時代小説おすすめ10選【かつての時代をともに旅する一冊】

純文学、ミステリー、ファンタジー、SF……。

今や世の中にはさまざまな小説ジャンルがあふれているが、かつては「大衆文学といえば時代小説」であった。

似たジャンルである歴史小説がほぼほぼ史実に即した内容であり、評論的な一面を持つ一方、捕物帳や剣豪小説などの時代小説で活躍する多種多彩な人物たちは、大衆に広く受け入れられた。

明治の中頃に花開き、大正・昭和を経てその認知度を高めていった時代小説。

この記事では、そんな時代小説の中でも珠玉の10選をご紹介する。

藤沢周平『冤罪』

時代小説の名手として知られる藤沢周平による短編集。

収録されているのは、表題作の『冤罪』を含む9作品。

いずれも直木賞の受賞直後に書かれたもので、勢いに乗る新進気鋭の作家(当時)の伸びやかな筆致を楽しむことができる。

もちろん、デビュー当時から小説巧者として知られる藤沢周平の著作なので、その安定感・面白さはともに一級品だ。

 

ジャンルはいわゆる「武家もの」。

主に下級武士たちの悲喜こもごもが、江戸時代を舞台にして鮮やかに描かれている。

藤沢作品ではおなじみの「海坂藩(藤沢による架空の藩)」も登場するので、藤沢ファンは必見だ。

『冤罪』の基本情報
出版社 新潮社
出版日 1982/09/28
ジャンル 時代
ページ数 426ページ
発行形態 単行本、文庫、電子書籍

和田竜『のぼうの城』

2012年に野村萬斎主演で映画化されたことも記憶に新しい本作。

映画『のぼうの城』は日本アカデミー賞でも多数の優秀賞を獲得するヒット作となったため、普段あまり小説に親しまない方でも、きっとタイトルは目にしたことがあるだろう。

 

時は戦国時代。

天下統一を目前に控えた豊臣秀吉が次に狙うは、北条家の支城・忍城。

押し寄せてくる二万の軍勢に対抗するは、日頃領民たちから「のぼう様」と呼ばれている城代の成田長親である。

「のぼう様」の語源は「でくのぼう」。

二万の軍勢に立ち向かうにはいささか頼りなく感じるが、果たして……?

『のぼうの城』の基本情報
出版社 小学館
出版日 2010/10/11
ジャンル 時代
ページ数 219ページ
発行形態 単行本、文庫、電子書籍

高田郁『八朔の雪 みをつくし料理帖』

時代小説の人気ジャンルは、武家ものや戦国ものばかりではない。

市井の人々の活気ある姿を描いた「町人もの」も、決して外せないジャンルのひとつ。

『八朔の雪 みをつくし料理帖』も、そんな「町人もの」の時代小説だ。

 

主人公の澪(みお)は18歳。

幼くして家族を喪い、勤め先も失った彼女は、郷里の大阪から裸一貫で江戸へと出てくる。

本作では、そんな彼女がひたむきに料理の腕を磨く姿が描かれている。

料理や、周囲の人々と真摯に向き合いながら、日々の小さな幸せをそっと慈しむ澪。

そのひたむきな姿は、日常に忙殺されて、つい忘れがちな「大切なこと」を思い出させてくれることだろう。

みをつくし料理帖シリーズ『八朔の雪』高田郁【天涯孤独の少女、一流の女料理人を目指す】みをつくし料理帖シリーズ『八朔の雪』原作小説【天涯孤独の少女、一流の女料理人を目指す】
『八朔の雪』の基本情報
出版社 角川春樹事務所
出版日 2009/05/18
ジャンル 時代
シリーズ みをつくし料理帖シリーズ全10巻
ページ数 219ページ
発行形態 文庫

池波正太郎『鬼平犯科帳』

料理繋がりでもうひと作品ご紹介したいのが『鬼平犯科帳』だ。

こちらも過去にドラマ化・映画化されており、半世紀近い長きにわたって断続的に放映されていた大人気作だ。

「『鬼平犯科帳』といえば捕物帳じゃないか。どこに料理が関係あるんだ」と思う方もいるだろう。

仰るとおり、主人公の長谷川平蔵は火付盗賊改方であり、情深くいなせな男・平蔵が、あの手この手を駆使して江戸にはびこる悪を取り締まる姿が物語の主軸に据えられている。

しかし、その主軸を影で支えている名脇役こそが「料理」なのだ。

登場人物らが旨そうに頬張る江戸前料理の数々。

文学界きっての食通として知られる池波正太郎の手腕がいかんなく発揮された食の描写は、読者の胃袋を刺激してやまない。

平蔵の活躍を通して江戸の市井のにおいを知り、描かれる料理の数々を通して江戸の食文化のにおいを知る。

それが『鬼平犯科帳』シリーズの真の楽しみ方ではないだろうか。

『鬼平犯科帳』の基本情報
出版社 文藝春秋
出版日 2016/12/31
ジャンル 時代
シリーズ 鬼平犯科帳シリーズ全19巻+番外編
ページ数 372ページ
発行形態 単行本、文庫、電子書籍

百田尚樹『影法師』

『永遠の0』『海賊とよばれた男』などの話題作を多数手掛けたことで知られる作家・百田尚樹。

そんな百田が初めて時代小説に挑んだのが、本作『影法師』だ。

 

時は江戸時代。

勘一と彦四郎は茅島藩(架空の藩)でともに青春を過ごした。

頭脳明晰で人柄もよく、剣の腕も立つ彦四郎。

やがて勘一と彦四郎は唯一無二の親友となるが、ある事件をきっかけにしてふたりの運命の歯車が狂い出し……。

武士とはなにか、真に守り抜きたいものはなにか。

タイトルの『影法師』が示す真意を知ったとき、本作はあなたの中で不動の名作として名を刻むことだろう。

『影法師』の基本情報
出版社 講談社
出版日 2012/06/15
ジャンル 時代
ページ数 408ページ
発行形態 単行本、文庫、電子書籍

宮部みゆき『ぼんくら』

ミステリーの名手・宮部みゆきが手掛ける時代小説『ぼんくら』。

主人公の井筒平四郎は、見廻り方同心という、今で言うところの警察のような役職に就いているのだが、これが大の面倒くさがりで怠け者。

挙げ句、見廻りの途中で知り合いの惣菜屋に立ち寄っては立ち話、つまみ食いを繰り返すという有様だが、飾らない姿と憎めない人柄のために、市井の人々からは愛される存在だ。

そんな平四郎だが、ここは宮部ワールド。

のほほんとしてばかりはいられない。

何気ない日常描写の中にも伏線が散りばめられており、やがて平四郎はきな臭い事件に巻き込まれていくのだが……。

 

宮部みゆき作品の持ち味といえば、現実の出来事かと錯覚せんばかりに練り上げられた、緻密でリアリティある物語だろう。

本作『ぼんくら』でもその手腕が発揮されており、惣菜屋から立ち昇る旨そうなにおい、砂埃をたてる未舗装の道路、喧騒かしましい市井のようすなどが、まるで目の前で実際に繰り広げられているかのように感じられる。

『ぼんくら』の基本情報
出版社 講談社
出版日 2004/04/15
ジャンル 時代
ページ数 336ページ
発行形態 単行本、文庫

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