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『桜のような僕の恋人』あらすじと感想【儚く美しい恋物語に隠された反省とは】

恋はある種の事件だ。

思春期の頃は誰だってそうだったのではないだろうか。恋の話は、光の速度より早くクラスメイトに伝わり、たくさんの人から注目をあびる。

それが秘めた想いだった場合でも、まるで探偵のように、相手の一挙手一投足に注意を向け、心のなかを探ろうとする。

けれど大人になればなるほど、恋心は事件ではなくコントロールすべきものになってしまう。良くも悪くも計算高くなってしまい、その結果、コントロールが出来ると信じてしまいがちだ。

さて、これから紹介する『桜のような僕の恋人』という本は、一見すると切ない恋の物語だ。もはや恋が事件ではなくなった人たちにとっては感動の一冊になるだろう。

けれど、本書には別の側面がある。先んじて言えば、本書は「反省のための恋愛小説」なのだ。

どういうことか、それをこれから解説していこう。

こんな人におすすめ!

  • 今、誰かに恋をしている人
  • 切ない恋の物語が読みたい人
  • 恋愛のハウツー本を読み漁ってしまう人

あらすじ・内容紹介

美容師の美咲(みさき)に恋をした主人公・晴人(はると)は、ひょんなことから彼女とデートをすることになった。夢を諦め、職業を偽っていたことを美咲に知られた晴人は彼女との恋を成就させるため、再び夢を目指すことになる。

そんな晴人の姿に惹かれた美咲は彼の恋人になる。

美咲はその後、夢であった美容師になり、一人前になるため日々奮闘していたが、ある日、人より何十倍もの速さで老化が進んでしまう病気を発症してしまう。

夢を諦めることになった美咲は、自分の変わりゆく姿をみせたくないという思いで、晴人との別れを決断する。

別れたことで自分の目標を見失いかける晴人だったが、美咲に再び会いたい一心である行動を起こす。

『桜のような僕の恋人』の感想・特徴(ネタバレなし)

コスパの悪い主人公

本書の話をする前に、1つだけ尋ねてみたいことがある。

マッチングアプリというものをご存じだろうか。

恋人をつくるために、自分の顔写真や趣味などを登録し、気になる相手にアプローチができるアプリケーションだ。

自分の趣味などから相手の気を引くことができれば、アプリ上で会話ができるようになり、お互いの気が合えばデートの約束を取り付けることもできる。

「恋愛をする」という目的のためには非常に便利なシステムであり、現代の恋愛の1つの形といっていいだろう。

このような質問をしたのは、本書を読み進めていくなかで「お!」と驚いたところがあるためだ。それは本書の冒頭――主人公の晴人が美咲に自分の決意を語るシーンだ。

「僕はあなたに相応しい男になってみせます!」

変わりたい。嘘つきで何事からも逃げ続けていた情けない自分から。ちゃんと自分を誇れるように。変わりたいんだ。だから――、

「だから変わります!」

晴人は拳を強く握った。

「あなたに好きになってもらえるように……」

こうして主人公は挫折した夢を叶えるために再びカメラマンの仕事に就く。バイト先から正社員登用への話があったにも関わらずだ。

筆者がこの言葉や主人公の行動に対し「お!」と驚いたのは「コスパの悪い生き方をする主人公だ」と思ったためだ。このとき私の念頭にあったのは前述したアプリによる恋愛の形だ。

ヒロインである美咲のことを、この時の主人公はほとんど何も知らない。カメラマンになれたとして、恋が成就するとも限らない。

そういった点でいえば、アプリであれば、あらかじめ相手のタイプなどを把握することができる。恋が成就する可能性は格段に上がる。その点だけでも主人公の行動は「コスパ」が悪いと思ってしまった。結果がどうなるかわからないのに、行動を起こすのだから。

もちろん「そんなことを言ってしまえば恋愛小説にならない」というのは、そのとおりだと思う。

しかし、そうであれば主人公の設定を変えてしまえばいいだけの話だ。

わざわざ「変わる」と決意を示すシーンがあるというのは、この「変わる」というのが本書において重要な意味があることを示しているからだと私は思う。

この「変わる」ということが本書に隠された核心へと繋がるのだが、そこを紹介する前に抑えておかなければならないことがある。

それは本書のもう1つの変化──美咲の容姿についてである。

感動作に隠された「核心」

主人公の恋人・美咲は人と比べて数十倍の速さで老いてしまう病気に罹ってしまう。これが前述した本書のもう1つの「変化」だ。

病気に罹った美咲は晴人と会うことを拒絶する。

その理由が、例えば「先が長くない自分に見切りをつけ、新しい恋をしてほしい」というものではなく

「失望されたくない。醜いって思われたくない。老婆になっていく姿は、絶対、絶対に見られたくない。晴人君だけには……」

というものなのだ。

本書には執拗といっていいほど、外見の変化を嫌悪する場面があり、周囲の人間もその心情や行動に同情的だ。

例えば、美咲の兄の彼女である綾乃(あやの)も次のように述べる。

「女性にとって美しくあろうとすることは本能と言っていい。特に好きな人の前ではいつまでも綺麗でいたいと思うのが女心だ。しかし美咲ちゃんはたった二十四歳でそのことがかなわなくなってしまった」

