今村昌弘『屍人荘の殺人』を読んだきっかけは、某映画レビューチャンネルのユーチューバーが動画で紹介していたことです。当時はちょうど映画が公開された時期で、高いお金を払って映画館に行くのは億劫ですが、原作ならばすぐ読めそうだと思い、電子書籍を購入しました。
ありそうでなかったゾンビと密室を組み合わせた発想といい、エキセントリックなキャラクターたちの活躍といい、エンタメのお手本のような娯楽要素が詰まっていて楽しめました。
こんな人におすすめ!
- ザ・エンタメ作品でハラハラドキドキしたい
- ゾンビを使った驚天動地のトリックを読みたい
- 美少女探偵の活躍が見たい
あらすじ・内容紹介
主人公は神紅大学ミステリ愛好会所属の学生・葉村譲。彼は「神紅のホームズ」を自称するミステリ愛好会会長・明智恭介に振り回され、ドタバタ騒々しい毎日を送っていました。
二人は食堂で会った謎の少女・剣崎比留子に誘われ、映画研究部の夏合宿に参加を決めます。
合宿初日の夜、別荘付近のライブ会場でパンデミックが発生。ゾンビ化した若者たちが次々と人を襲い、パニックが広がっていきます。
葉村は命からがら別荘に逃げ込んだものの、明智は間に合わず命を落とし、映画研究会の面々は孤立に追い込まれました。
翌朝、映画研究会メンバーが立てこもった紫湛荘の一室で、部長の死体が発見されます。
彼は合宿中に女生徒をレイプする常習犯な上、現場は密室と化していました。
その後も不可解な殺人が連続し、名探偵比留子と助手の葉村が捜査に乗り出します。
『屍人荘の殺人』の感想(ネタバレ)
『屍人荘の殺人』の最大の特徴は、ゾンビパニックと密室を掛け合わせた「ホラーミステリー」であること。
舞台設定こそ奇抜なものの、密室トリックの真相は本格推理の様式美にのっとり、ロジカルで納得できるものになっています。この匙加減が素晴らしい。
登場人物も皆キャラが立っており、葉村の先輩にしてトラブルメイカーの明智は、序盤で退場するのが惜しいほど印象的な活躍を見せてくれます。ヒロイン兼名探偵の肥留子も可愛らしく、コケティッシュな言動とクレバーな推理が光っていました。
本作はいわゆる「クローズドサークルもの」にあたり、ゾンビから逃げて別荘に立てこもった人々がギスギスとした軋轢を起こす様子がリアリティーたっぷりに描かれています。
注目すべきは第一の殺人で犯人が用いたトリック。ゾンビを使った驚天動地の仕掛けには、「その手があったか!」と脱帽しました。
犯人捜しのスリルと同時進行で、ゾンビの大群に包囲される恐怖が味わえるのも贅沢。
いかに知恵を絞りサバイバルするか、メンバーが全滅するまで殺人は続くのか、ハラハラドキドキが止まりませんでした。
今まで読んだことがない小説をお求めの方は、ぜひ本作を手に取り新しい扉を開いてください。
まとめ
『屍人荘の殺人』はとても読みやすく、活字慣れしてない方にも抵抗なく読みやすいかと思います。
葉村や映画研究部メンバーがゾンビに襲われ、一人また一人と脱落していくシーンは迫力満点で、ゾンビ映画ならびにホラー小説マニアもきっと気に入るはず。
「美少女名探偵」のキーワードにそそられる方は、綿密な現場検証を行い密室の謎を解き明かす、比留子のファンになってしまうかもしれません。
バディ以上恋愛未満の関係である葉村とのコミカルな掛け合いも楽しめました。
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