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『居た場所』あらすじと感想【記憶と存在の不確かさを描き出す新しい旅物語!】

『居た場所』あらすじと感想【記憶と存在の 不確かさを描き出す 新しい旅物語!】

今回は第160回芥川賞候補作となった高山羽根子さんの『居た場所』を紹介します。

「わずかずつ世界を現実からずらして、異化する技術は総じて評価が高かった」

これは選考会後の選考委員による会見でのコメントです。

また委員全体から「たいへんよい雰囲気を作っている」という評価があったそうです。

選考経過についての講評を聞きながら疑問が浮かびます。

「わずかずつ世界を現実からずらして、異化する技術」って何なんだ?

その技術から生まれる「たいへんよい雰囲気」とは?

これは読むしかない!

芥川賞発表の翌日には本屋で『居た場所』を手に取り、その雰囲気を堪能しました。

あらすじ・内容紹介

舞台は大まかに三か所で「私」の住む街(日本)、「私」の妻となった「小翠(シャオツイ)」の生まれた街(恐らく中国)、生まれた街から出て初めて一人暮らしをした街(恐らくマカオか香港)の三か所です。

「私」は酒蔵で一家で働いています。

そんな暮らしの中で、小翠が突然、

「初めてのひとりで暮らした場所に、もう一度、行きたい」

と言い出します。

「私」は小翠に言われて初めて、家族から離れて一人暮らしをした時の彼女のことを全く知らなかったことに気づきます。

そのことに気づいて「私」の気持ちに浮かんだのは、小翠の「何の用事もない、人生の一時期住んでいただけの場所へ行きたい」という気持ちへの興味と、「私」が全く知らなかった一人暮らしをした時の彼女に対する好奇心です。

そんな気持ちもあって「いっしょに行こうか」と「私」は彼女に提案します。

一緒に旅に出ることが決まり、その準備をしているとおかしなことに気づきます。

小翠のかつて暮らしていた地域はなぜか地図に表示されていません。

この小説はつまり、表示されない街の地図を片手に始まる二人の旅の話です。

しかし、ただの旅の話ではなくて、小翠の過去の体験が旅中の「私」と小翠に起きる不可思議な出来事にも繋がって、独特の雰囲気が漂っています。

本の帯の説明では「記憶と存在の不確かさを鮮やかに描き出す、まったく新しい「生」の魔法的リアリズム」。

不思議な魅力を秘めた話です。その魅力について踏み込んでいきます。

注意
ここからネタバレ注意です。

居た場所の感想(ネタバレ)

この小説の魅力とも言える雰囲気。

その雰囲気を作っている要素について3つ取り上げます。

「小翠の人柄」について

小翠は「私」から見ると、

よく働くけどちょっとせっかちで大ざっぱなところがある、だいたいいつも笑顔の女性

という印象です。

やや片言の日本語は素朴さを感じるし、話す内容にも素直さが感じられて、人に好かれそうな人柄を感じます。

しかし、旅先の小翠がかつて暮らした地域では彼女の雰囲気が微かに変わります。

例えば現地の人と会話する時に時折見られる早口の強い口調。

また土地勘のない「私」を気にせず、前へと歩いていってしまう場面。

さらに「私」が地図から小翠ゆかりの地域の記載がなくなったことに対して理由を推測して話すと、「想像していなかったくらいの強い言い方」で「私」に返答する場面もあります。

可愛らしさの裏に見え隠れする、見たことのない彼女の姿が「私」は気になります。

ミステリアスな雰囲気を纏い、「私」からすれば本当の小翠の姿が見えなくなるようです。

「居た場所」について

タイトルにもなっている「居た場所」についてです。

皆さんは「居た場所」と言われると何を連想しますか?

私だったら、実家だった家の自分の部屋や通っていた学校の教室を連想します。

当時、当たり前のように私が居た場所という意味で。

でも今となっては実家は引っ越して家族はそれぞれの道を歩んでいるし、通っていた中学校は3月で閉校になるという話も聞きました。

場所は何であれ、誰にでも「居た場所」があって、時間と共に必ず変化します。

この小説でも小翠の居た場所への執着が物語の軸になっています。

小翠がかつて暮らしていた場所の地図を作ろうと行動する描写や、小翠が「私」との家庭内では「私」の亡くなった母親の役割をそっくりそのまま真似する様子の描写など、自分の居場所というものへの拘りを感じます。

作品全体としてその場所に存在すること(居ること、居たこと)に目を向けているように私は感じました。

一つ一つの会話やそこにある物が全体の雰囲気を作っているんだと考えるとすごい表現です。

「居た場所」に絡めてこの小説の大好きな場面を紹介します。

それは小翠がかつて一人暮らしをしていた部屋に入って「私」と会話するシーン。

「日本の言いかた、忘れてしまった。昔のこと、いい、楽しい、ええと……」

「懐かしい?」

「そう、そう」

小翠は声を出さないで、息だけでふふっと笑った。

地図から表記がなくなれば悲しくもなるし、寂しくもなります。

でも当時の雰囲気のかけらを見つけたら嬉しくなってしまうような懐かしさが込み上げてきます。

物語にはこの場面のように読んでいて微笑んでしまうような雰囲気も流れています。

「現実からずらされていく描写」について

現実では起こり得ないような出来事が回想シーンや旅の中で起こります。

細かい説明はネタバレが過ぎるので抑えますが、ざっくり上げると、

小翠の幼少の地元で過ごした時の耳から出る黄緑色の液体の話、

小翠が体調を崩して吐く姿、「私」も黄緑色の液体に触れて意識を失う姿など、他にも色々……。

ファンタジーというか現実から一歩離れたような出来事がこの小説をただの物語ではない、と思わせるのです。

これはどうなってしまう話なのだろう。

そして彼女は一体何者なのだろう。

全く先が読めないからこそ、気になって、最後まで一気に読んでいました。

まとめ

ラストも衝撃的です。どう捉えればいいのか迷う自分がいます。

読んだ人に感想を聞いてみれば、きっとすっきりしないという人もいると思うし、最後まで退屈しなかったという人もいると思います。

賛否両論あって、好き嫌いがはっきり分かれるくらい尖った小説……。

作品の消化に一筋縄ではいかないものを感じて、読み終わってぱらぱら戻りながら、この『居た場所』という小説について考えていました。

これは面白かったのか?

分からないくらい混乱していましたが、間違いなく言えるのは、読み終わってもこの作品から離れることができませんでした。

強い力を持った小説です。

読者を惹きつける力。

それはまさに「たいへんよい雰囲気」なのだろうと思いつつ、まだ囚われています。

主題歌:Bjork/Joga

Bjork(ビョーク)『Joga(ヨーガ)』

独特な読者を飲み込むような雰囲気を持っている『居た場所』とこの曲の圧倒的な雰囲気が合っていると思い選びました。

歌詞についても、「小翠」を存在を追いかける「私」の姿に重なります。

どちらも気持ちをどこか現実とは違う世界に運んでいくような力で揺さぶってくれます。

Emotional landscapes(感情の織り成す景観は)

They puzzle me(私を当惑させる)

then the riddle gets solved(かと思えば突然謎は解けて)

and you push me up to this(あなたは私を追い立てるの)

State of emergency(緊急事態)

How beatuiful to be!(なんて美しいところ!)

State of emergency(緊急事態)

Is where I want to be(それこそ私が望む場所)

(作詞:Bjork&Sigurjon Birgir Sigurdsson)

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