ここで一度立ち止まって「外見」というものを考えてみたい。

フランスの思想家・ボードリヤールが『消費社会の神話と構造』という本で喝破したように、今や「私らしさ」や「個性」というのは様々な商品やサービスで作り、コントロールすることができる。

つまりメルセデス・ベンツや「ほんの少しだけ明るい色合い」やその他数多くの集中的あるいは散文的な記号のなかで(…)綜合的な個性を再創造

する。

本書の文脈に沿った言い方をするならば、かつて某CMで使用された「カワイイはつくれる」というキャッチコピーが適切だろう。つくれるというのは、コントロールできることの言い換えにほかならない。

話を本書に戻そう。晴人が恋人の美咲のことを美醜だけで判断していたのかといえば、そうではない。晴人が美咲の手を握ろうとするシーンで、自身の手が荒れていることを気にする彼女に晴人はこんな言葉をかける。

「この手は、あなたが毎日頑張っている証じゃないですか」

美咲が顔を上げる。

「だから僕は、この手が好きですよ」

先程の「外見」についての考察、上述した晴人の反応、そして美咲の美醜に対する感覚から私は、美咲が真に恐れていたのは「コントロールできないものに対する不安」のように思えてならないのだ。

どういうことか。

美咲の恐れが晴人のネガティブな反応だけだとしたら、晴人が美醜だけで人を判断しない人柄であることから、美咲が晴人と別れる理由はなくなる。自分の「老化」は病気という「仕方のないこと」だと納得することもできるだろう。

しかし、美咲の恐れは晴人のネガティブな反応ではなく、純粋に「老化」というコントロールが出来ないものへの不安と恐れであるのなら、美咲が晴人を拒絶する理由になる。

「カワイイ」を作れなくなった自分のことが憎く、許せないのだ。そのうえで、そんな自分には晴人に会う資格がない、と拒絶する。

更にいえば、この「コントロールできないものに対する不安」というのが本書の隠された核心だと筆者は思う。

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反省のための恋愛小説

「コントロールできないものへの不安」について、晴人と美咲の姿勢は対称的だ。

美咲は恐怖にとらわれ、晴人からのネガティブな反応を予想し、恐れてしまった一方で、晴人は美咲へのアプローチや就職において、とにかく行動してきた。恐れながらも前進しようとした。

この二人の対称的な選択が物語にどのような結末をもたらしたのか。それは本書に譲らなければならないだろう。

しかし、無茶を承知で本書の総括をするのであれば、この物語は「反省のための恋愛小説」だったのではないか、と思う。

なにに対する反省か。それは「コントロールすることへの欲望」だ。

恋愛はもちろん、コミュニケーションや仕事、その他諸々のライフハックなど巷には「~術」と名の付く本が溢れている。これらを「コントロールすることへの欲望」の産物としてみるならば、本書が反省を求めているのは私たちのなかにあるそのような欲望だろう。

具体的には、恋をコントロールすること、計算して頭のなかだけで結果を出そうとすることへの欲望に対する反省を求めているのだろう。

コントロールできないという意味で、恋は本来、事件だったはずだ。

だからこそ相手を見据え、可能な限りの努力をしたうえで、誰かの「術」ではない自身の勇気をもって、相手の心という不確実なものに飛び込まなくてはいけない。

それが本来の恋だったはずだ、と本書は訴えているように私は思う。

たしかに、本書の物語は感動的である。だが未読の人でも既読の人でも、これらのことを踏まえて本書を手に取ってみて欲しい。

「感動」だけでは終わらないメッセージが本書には込められているのだから。

まとめ

冒頭で紹介したマッチングアプリがそうであるように、合理的な出会いが追求できるようになった代わりに、一人一人の「生き方」が見えにくくなっているとは思う。

主人公のように「変わります!」と宣言したところで、アプリのようなツールでは、次の機会がないのかもしれないのだから、そういった宣言はしにくいだろう。

そういった点で、誰かの「生き方」に素敵だなと思う機会が減ってしまっている気がしてならない。それはそれで不自由な恋愛だと思わずにはいられないのは私だけだろうか。

いや、機会が減り、どこかで不自由であると感じるからこそ、本書は感動的な小説───フィクションなのかもしれない。

そういった意味でも本書は「感動」以上のものがあるのだと改めて強調しておきたい。

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