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『銀二貫』原作小説あらすじと感想【銀二貫で救った命と報いるための恩返し】

『銀二貫』原作小説あらすじと感想【銀二貫で救った命と報いるための恩返し】

もし、目の前に何百万もの大金があったら、あなたは何に使うだろうか。

車や時計などの高級品を購入する人、豪華な旅行に使用したい人、あるいは、ローンや奨学金の返済にまわしたりする人と、使い道はそれぞれ異なるだろう。

今回紹介したい小説、高田郁さんの『銀二貫』は、焼失した天満天神宮に寄進する予定だった銀二貫(約400万円)で人の命を救った寒天問屋店主と、命を救われた武士の子が丁稚となり、寒天に身を捧げる少年の物語である。

自分のためではなく、人を救うために使った銀二貫の重みとともに、22年に渡る彼らの物語を少し覗いていこう。

こんな人におすすめ!

  • 時代小説が読みたい人
  • 食べ物にまつわる小説が読みたい人
  • 『みをつくし料理帖』シリーズで有名な高田郁作品が好きな人

あらすじ・内容紹介

時は安永3年(1778年)。

焼失した天満宮へ寄進する銀二貫を携えた寒天問屋・井川屋店主の和助(わすけ)は、建部玄武(たてべ げんぶ)が彦坂数馬(ひこさか かずま)へ仇討する現場に遭遇する。

数馬は瀕死の状態であったが、息子・鶴之輔(つるのすけ)をかばっていた。

その様子を見ていた和助は、銀二貫を渡し、建部の仇討を止める。

数馬は間もなく息を引き取るが、父が唯一の身寄りだった鶴之輔は、井川屋の丁稚として引き取られ、名を松吉(まつきち)と改め、商人として生きることになる。

これまで武士だった松吉は、和助や番頭の善次郎(ぜんじろう)から、言葉づかいの改めや商人としての心構えなど、厳しく躾けられる。

また、取引先の料理屋・真帆家(まほのや)の主人・嘉平(かへい)と娘の真帆(まほ)らにも支えられ、寒天問屋として、日々修業に励んでいた。

ところが、ある日、大坂の町を大火が襲う。

井川屋は助かったものの、嘉平と真帆は行方不明となる。

『銀二貫』の感想・特徴(ネタバレなし)

火事:大事なものを奪うものの象徴

「火事と喧嘩は江戸の花」という言葉がある通り、この時代、江戸では多くの火災が発生していたが、これは大坂も同様であった。

本書には、たびたび火事に見舞われる描写がある。

まず、和助が仇討を目撃する前年には、天満店神宮が焼失した。

その6年後の1783年(天明3年)には、嘉平・真帆親子が暮らしていた船越町周辺が燃え、彼らは行方不明になる。

1788年(天明8年)には、京都で大火事が起こり、井川屋は取引先を失う。

1791年(寛政3年)、後に「寛政の北の大火」と呼ばれる大火事では、井川屋は無事であったものの、再建されたばかりの天満天神社が焼失する。

これらの火事で井川屋は、大坂商人の拠り所である天満天神宮や、真帆家を始めとする取引先を失った。

だがそれだけではない。

火事は商いの神様への信仰や、長年かけて築いた取引先との信頼など、目に見えない心の拠り所や絆も奪った。

たびたび登場する火事の描写は、喪失の象徴にも見える。

恩人たちへ報いるため、諦めず、忍耐強く挑む松吉

大坂の町を何度も大火が襲ったが、特に1783年(天明3年)の火事で嘉平と真帆が行方不明になったことは、松吉の心に大きな穴を空けた。

というのも、嘉平・真帆親子もまた、松吉の恩人だからだ。

極寒の季節のみに行われる寒天作りは、大の男でも音を上げる重労働。おまけに繊細な仕事ぶりも要求される極めて厳しい職人技なのだ。(中略)寒天場でのひとつきの労働は、世間での一年にも相当する。それほどまでに過酷なのだ

