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『東京ディストピア日記』あらすじと感想【直木賞作家が記録する新型コロナの現実】

東京ディストピア日記書影画像

「ディストピア」とは「ユートピア」の対義語で、「反理想社会」「暗黒世界」と訳さ、政府によって自由や行動などが制限されている社会などを指すことが多い。

新型コロナが蔓延し、日本はディストピア化したと言える。

コロナという見えない敵と戦い続ける「東京のディストピア」で見てくるものとは、一体なんだろうか?

こんな人におすすめ!

  • 新型コロナを理不尽だと思っている人
  • 報道とはちがう新型コロナを知りたい人
  • 日常風景から新型コロナについて知りたい人

あらすじ・内容紹介

ことは2020年2月から始まった。

新型コロナに感染した最初の患者が確認され、それは瞬く間に広がり、爆発的な感染力を見せた。

そんな感染の中心にもなってしまった日本の首都東京で暮らす直木賞作家・桜庭一樹。

チケットは完売だというのに4分の1しか観客が入ってない文楽に始まり、街にはマスク姿の人たちが増え始める。

学校の臨時休校、各国からの入国制限、行きつけのカフェの臨時休業。

少しずつ生活に影を落とし始める新型コロナ。

そして、東京オリンピックの延期。

2020年1月から2021年1月までの東京の様子と、報道される内容をつぶさに記録し、ときに厳しく、ときに力強く、新型コロナや生活、世界について語る。

『東京ディストピア日記』の感想・特徴(ネタバレなし)

