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『鉄鼠の檻』あらすじと感想【巨寺を舞台にした僧侶連続殺害事件に、京極堂が挑む】

『鉄鼠の檻』あらすじと感想【巨寺を舞台にした僧侶連続殺害事件に、京極堂が挑む】

あらゆる自社仏閣を把握しているであろう〈京極堂〉こと、〈中禅寺秋彦(ちゅうぜんじ あきひこ)〉ですら存在を把握していなかった謎の古刹、〈明慧寺〉。

過去の因縁が影を落とすその巨寺では、禅宗の僧侶たちが日々修行を重ねている。

偶然にも近辺に宿泊していた京極堂と、陰気な作家〈関口巽(せきぐち たつみ)〉は、とある理由からその謎の寺で起こる、〈連続僧侶殺害事件〉へと巻き込まれていくこととなる。

〈言葉〉を操り憑物を落とす中禅寺が〈言葉〉を否定する禅宗へと挑む、「百鬼夜行シリーズ」の大長編‼︎

こんな人におすすめ!

  • 妖怪が好きな人
  • 仏教に興味がある人
  • ミステリー小説が好きな人
  • 「百鬼夜行シリーズ」が好きな人

あらすじ・内容紹介

昭和28年の初春。

古物商〈待古庵〉を営む〈今川雅純(いまがわ まさすみ)〉は、〈明慧寺〉の僧侶、〈小坂了稔(こさか りょうねん)〉から、〈世に出ることはあるまじき神品〉を買い取って欲しい、という依頼を受けて箱根山中の〈仙石楼〉に呼び出された。

食客として逗留していた老医師・〈久遠寺嘉親(くおんじ よしちか)〉と碁を打つ日々を送りつつ、了稔からの続報を待つ今川。

しかし、そんな彼の前に突如現れたのは、座禅を組んだような姿勢のまま死んでいる、小坂了稔の遺体であった。

偶然にも〈明慧寺〉に取材に向かっていた新聞記者の〈中禅寺敦子(ちゅうぜんじ あつこ)〉と雑誌記者の〈鳥口守彦(とりぐち もりひこ)〉は、仙石楼の事件に巻き込まれることとなる。

一方、時を同じくして箱根に訪れていた憑物落としの古本屋、〈京極堂〉こと〈中禅寺秋彦〉と、陰気な作家〈関口巽〉。

彼らのもとに慌て切った様子の鳥口が飛び込んできたことで、京極堂と関口もまた、事件に関わらざるを得なくなる。

更に、久遠寺が探偵〈榎木津礼二郎(えのきず れいじろう)〉を呼んでしまったこと(鳥口が慌てていた理由も、これである)によって、榎木津も事件に参戦。

斯くして一行は、〈明慧寺〉を舞台にした〈箱根山連続僧侶殺害事件〉の只中に飛び込んでいくこととなった。

〈言葉〉を否定する禅宗の寺院を舞台に、〈言葉〉を操る京極堂が謎に挑む。

「百鬼夜行シリーズ」の第4弾‼︎

『鉄鼠の檻』の感想・特徴(ネタバレなし)

複雑な様相を成す、面妖な事件と異様な現場

一見無関係な事件が重なり合うことで、巨大な1つの事件を成していたこれまでの『百鬼夜行シリーズ』とは異なり、〈連続僧侶殺害事件〉という大きな1つの事件を描いた今作。

しかし、1つの事件を徹底的に描いているからこそ、その事件の内実は非常に複雑な様相を呈している。

凡ゆる自社仏閣を把握していると思われた京極堂ですら知らなかった、〈明慧寺〉という巨大な舞台。

俗世とは時間の流れが異なるようなその巨寺で、次々と殺害される僧侶。

遺体に施された、奇妙な装飾。

第1作『姑獲鳥の夏』に登場した〈久遠寺嘉親〉の再登場と、久遠寺と深い因縁を持つ〈とある男〉の登場。

更に、〈成長しない迷子〉の謎。

1つの事件に、様々な謎や過去からの因縁が重なり、事件は複雑に絡まり合う様は、実に〈小説〉として読み応えがある。

また、当然ながらお馴染みのキャラクターたちも各々が見事な活躍を披露する。

陰気な作家の関口や、世界が滅ぶ様を眺めているかのよう仏頂面の京極堂は、今作も平常運転だ。

また、「百鬼夜行シリーズ」で最も自由に振る舞っているであろう探偵、〈榎木津礼二郎〉の暴走も相変わらずである。

加えて、新キャラクターの〈今川雅純〉は旧陸軍時代の榎木津の部下である。

暴走を続ける榎木津の、新たなる被害者となる彼の独特な語りも要注目だ。

是非とも、分厚さに引かずに一度読んでみてほしい。

『姑獲鳥の夏』『魍魎の匣』『狂骨の夢』の3作を読んできた読者にとって、今作は非常に〈分かりやすく面白い〉作品となっているはずだ。

豊富に盛り込まれた、仏教知識

「百鬼夜行シリーズ」である以上、今作にも当然、妖怪や宗教に関する多様な知識が披露される。

今作のテーマは、〈仏教〉。

仏教における思想や信仰、歴史や謂れが存分に披露される(有名どころでは、十牛図だろうか)。

物語にメインに関わってくるのは〈禅宗〉だが、この1冊を読むだけで〈仏教全般〉の知識を蓄えられるほどの情報量が詰め込まれている(余談だが、今作の解説は現役の僧侶の方が行っているほどだ)。

ただ娯楽として楽しめるだけでなく、〈学び〉の場にもなる作品となっている。

〈言葉〉を操る京極堂と、〈言葉〉を否定する〈禅宗〉の対決

今作の舞台〈明慧寺〉は、〈禅宗〉の僧侶が修行している寺院だ。

詳細は作中で語られているが、禅宗は(乱暴に言うと)〈言葉〉を否定する。

それ故に、〈言葉〉という呪を操り憑物を落とす京極堂にとっては、まさに天敵とも呼べる存在となっている。

そんな禅宗の僧侶たちを相手に、京極堂が如何にして挑むのか。

シリーズで初めて、〈天敵〉と相対する京極堂からも、目が離せない。

まとめ

「百鬼夜行シリーズ」の第4作目となる今作は、『魍魎の匣』や『狂骨の夢』とは異なり、〈明慧寺〉という巨寺を舞台にした〈連続僧侶殺害事件〉という1つの大きな事件を描いている。

京極堂や関口、榎木津たちも序盤から登場しており、〈小説〉として非常に読み易い構造となっており、各キャラクターたちの活躍を特に楽しめる1冊だ。

また、京極夏彦氏の十八番である宗教や妖怪の解説も当然盛り込まれているため、非常に読み応えもある。

「百鬼夜行シリーズ」のファンにとっては非常に満足度の高い作品であると同時に、シリーズを読んだことがない読者であっても親しみ易い作品と言えるので、少しでも興味のある人は是非1度目を通して欲しい小説だ。

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