『富豪刑事』原作小説あらすじと感想【刑事の武器は頭脳でも腕っぷしでもなく「金」】

『富豪刑事』あらすじと感想【刑事「神戸大助」の武器は、頭脳でも腕っぷしでもなく「金」】

7年前、世間を騒がせた「5億円強奪事件」。

人々の記憶も薄れ始め、時効まであと3か月をきっている。

何とか時効までに犯人を捕まえたい警察は、容疑者を4人に絞ったものの誰が犯人かの決定打を打ち出せないでいる。

強面の刑事たちが悩む中、颯爽と現れたのは1本8500円のキューバ産の葉巻を咥えながら、高級外車を乗り回す青年、神戸大助(かんべ だいすけ)。

大助はれっきとした刑事であるが、他の刑事と違うところは、彼が大金持ちであること。彼の武器はずば抜けた「頭脳」でも刑事らしい「腕っぷし」でもない。

「金」である。

その潤沢な金を湯水のごとく使うことで庶民が思いつかないような作戦を実行し解決に導くのであった。

こんな人におすすめ!

  • 筒井康隆ファン
  • ミステリーファン
  • アニメ、富豪刑事を好きな人
  • お金をドブに捨てるような使い方をしたい人

あらすじ・内容紹介

神戸大助は署内でも有名な「富豪刑事」

キャデラックを乗り回し、高級葉巻は半分も吸わずに捨て、10万円以上のライターをいつもどこかに置き忘れる。

おまけにイギリスで誂えた高級背広を着たまま雨中を歩き回り台無しにしてしまう無頓着ぶり。

家はドイツ・ロココ式の大邸宅で執事とメイドが常駐し、広大な庭園の奥は樹林が広がるほどの敷地である。

それというのも大助の父、神戸喜久右衛門(かんべ きくえもん)は一代で財を築いた「大富豪」

金ならうなる程あり、大助もそんな大富豪の家で育ってきたのであった。

しかし、喜久右衛門が大富豪なのは、若い頃さんざん悪い事をして金を稼いできたため。年老いて車いすに乗るようになってからはかつての悪行を悔いる毎日を送るように。

そのため息子の大助が刑事となり、世の中に尽くしてくれる事をなによりの懺悔だと思っている。

大助が事件解決のためなら金をいくら使っても構わないスタンスであり、また喜久右衛門の美人秘書、浜田鈴江(はまだ すずえ)も献身的につとめてくれている。

大助は鈴江と喜久右衛門、そして金の力を借りて、庶民や他の刑事が思いつかない作戦で事件解決に挑むのである。

〇第1話『富豪刑事の囮』

 

7年前に起きた5億円強奪事件の容疑者は、刑事たちの聞き込みにより「幡野哲也」「須田順」「早川昭彦」「坂本一輝」の4人に絞られた。

4人それぞれに動機はある。

「幡野」はカメラ屋の店員ながら、特許事務所に発明の申請をするのが日課。

「資金さえあれば、発明に没頭できるのに」が口癖。

「須田」はサラリーマンであるものの家が貧乏で金持ちを心の底から憎んでいる。

自社の社長や役員の悪口を、同じく金持ち嫌いのおでん屋の親父に愚痴る毎日。

「早川」はクレー射撃が趣味の男。

子どもの頃からずる賢い男で、未成年の頃から盗癖があった。

金が欲しいと矢も盾もたまらなくなる性格。

隠した5億円を使えない鬱憤をクレー射撃で発散している可能性もあり。

「坂本」はバーテンダー。

ビリヤードがプロ級で、それを知らない客をカモに金をまきあげている。

女好きでバーのホステスなどを口説くのは得意中の得意。

これら4人に「強奪した5億円を使わざる負えない状況に追い込む」。

それが大助の作戦であり、その手段が「大富豪ならではの罠」であった。

『富豪刑事』の感想・特徴(ネタバレなし)

富豪刑事の囮

紹介した話は、第1話の「富豪刑事の囮」

4人の容疑者を大助が金の力で追い詰めていくプロセスが何より面白いです。

流れとしては、大助が4人それぞれと「仲良くなる」→「家に招待」→「パーティに招待」→「鈴江に惚れさせる」→「鈴江がダイヤの指輪を所望」という展開に持っていきます。

その後、4人がどう動くかを見張り、最終的に隠した5億円を取り出しにいった犯人を捕まえるという話。

4人を追い込む罠が、「現実離れした大金持ちのする事」であるのが何よりの魅力で、また、犯人以外の3人がその後、人生に転機を迎えているのも「ブラックジョーク」を得意とする筒井先生らしい仕上がりになっています。

 

  • パーティで振られたショックで頑張った容疑者1人の結果。

奴さん、奮発してとうとう本当の大富豪になってしまいましたな」

  • パーティで振られた1人が、労働組合で頑張り出世。

労組の委員長になってしまいました

ふうん。貧富の差を目撃し、階級意識に目覚めたか

まさに筒井節炸裂です。

普通のミステリーにあらず

話は紹介した「富豪刑事の囮」の他「密室の富豪刑事」「富豪刑事のスティング」「ホテルの富豪刑事」の3つで計4話。

作中、作者筒井康隆先生も言っているように「本格ミステリー」を書く自信が無かったため「他で勝負した」との事でした。

その通り各話、変わった趣向がなされています。

 

「密室の富豪刑事」では、登場人物の鎌倉警部が、

さて、読者の皆さん。ここでわたくしからひとこと皆さんにご挨拶申し上げます

と古典ミステリー小説のように読者に語り掛けてきます。

「富豪刑事のスティング」では、途中時系列がバラバラになります。

そのため、A、A´、B、B´などの区切りがされ、「このように読むと分かりやすいかも」と作者から2通りの読み方が指示されます。

スタンダードなミステリーでは物足りないと考えた筒井先生が、このような一風変わった趣向を凝らして読者を楽しませようとしてきます。

ドタバタコメディ・筒井節炸裂

そしてやはり魅力的と思えるのは、本作が筒井先生得意の「ドタバタコメディ」である事。

特に筒井先生のブラックジョーク短編小説には、政治、時事、宗教、権力、エロなど、時にタブー視されるようなネタに、あえて挑んでいく爽快さがあります。

本書にも筒井節が含まれているため、従来のファンでも安心してその「毒」を楽しむことが出来ます。

まとめ

筒井作品は実はシリーズモノはそこまで多くなく、「七瀬シリーズ」など例外を除いて、その多くが「短編作品」となっています。

その短編にこそ大いなる魅力があるのですが、一方でファンとしては、「キャラシリーズモノ」をじっくり楽しみたいというのもありました。

本書もその1つです。

主人公の大助、かつての強欲な性格がついつい出てしまう父・喜久右衛門、「実は裏があるのではないか?」と思わせる鈴江など、いくらでも広げられるキャラクターがいるのです。

しかし、残念ながら、『富豪刑事』はドラマ化、アニメ化もされて人気があるものの、小説としては「続編」が出ていないんですね。

続編を書いてもらうためにも、皆さんぜひ買って読んでみてください。

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