「体験済みの危機感」となってしまった緊急事態宣言

日本人が恐らく初めて体験するであろう「緊急事態宣言」。

初めてのことはだれであろうと緊張する。

「これからどうなるんだろう?」

「私たちの生活はいったいどう変わっていくんだろう?」

だれしもきっとそんな思いが頭を駆け巡ったはずだ。

しかし、ふたを開けてみれば基本的な生活は変わらないという事実を知ることになる。

そのため2度目の緊急事態宣言が発令したとき、1度目のようにはならなかった。

わたしたちは、今年の春ごろとちがって、もう、自分たちは未知の危機のただ中にいるわけじゃなくて、「知っている危機がまたきた」と感じているような気がする。

私たちの中の危機感はどこかへ去ってしまったのだろうか。

マンネリともまたちがい、危機感を感じないといけないのに、その「危機」について私たちは知っているがために、何も感じなくなっているということだろうか。

危機が迫っている中、何も有効な手を打たないことは愚かなことだと知っているのに、闇雲に私たちは「元の生活に戻りたい」と願うばかりだ。

緊急事態宣言は、私たちにとってもう「体験済みの危機感」になってしまったのだ。

人間は体験してないことは恐れるが、1度経験してしまい何事もなかった危機についてはあまり意味がないと判断してしまう。

危機を1度乗り越えてしまった(本当は乗り越えてないけれど)私たちは、これからも何も変わらない生活が享受できると思っている。

そのせいか、いつからかどれだけの危機感を持てばいいのか分からなくなっている気がする。

線引きされた危機は、もはや危機ではないということかもしれない。

もちろん、感染予防して暮らし、防犯も気をつけているつもりだけど、でも、どこかで気が緩んでいる。

前回みたいにまた切り抜けられるような気がしているのかもしれない。

論理的根拠は、じつはないのだが。

だれもが論理的根拠のない「私は感染しない」という思い込みを持っている。

日々たくさんの人が感染をしているのに「私だけは大丈夫」と。

それは「体験済みの危機感」を体験してしまった結果なのかもしれない。

不自由によるストレスの中でも、健康で戦い続けよ

コロナ禍において、私たちは自由を失った。

移動の自由、外食の自由、マスクをする、しないの自由、会話の自由、人との交流の自由。

そして「心の余裕」も失った。

知人から「小さな子を連れてると、高齢男性に『マスクさせろこの野郎!』とか大声で絡まれるんだよ。怖いよ」と聞いたのを思い出す。

この人たちは、弱そうな女性、子供など守らなければいけない存在を連れている人など、相手を選び、ストレスを発散させてるのだろうか。

確かに、不自由な生活になってしまったと思う。

どこへ行っても、消毒、マスク、検温。本当に窮屈だ。

しかし、だれか1人にこんな不自由な生活を強いているわけではなく、みんなが平等にこの不自由で窮屈な生活をさせられている。

ディズニーランドにも行けない、おいしいお酒とごはんを友達とワイワイおしゃべりしながら飲み食いできない。

きっと地元に帰れない人もたくさんいるだろう。

そんな一見、不平等で理不尽とも思えることをすべての人が強いられているのに、まるで自分だけが「こんなにも我慢している」と思ってしまうからこそ、そのはけ口が女性や子供という弱い者へと向くのだろう。

「どうして自分だけ」という思いを持ってしまい、コロナと戦い続けているからが故に、「心の余裕」まで失う人が続出してしまうのは、ある意味では仕方のないことなのかもしれない。

私たちは今までこんなに様々なことを制限される状況を、国から要求されることがなかった。

緊急事態宣言といい、外出の自粛といい、国民全体で何かと戦い続けるために、己を犠牲にしないといけないことなんてなかった。

今、私たちが求められていることは、まだ戦い続けること、そして元気でいることだ。

世界がこうなってしまうと、いや、変わらずみんな元気で、なにごともなく日常が続くことこそ、生きることなのだと、この日は強く思えた。

元気でいることがこんなにも尊く、大切なことだと思わせてくれたのは、皮肉にもこの「新型コロナ」という感染症が流行したことだった。

戦い続けているからこそ、失ってしまったこともたくさんある。

でもそれは戦っているからこそ、立ち向かっているからこそ失ってしまったのだ。

たとえもうしばらくこの日々が続いたとしても、失った以上のものを自粛の日々から得たいと私は必死にもがいている。

想像力を働かせよ。アフターコロナの世界でも

私たちに今、必要なものはなんだろう。

コロナを蔓延させないこと?

きちんと自粛生活させること?

たぶん、それもすごく大切なことだと思う。

ただ、それよりも大事なことがある。

それは、

互いに寄り添え。議論しろ。そして優しくなれ。想像力を持て。この新しい世界、アフターコロナの世界で。

こういうことなのである。

新型コロナという感染症が世界に広がり、私たちの住む世の中はしばらく「コロナが存在しない世界」へと戻ることはできなくなってしまった。

マスクをしなくてもいい世の中はまた訪れるかもしれないけれど、コロナという病気はしばらく無くならない。

だとしたら、桜庭さんが言うようにお互いに寄り添い、話し合い、思いやりを持って生活することがいかに大切か分かるはずだ。

それもこれもすべて想像力を働かせることが大事なのである。

私たちがこれから生きていく世界は、すべて「アフターコロナの世界」と呼ばれる。

コロナが収束し一見日常を取り戻したかのように見えるかもしれない世の中も、全部「アフターコロナの世界」であって、もしかしたら私たちがもともと生活していた暮らし方と少しずつ違うかもしれない。

そんなときこそ、想像力を働かせよ。

アフターコロナの世界で生きていくための、想像力を働かせよ。

どうやったらお店で楽しくごはんを食べて、楽しくお酒が飲めるか。

どうやったら大好きなアイドルのコンサートにまた行けるか。

どうやったらまたいろんな場所に旅行へ行けるか。

この世界には70億人以上の人間が住んでいる。

つまり、70億通り以上の想像力が存在しているわけである。

たくさんの人が手を取り合って生きていけるアフターコロナの世界を、みんなの想像力を総動員して考えていきたい。

まとめ

わたしたち、一人一人、いつだって、胸を張り、昨日より強く、優しくなろうとしながら、よりおおきな想像力を持たんとし、今日も、明日も、そのつぎの日も、みんなして、そう、こうやって、いさましく歩くのだ。

街からは人気がなくなり、店では閑古鳥が鳴く。

でも、変わってしまった世の中を嘆くのではなく、私たちは私たちなりの優しさと思いやりと、想像力を持って、毎日を過ごすことが大切なのだ。

落ち込んだり悲しんでばかりにならず、いさましくコロナに負けず歩いて行こう。

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