みなさんの中には「村上春樹さんの作品を読んでみたいけど、難しそう。」と思っている方もいるかもしれません。
そんな方にお勧めしたいのが、『カンガルー日和』という短編集です。
この短編集の中には、5~10分くらいで読めてしまう作品もあり、かなりお手軽に読むことができます。
目次を見てみると、「あしか祭り」や「4月のある晴れた朝に100パーセントの女の子に出会うことについて」など、タイトルだけでどのような作品なのか気になるものが多くて、どきどきしますよね。
この短編集の作品のほとんどの作品が、現実世界が舞台になっているのですが、どこか不可思議な世界が垣間見える瞬間があります。
この現実と非現実が絶妙に混ざり合う世界観がすごくおもしろく、すらすらと読めてしまいます。
あらすじ・内容紹介
この作品は、主人公が100パーセントの女の子と原宿ですれ違うというストーリーです。
「え?それだけ?」と思うかもしれませんが、本当にこれだけです。
主人公はその女の子に話しかけもしません。
そして、最後に主人公はその女の子に話しかけるべきだった「昔々」で始まり、「悲しい話だと思いませんか」で終わる長いセリフを頭に思い浮かべて、この短編は幕を閉じます。
果たして、このセリフはどんなセリフだったのか?皆さん気になりませんか?
そして、100パーセントの女の子とはどんな女の子なのか?
ぜひ、想像しながら読んでみてください。
実は、あの有名な『1Q84』はこの短編から派生した物語だと、村上さん本人が語っています。
もし、『1Q84』は読んだことがあるけど、この短編は読んだことないという方がいれば、ぜひ読んでくださいね。
カンガルー日和の感想(ネタバレ)
鏡
体制打破の運動に挫折し、学校の夜警をしている主人公。彼が学校を見回りをしていると、昨日までなかったはずの鏡が……その鏡の中には、確実に彼なのだけれども、自分のことを憎んでいる彼が映りこんでいた。
私自身も、私の中にいろいろな自分がいて、私を憎んでいる自分もきっといると思います。
その自分は過去の自分であったり、未来の自分であったりするのでしょう。
私は鏡に映りこんでいたもう一人の主人公は、体制打破の運動をやっていたころの主人公だと読んでいるとき思いました。
学校という体制の立場になってしまった今の彼を、体制を壊す立場だった昔の彼がうらんでいる。
私も昔の自分に今の自分を見せたら、憎まれてしまうかもしれません。
みなさんもそうおもいませんか?
この作品は、高校現代文の教科書にも掲載されているので、もしかしたら、懐かしいと感じる方もいるかもしれません。
そんな方も再読してみては?
素敵な挿絵
村上春樹さんの文章がすばらしいのはもちろんですが、挿絵が素敵なのも、この短編集の魅力です。
佐々木マキさんが描く挿絵は、この短編集の世界観にぴったりで、挿絵のページにたどり着くとハッピーな気持ちになります。
佐々木さんは絵本作家ですが、ほかの村上春樹さんの作品の表紙を描いていたりします。
表紙もこの佐々木さんが書いているので、この絵に少しでも魅力を感じた方は、手にとってみては?
まとめ
この紹介した二つの短編以外にも、『カンガルー日和』は不思議な村上春樹ワールドが楽しめる作品が詰まった短編集です。
また、前述の『1Q84』のように、村上さんは短編から派生して長編を書くことがしばしばあるので、この短編集をよんで、村上さんの本をもっと読みたいと思った方は、短編から派生された長編を読んでみることをおすすめします。
そんなことをしていると、いつの間にか立派なハルキストになっているかもしれませんね。
主題歌:くるり/ふたつの世界
くるり『ふたつの世界』
『カンガルー日和』は現実と非現実という二つの世界がテーマになっている作品がたくさんあります。
この曲には
例え近くに感じても、明かせないこの気持ち
という歌詞があります。
この歌詞は、『4月のある晴れた朝に100パーセントの女の子に出会うことについて』で100パーセントの女の子とすれ違ったにも関わらず、言うべきセリフが言えなかった主人公のことを歌っているみたいですよね。
ぜひ、この曲を聴きながら、不思議な村上春樹ワールドにもぐってみてください。
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