今回は瀬尾まいこさん『強運の持ち主』を紹介します。
この作品は占い師のルイーズ吉田が主人公の話です。
「占い師のルイーズ吉田」とはなかなか特徴的でインパクトのある名前の主人公ですよね。
そもそも占いと言われて皆さんはどんなイメージが浮かびますか?
占いを信じるとか信じないとか色々な意見もあるとは思います。
私は占い好きの友人がいて友人は恋愛に悩む度に「あー占ってもらおう」としげしげ占い師の元へ通っていました。
友人はそれでも何度かうまくいかない恋愛にぶち当たっていましたが、占ってもらうことで気持ちがリセットされて前向きになれるきっかけを掴んでいるようでした。
勿論当たる時も当たらない時もあったのでしょうが、少なくともこれからに向けて背中を押されて元気に毎日を頑張る友人の姿は素敵でした。
この作品は悩みのある人達が吉田さんとの関わりを通して「この先、きっといいことがある」と前に踏み出していくお話です。
これからに向けて一歩踏み出す人々の姿を瀬尾まいこさんの優しく温かみのある言葉で描かれています。
あらすじ・内容紹介
元OLが営業の仕事で鍛えた話術を活かし、ルイーズ吉田という名前の占い師に転身します。
父と母のどちらを選ぶべき?という小学生男子や、占いが何度外れても訪れる女子高生、物事のおしまいが見える青年など、ルイーズ吉田が関わる人々との4つの物語が綴られています。
じんわり優しく温かい瀬尾まいこさんの世界が詰まった短編集です。
強運の持ち主の感想(ネタバレ)
ニベア
ルイーズ吉田もジュリエ青柳も名前は胡散臭いし、始め詐欺師感すら感じていたのにまるで違って人間味があって驚きました。
優しい少年と少年の父親の真実を知った時、温かい気持ちが胸に広がりました。
でも亡き母親がさせていたニベアの懐かしい匂いのくだりはちょっと切ないですね。
思いやりが行き交う世界だけど向き合っている過去は少し切なくてじんわりとした余韻が残ります。
ファミリーセンター
女子高生は誰と仲良くなりたいのか?
ルイーズ吉田に感情移入しながら謎に引き寄せられるように読み進めました。
女子高生の母親と再婚した、新しい父親と仲良くなる方法なのだと分かって、占いのアドバイスを聞いて髪までばっさり切ってしまうなんて墨田まゆみは健気なんだと感じました。
そしてうまくいかなくても何度も新しい方法を模索する姿には私自身が励まされて、今目の前にある問題をなんとかして頑張ろうという気持ちにさせられました。
占い師と相談者という図式でしたけど、墨田まゆみの姿を見てルイーズ吉田も通彦との生活を作っていこうと思うラストがなんだか上記した私の気持ちと重なって、うんうん頷きながら読めました。
おしまい予言
武田くんとの会話は軽快で楽しいです。
おしまいが見える武田くんとの会話は笑えるやりとりも多いですし、胸に刺さるような会話もありました。
特にあと2日で今年も終わるという日にルイーズ吉田が武田くんに話した言葉、
いくら正しいことでも、先のことを教えられるのは幸せじゃないよ。占いにしたって、事実を伝えるのがすべてじゃない。その人がさ、よりよくなれるように、踏みとどまってる足を進められるように、ちょっと背中を押すだけ。占いの役割って、そういうことなんだね。
このセリフを読んでこの短編集がどういう物語なのか分かったような気がします。
強運の持ち主
ルイーズ吉田と旦那の通彦の生活模様は今までの短編の中で度々描かれていました。
新しく雇ったアシスタントの竹子さんの様子や成長を通して、ルイーズ吉田自身が背中を押されるように足を進める終わり方は一冊の本の終わりとしてすとんと腹に落ちました。
最後の文章である、
占いに直感に、アシスタントに師匠に恋人に。いろんなものを頼りに進んでいけば、なんとなくそれらしいものにたどり着けそうな気がする。
暗い予感があったとしても、占いが絶対とか直感が絶対とかではなくて、周りの人も含めて、いろんなものを頼りにしていけばそれらしくなんとかなるという考えは大事だと思います。
曖昧な文章のようですけど、未知のこれからに対してなんとかなると思えるか思えないかというのは大きい気がして、私はルイーズ吉田のこの気持ちでの終わり方がとても心に響きました。
まとめ
瀬尾まいこさんの世界観は読み終えると温かくて前向きになれます。
もうじき新学校、新学年、新社会人……と、色んな未知の事柄を控えている人も多いと思います。
環境が変わらなくても春に心機一転頑張ろうと思っている方も多いのではないでしょうか。
これからを想像すると不安も期待もあってそわそわしますよね。
私自身はこれからうまくいかなそうなことがあってくよくよ考えてしまう時もあるし、あーもう今日は寝ようひたすら寝ようと現実逃避気味に早寝してしまうこともあります。
それはそれでいいんですけど、明日とかこれからをきっといいことがあるって思えることは毎日を自分らしく過ごすために大切なことかも。
占いの物語はこれからの物語で、今から迎える季節にぴったりと思い紹介させて頂きました。
主題歌:Mr.Children/また会えるかな
やや一方通行でも君の力になりたいという歌詞が微笑ましいです。
職場にて疲れ切った体を
僕がそばにいて抱きしめたいな
いつも優柔不断じゃまずいだろう
やる時はやるってな奴になってやろうじゃない(作詞:桜井和寿)
一本気なんだけど軽くてつい笑ってしまうような歌詞とテンポのいい曲調が「なんとなくそれらしいものにたどり着けそうな気がする」という本の終わりのすがすがしさと合っていて選びました。
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