松吉は井川屋に拾われてすぐ、取引先であった美濃志摩屋に預けられ、厳しい寒天作りに耐え、井川屋の正式な丁稚となった。

だが厳しい修行に耐えたにもかかわらず、寒天の良さを分かっていなかった。

扱っている商品の良さが分からないまま取引先に売っていた松吉に、寒天の良さを教えたのは、嘉平・真帆親子だった。

松吉、お前はんに恩を着せるつもりはない。けんど、料理人が自分で考えた料理を、お客はんに出す前に他所の丁稚に食べさせたり、ましてやその作り方を教えたりするんは、常には無いことや。いや、料理人として、それはやったらあかんことなんや。ほな、私が何でそれをしたか――それはこの真帆に言われたからや。寒天を商うお前はんが、その寒天の良さに気付いてない。それやのに寒天問屋で寒天を売らなあかんのはしんどいやろう、可哀想や、と言われたからなんや

料理人としてやってはいけないことをしてまで、松吉に寒天の良さを教えた嘉平は、さらに寒天の可能性について、こう言っている。

寒天は工夫次第で幾らでもばける食材なんや。けんど、今の倍の腰の強さがあったら、もっと料理の幅も広がる。

火事で嘉平・真帆親子が行方不明になったが、寒天の良さを教えてくれた恩人に少しでも報いるため、松吉は毎年冬に製造場へ出向き、腰の強い寒天を作ろうとする。

詳細はここではあまり述べないが、この寒天作りの過程で、松吉は幾度となく失敗を繰り返す。

読んでいてもどかしい気持ちがわいてくるが、松吉の嘉平・真帆親子への恩返しの気持ちと、かつて厳しい修行で培った忍耐強さ、あきらめない心に胸打たれる。

銀二貫を躊躇いなく差し出す和助の心

松吉が丁稚をしている井川屋は、決して大店ではない。

しかし、和助は人助けに銀二貫を使うことに躊躇いがなかった。

この銀二貫が私の懐に有る折りも折り、建部さまの仇討ちの場ぁに出くわしてしおたんだす。これもきっと天神さんの結ばはったご縁でっしゃろ。私には、天神さんが『その仇討ち、お前が買いなはれ』と仰ってなはるように思えてならしまへんので

ただし、銀二貫をためることは容易ではなく、周囲からの厳しい目もあった。

始末、才覚、信仰心―この三つは、大坂の地で商いをする者にとって、日々の要となる大切な心がけであった。収支を計って身を慎み、知恵を絞るだけでは、ひとかどの商人とは呼べない。神仏に感謝する気持ちがあって初めて、真の大坂商人と呼べるのである。店が焼け残ったにも拘らず、天満宮再建のための寄進をしなかった和助は、仲間内でことあるごとに「恩知らず」と、陰口を叩かれていた。

それでも和助はせっかく貯めた銀二貫を、しかも2回も使うことに躊躇いがなかった。

1回目は松吉を助けた時だが、2回目は、取引先の半兵衛が独立前にいた美濃志摩屋から妨害を受け、寒天製造が難しくなった時である。

「半兵衛はん。ここに銀二貫がおます。これでお前はんの気に入る天草を探しなはれ。(中略)お前はんのことや、伊豆の天草に目ぇつけてはるんと違いますか。もし仮に伊豆でええ天草を見つけたとして、それを伊豆から大坂へ廻船で運び、そこから大川沿いに船で運ぶ。その手はずを整えるんだすで。これくらいの銭は要る。」

大坂商人としての勘定はもちろんあったと思うが、それでも躊躇いなく銀二貫を出す心の広さと人情溢れる行動は、心に響くものがある。

まとめ

もし自分が400万円を持っていたら、和助のように人助けに使わず、自分のために使うだろうと思った。

それゆえ、和助の心の広さと、その恩を返そうとする松吉のひたむきさは、読んでいて感動した。

今回は和助と松吉に焦点を当てて述べたが、寒天の汎用性の高さや、松吉と真帆の関係性にも注目して読んでみてもらいたいとも思う。

もしかすると、読み手によって、異なる感想を抱くかもしれない。

それだけ色々な要素が詰まった色濃い小説である。

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