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『真夜中の果物』あらすじと感想【落ち込んでいるときにそっと背中を押してくれる1冊】

『真夜中の果物』あらすじと感想【落ち込んでいるときにそっと背中を押してくれる1冊】

この作品は、せつない記憶を切り取った 37のショートストーリーと37の短歌で構成されており、ショートストーリーのタイトルは、そのストーリーでキーワードとなる言葉になっています。

うーん、この言葉のチョイスも”THE カトチエさん”だなぁと、カトチエさんファンの私は思っております。(笑)

その中でも、特に良かったと感じた3作を紹介いたします。

真夜中の果物の感想(ネタバレ)

よく晴れた日に

“わたし”は、約2年勤務した会社を辞めた。憧れていたやりたかった仕事だった。

しかし、体は正直で 日に日に体調が悪くなっていった。

自分には向いていなかったのだ。

退社を決意し、悔しい気持ちは強かったが 最後まで涙は出なかった。

だが、友人の声を電話で聞いた途端に涙が止まらなくなった。

その後、友人たちが”わたし”を海に連れ出してくれる。

何も聞かずに、くだらない会話をして。

それぞれの海を見つめた。

忘れられない 景色があるうちは うまく笑えるような気がする

何かに落ち込んだ時というと、目の前はそのことばかりで、考えれば考えるほど落ち込んでゆく。

もうだめだ…。と思ったとき、この短歌に救われました。

まだまだやれる!まだまだ笑える!と、背中を押してくれるストーリー×短歌です。

からっぽの部屋

“わたし”と”治”は、今日で同棲を解消し、そして別れる。

荷造りを終え、不動産屋との立会いまでの時間。

2人は、あの頃のように、他愛のない話をし、床に寝そべっている。

このまま時が止まればいいと願う中、チャイムの音。

これが現実。

“わたしは今日、この部屋とも治とも お別れをする”

窓からの光が まぶしいせいにする うまく前へと進めないのは

“わたし”が涙を滲ませているのを、まぶしくて前へと進めないと表現しているところ、前へと進めないのは、気持ちの部分もかけているところ。

そして、ストーリーから短歌へ移る最後の文の繋ぎ。

加藤千恵さんだからこそ表現できる、この切なさ。

読了後、泣きました…。(笑)

カシスオレンジ

“わたし”は、ある日の仕事中に昔好きだった、美容師の”国村さん”と偶然に再会した。

学生時代、彼会いたさに やたらと美容院に通った日々。

だが、特に発展することもなく、連絡も取れずに2年半。

2人が偶然に出会ってから2週間後、2人は居酒屋にいた。

職場の愚痴を話し続け目の前でだらしなく酔っぱらう国村さんに、昔の大人に思っていた雰囲気もかけらもなく”こんな人だったっけ”と”わたし”は思う。

“国村さん”が学生時代、カシオレしか飲めなかった”わたし”に「ビール飲めるようになったんだね。」と言う。

“もうあの頃のわたしはいないのだ。

それと同じように あの頃の好きだった”国村さん”ももうどこにもいないのだった。”

確実に時間は流れ あの頃の知らない大人になった

よく好きだった相手や、叶わなかった恋の相手、終わってしまった相手を、当時の記憶や感情のまま自分の中にしまっていて、再会してみると”こんな人だったっけ”と幻滅してしまうということは少なくない。

そこもまた、”わたし”が”国村さん”を責めるような書き方をせず、過去は過去のものとして新たに自分の道を歩くという決意に感じられ、くよくよしている場合じゃない!と、これもまた背中を押された1作でした。

まとめ

今回紹介させていただいたのは、3ストーリーと一部にしかすぎませんが、加藤千恵さんというと恋愛小説というイメージをお持ちの方も多いと思いますが、仕事、友情、そして恋愛のさまざまな私たちの日常のふとした瞬間の気持ちを切なく、そして優しく書かれるのが加藤千恵さんだと私は思っています。

また一人称が”わたし”ということから、自分の記憶や経験と重ねてしまうのです…。

加藤千恵さんご本人の、あとがき”まっすぐに歩いてきたはずだったのに振り返って確認すると、直線だと思っていた道は ゆるやかなカーブだった。

そんなゆるいカーブにさしかかっている人たちが書きたかった”と。

私もまさに、ゆるいカーブどころか、ゆるいカーブから転落しかけている時にこの本と出会い、自分のことのように感じたストーリーもあり、泣き、そして背中を押され、読了後は急に前向きな気持ちになれたことを覚えています。

この本は、私にとってお守りのような1冊です。

たくさんの方のお守りの1冊となったら…と願いつつ、紹介させていただきました。

主題歌:安室奈美恵/Baby Don’t Cry

この作品と曲を合わせるとしたら、安室奈美恵さんの『Baby Don’t Cry』です。

きっとこうして人はちょっとずつ 過ぎた季節に記憶を隠す いつか零れた涙集まって陽を浴びて輝くまで

考えてもわかんない時もあるって 散々でも前に続く道のどこかに望みはあるから

「どんなに辛くたって、希望はいつか必ず見つかるから、前に進んでゆこう」と励まされるこの曲は、この作品にとても合っていると思います。

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