日々、わたしたちは毎日同じような日常を繰り返し、少し飽きている。
「予測不能な、刺激的で波乱万丈の人生を送ってみたい。」
そんなことを思っていても、本当に実現してしまえば困るのだから人間はないものねだりをする生き物だとつくづく感じてしまう。
しかし、どうしても努力では手に入らないものがある。
それが寿命。
わたしたちは、死に方を選ぶこともできないし、寿命を自由に設定できない。
場合によっては、ある日、前触れもなく失うものでもある。
この物語の主人公は余命わずかなうえに、予想外の結末を迎えてしまうのだ。
こんな人におすすめ!
- 毎日が退屈で、刺激が欲しい
- 話題になった作品を読みたい
- いま、病気やケガと戦っている
- 生きることについて考えている
あらすじ・内容紹介
主人公である僕/志賀春樹(しが はるき)は、病院の待合室で偶然「共病文庫」というタイトルの文庫本を見つけた。
それは、クラスメイトである山内桜良(やまうち さくら)が綴っていた秘密の日記帳。
そこには、彼女の余命が膵臓の病気のためにもう長くはないことが記されていた。
僕はその本の中身を興味本位で読んだことによって、山内桜良の身内以外で唯一彼女の病気を知る人物となってしまう。
「山内桜良の死ぬ前にやりたいこと」に付き合うことで、真逆な性格の2人が、お互いに自分に欠けている部分にそれぞれ憧れを抱き、次第に心を通わせて成長していく。
そして僕は「人を認める人間に、人を愛する人間になること」を決意する。
桜良は、恋人や友人を必要としない僕が、初めて関わり合いを持ちたい人に自分を選んでくれたことにより「初めて私自身として必要とされている、初めて私が、たった一人の私であると思えた」と感じていく。
しかし、余命を全うすることなく、4週間の入院治療から解放されたその日に桜良はあるハプニングにより死亡。
僕は桜良の通夜や葬儀には出席せず、数日後に桜良の家を訪れる。
『君の膵臓をたべたい』の感想・特徴(ネタバレなし)
見たことのない文庫本
ある日、主人公の僕は盲腸の術後の抜糸で訪れた病院のロビーで見たことのない共病文庫と書かれた文庫本を見つける。
20××年11月23日
本日から、共病文庫と名付けたこれに日々の想いや行動を書いていこうと思う。
家族以外の誰にも言わないけれど、私は、あと数年で死んじゃう。
それを受け止めて、病気と一緒に生きる為に書く。
まず私が罹った膵臓の病気っていうのはちょっと前まで判明した時にはほとんどの人がすぐ死んじゃう病気の王様だった今は症状もほとんどでなくできて・・・
ただでさえ、見たことのない手書きの文庫本というだけでも気になるのに書かれている内容はもっと衝撃的だ。
高齢者や大病を抱えている人は別として、若者から中年くらいまでの健康な人間は、寿命があと少しかもしれないなんて考えないだろう。
自分の死は、もっと先で曖昧なものとしか想像できないかもしれない。
でも、今日この日だって、世界のどこかには医師から残りの寿命を告げられる人が確実にいるのだ。
そしてその順番は次があなたかもしれない。
生きるってなんだ?
彼女(桜良)の病気を知った僕は、彼女のやりたいことに付き合っていくうちに変わっていく。
学生時代、「何のために生きてるのだろう」なんて考えたことは一度や二度あるのではないだろうか。
生きるってのはね………………
きっと誰かと心を通わせること。
そのものを指して、生きるって呼ぶんだよ。
もし、こんなセリフを誰かから聞いたら「カッコつけやな」と思うかもしれない。
でも、こういうセリフは、聞いた状況や自分の心情、言った相手が大事なのではないだろうか。
このセリフを言ったのは寿命の終わりが見えている彼女。
彼女が発するセリフだからこそ、重みがあって考えさせられるのだ。
彼女がもし健康な高校生なら、この先、何十年と人生があった可能性が高いのに。
病のせいで余命が判明しているのだ。
生きたくても生きられない彼女の気持ちは、きっとわたしたちには想像できない。
だって、わたしたちはよほどのことがない限り「また明日」が当たり前に来る。
この気持ちは、その立場にならないと決してわからないのだろう。
共病文庫のゆくえ
桜良の通夜や葬儀に行けなかった僕は、数日後に彼女の家を訪ねる。
彼女のお母さんから渡された共病文庫には、桜良からのメッセージが書かれていた。
桜良から…聞いてた。
この日記は…あの子が死んだら、とある人に渡してほしいって。
たった一人…あの子の病気のことを知ってる…『共病文庫』っていう名前を知ってる人が…いるからって…
桜良が共病文庫に記していた事を読んだとき、僕はあのメールが届いていたことを知る。
一番届けたかった言葉が届いていたことを知った僕が思ったことを考えると、胸が痛くて泣けてしまう。
ただでさえ、「誰かに伝えたいことを、伝える」のは難しいものだ。
友達や恋人、家族でさえ思いを伝えるのは難しいし、全て伝わっていないのに、彼女はあっけなく逝ってしまった。
だから、僕が一番伝えたかった言葉が届いているか確認する術はもうないと思っていた。
でも、共病文庫の最後にきちんと書かれていたのだ、答えが。
まとめ
僕と彼女が過ごした決して長くない時間の中で、二人が築いた関係と変化。
この本を読むと、「なんで生きてるんだろう」と思っていた疑問にひとつの答えが見つかるのではないだろうか。
ぜひ、あなた自身で確認してみてほしいと思う。
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