『#9(ナンバーナイン)』あらすじと感想【女は#9に翻弄される。中国芸術と運命の恋】

『#9(ナンバーナイン)』あらすじと感想【女は#9に翻弄される。中国芸術と運命の恋】

あなたは運命の恋を信じますか?

いつもと変わらない日常に運命の悪戯が起こったとき、あなたならどうしますか?

身も心も翻弄される恋。

ここにもまた1人、運命の恋に翻弄された人物がいます。

本書の主人公、深澤真紅です。

原田マハさんと言えば、アンリ・ルソーの絵画の秘密を追った『楽園のカンヴァス』やフィンセント・ファン・ゴッホを描いた『たゆたえども沈まず』など、アート小説が有名ですが、この作品は大人の恋愛小説です。

一味違った原田マハ作品を紹介したいと思います。

こんな人におすすめ!

  • 大人の恋愛小説が好きな方
  • 原田マハさんの初期の作品を読みたい方
  • 中国芸術作品のバイヤー業務を少しでも見たい方

あらすじ・内容紹介

東京でインテリア・アートの販売員をしていた深澤真紅。

無名の画家であった父と同じアートの道に惹かれ就職したが、営業成績が悪く、上司に叱責される毎日で挫折を味わっていた。

仕事を辞めたいと思っていたある日、ふと立ち寄ったジュエリーショップで、中国人紳士に突然リングケースをプレゼントされる。

そこにはジュエリーショップで購入していたリング、ではなく彼の名前、「王剣」の文字と電話番号が入っていた。

“王剣にもう一度会いたい”

真紅はその一心で、上海に渡航する。

彼から送られてきた「緑葉西路13弄9号(通称:#9)」の鍵を持って。

王剣の正体は、年商3億ドルの開発会社トップであり、中国語だけでなく、日本語や英語にも堪能で世界を渡り歩く。

「#9」とは彼が所有するセカンドハウスだ。

そして、中国美術のコレクションを展示する家でもあった。

王剣と再会する前、真紅はお土産物屋で観音像を10元で購入するが、実は唐代後期の芸術品であり、真紅は王剣に真の美術品を見抜く洞察力を買われていた。

そこで、真紅は#9で中国美術の講義を受け、見識を深めていく。

『#9(ナンバーナイン)』の感想・特徴(ネタバレなし)

運命の恋

これを運命の恋と言わず、何と言うのだろうか。

日本のジュエリーショップで出会った男性は上海の大企業のCEOで、しかも彼は真紅のベースキャリアである「アート」に関心が高く、自分のセカンドハウスにまで呼んで中国芸術を学ばせる。

真紅が当時名前も知らなかった中国人紳士に恋をしただけで、日本を飛び越えてしまったのは、恋が成せる業なのでしょう。

そして、彼―王剣への恋は、真紅を中国芸術へ引き込んだだけでなく、彼女のその後の人生をも変えていくのです。

中国美術

きっかけは王剣への恋かもしれません。

しかし、真紅は中国芸術に惹かれていきます。

(中国美術史)講義のとき、私は静かな熱狂に満たされて作品にのめり込んでいた。王剣の愛するものを、私も愛するんだ。そんな気持ちがあった。

自分が王剣を愛するように、彼に愛されているとは思っていなかった。けれど、ここまで導き、こうして中国美術に触れる機会を作ってくれた自体、彼が私に何か強い欲求を抱いている、と感じさせた。その欲求にどうしても応えたかった。

『楽園のカンヴァス』で「アート小説」という分野を確立し、キュレーターという経歴もあいまって、「作家原田マハ=アート」と結びついている人も多いでしょう。

しかし、本書は『楽園のカンヴァス』よりも前に刊行されており、彼女の作品の中で初めてアートを扱ったものとなります。

そして、今回物語の核になっている中国芸術には、西洋画と異なり四千年の歴史があります。

確かに、館の中には四千年の中国美術史を語るに十分な文物があった。けれどこれらの品々が現代に伝えられるのに、どれほどたくさんの血塗られた戦があったことだろう。気の遠くなるような時の流れの中、幾多の抗争と略奪、破壊を乗り越えて、これらの物たちは奇跡的に生き延びたのだ。

特定の作品が取り上げられているわけではありませんが、一言で中国美術といっても、歴史の深さ、幾度の戦火を潜り抜けてきた力は、西洋絵画よりも強いのかもしれません。

そして詳細は省きますが、この小説においても「作品が戦火を潜り抜ける」ことは鍵となるポイントだと考えています。

#9

ナンバーナイン。

普通の人が見たらただの数字です。

しかし、真紅にとっては人生が変わった数字です。

運命の恋の相手、王剣が持つセカンドハウスの住所であり、真紅が彼を待ち焦がれた場所。

そして、中国美術の見識を深めた場所。

タイトルにもあるように、大きな意味を持ちます。

そして、このナンバーナインは真紅にとって、上海の滞在でもう1つ大きな意味を持つようになります。

それは小説を読んでのお楽しみ。

まとめ

身も心も悶える恋。

それは時に、人生を思わぬ方向へ進めることがあります。

本書の主人公・深澤真紅にとってそれは中国美術でした。

本能的に求めた恋が招いた結果なのでしょうか、それとも神様が真紅の人生に悪戯をしたのでしょうか。

いずれにしても、駆け引きをしてしまう大人の恋愛の結末は、真紅の納得いくものになったと感じています。

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