦闘も、本作の大きな見どころの1つだ。
まとめ
たった1つしかない大切な命を救うための「医療」と、残機があれば何度でも命がコンティニューできる「ゲーム」。
相反する2つの「命の価値」というテーマを扱いきった本編の続編として、申し分のない出来の小説だ。
本編の描くシーンで、それぞれのキャラクターがどのように感じていたかまで分かる本書は、「仮面ライダーエグゼイド」という作品を追い続けたファンならば必読の1冊だと言える。
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