ホラー小説おすすめ14選+怪談集【あなたの怖いモノはナニ…?】

〈恐怖とは人類の最も古い感情である〉とは、アメリカの怪奇小説・幻想小説の先駆者たるH・P・ラヴクラフトの言葉だ。

この言葉が示す通り、〈怖い〉〈恐ろしい〉という感情が無ければ、人間は危険を避けることは出来ず、結果として命を落とすことにもなりかねない。

危険を避けるためにも、脳にはかなり古くから〈恐怖〉という感情が埋め込まれていた筈である。

そんな人類の原初の感情を刺激し、娯楽として楽しむのがホラー小説だ。

ただし一口にホラーといっても、〈幽霊が怖い〉〈暗闇が怖い〉〈殺人鬼が怖い〉など、恐怖の対象は人によって様々だろう。

そこで本記事では、筆者の私見から〈恐怖〉の方向性を大雑把にジャンル分けして、各おすすめ作品を紹介する。

是非とも、好みの〈恐怖〉を探す際の参考にして欲しい。

日常の隣に潜む非日常、〈怪奇〉

日常の中で何かしらの曰くに触れ、若しくは忌むべき土地に踏み込んだことで、〈この世ならざるモノ〉に触れ、徐々に迫られることで日常が恐怖に侵食されていく…。

〈ホラー〉と言われて、1番に連想されるのがこのジャンルではないだろうか。

ここでは、そういった〈日常を侵食する恐怖〉を取り扱った作品を紹介する。

『リング』鈴木光司

言わずと知れたホラー小説の名著、『リング』。

〈山村貞子(やまむら さだこ)〉という国民的なキャラクターを生み出した功績は言うまでも無く、ジャパニーズ・ホラーの興盛に大きな役割を果たした功労者的な作品だ。

映画化が成功した後、数々の続編や派生作品も作られた続けた今作は、ビジュアル的なインパクトからどうしても映画版の方が取り沙汰されがち。

しかし、そこまでのビッグコンテンツに成り得たのは、やはり原作小説『リング』の完成度が群を抜いていたからであることに、疑いの余地は無い。

一本のビデオテープを観てしまったことで始まる恐怖や、7日後に迫る死から助かる為に、ビデオテープ誕生の経緯を必死で調査する様子など、見所は盛り沢山。

映画版の『リング』とは、登場人物から調査の過程まで大きく異なる部分も多いので、〈『リング』は映画でしか観たことが無い〉と言う方は、是非とも本書を手に取って欲しい。

映像ではないからこそ寧ろフィクション感が薄まっており、現実味のある恐怖を味わえる筈だ。

『リング』の基本情報
出版社 KADOKAWA
出版日 1993/04/30
ジャンル ホラー
ページ数 336ページ
発行形態 単行本、文庫、電子書籍、オーディオブック

『残穢』小野不由美

『ゴーストハントシリーズ』や『十二国記シリーズ』などの多彩な作風を持つ小野不由美氏による、〈穢れ〉をメインテーマとしたドキュメンタリー・ホラー小説。

〈隣の部屋から物音がする〉という現象の原因を探すうちに、〈いる筈のない赤ん坊の泣き声〉や〈床下から聞こえる不吉な声〉など、因果関係の無さそうな全く別系統の怪談に繋がる様が、不条理な不気味さを際立たせる。

また怪談に有りがちな、例えば〈首を吊った女の幽霊を見たが、過去に自殺していたのは男性だった〉といった構造的欠陥を逆手に取ることで、より恐怖感を増す演出が為されており、〈怖い話〉に慣れた読者ほど恐ろしさが増すという見事な仕掛け。

加えて、語部となる作家の〈私〉は著者である小野不由美氏本人と思わしき描写も多々挟まれており、例えば〈この時期に体調を崩した〉という小説内のちょっとした情報すらも、現実での体調不良とリンクして物語のリアリティを高めている。

どこからがフィクションで、どこからがノンフィクションなのかが曖昧になり、読者の足元すらも脅かすような恐怖を秘めた作品だ。

『残穢』あらすじと感想【穢れの正体に迫る映画化もされた傑作ホラー】『残穢』原作小説あらすじと感想【穢れの正体に迫る映画化もされた傑作ホラー】
『残穢』の基本情報
出版社 新潮社
出版日 2015/07/29
ジャンル ホラー
受賞 第26回山本周五郎賞受賞
ページ数 359ページ
発行形態 単行本、文庫

『墓地を見下ろす家』小池真理子

現在に至るまでのモダン・ホラーの基礎を固めたと言っても過言ではない、エポックメイキング的作品。

〈墓地に囲まれたマンション〉に引っ越してきた一家が、土地の因果故に恐怖を味わうという、かなり分かりやすいストーリー筋だ。

白文鳥の死から始まる不気味な現象の数々は、〈テレビに映る黒い影〉や〈何かを警戒する飼い犬〉など、極めて王道な〈怖い話〉。

しかし、それらの現象が徐々にエスカレートしていく様子や、土地の歴史を調べる過程で発覚する事実、徐々に存在感を増す意味ありげな〈地下室〉など、要素要素が丁寧に描かれており、それらが積み重なることで完成度の高い〈恐怖〉が組み立てられている。

オチに賛否はあれど、〈モダン・ホラーの金字塔〉との呼び名も納得できる、まさにお手本のようなホラー小説だ。

何か怖い本を読みたい場合は、本書を手に取っておけば、まず間違いはない。

『墓地を見おろす家』の基本情報
出版社 KADOKAWA
出版日 1993/12/17
ジャンル ホラー
ページ数 330ページ
発行形態 単行本、文庫、電子書籍

『のぞきめ』三津田信三

刀城言耶シリーズ〉や〈死相学探偵シリーズ〉など、数々のホラー・ミステリー小説を生み出し続ける、三津田信三氏による作品。

謎の廃村に足を踏み入れたことで異様な存在と遭遇した若者グループが、村から脱した後も不可解な現象によって次々と犠牲になっていく恐怖を描いた〈覗き屋敷の怪〉が第一章。

民俗学を学ぶ学生が憑物信仰の残る村を訪れ、そこで悍しい事件に遭遇する様子を描いた〈終い屋敷の凶〉が第二章の、2部構成となっている。

どちらの章にも著者の膨大な民俗学的知識が要所要所に盛り込まれており、それが恐怖に説得力を持たせている。

圧倒的な描写力も相まって、所謂〈因習モノ〉の中でも真に迫った恐ろしさを持った作品だ。

十八番であるミステリー要素もしっかりと含まれており、著者に並ぶ知識量が有れば(これが難しいのだが…)真相に辿り着くことも不可能では無い、非常にフェアな構造となっている。

また、著者の三津田氏は数々のメタ・ホラーも生み出している。

本作の冒頭で2つの恐怖体験が書かれた原稿を手にしている〈小説家〉とは、明らかに三津田氏本人と思われる。

そして、原稿を読んだ〈小説家〉が怪現象に襲われる様子を描くことで、〈のぞきめ〉読者にも迫る可能性を示唆しており、著者と読者が一体となって楽しめる作品に仕上がっている。

『のぞきめ』原作小説あらすじと感想【ホラーとミステリ、融合の極地】『のぞきめ』原作小説あらすじと感想【ホラーとミステリ、融合の極地】
『のぞきめ』の基本情報
出版社 KADOKAWA
出版日 2015/03/25
ジャンル ホラー
ページ数 412ページ
発行形態 単行本、文庫、電子書籍

肉体的な痛みを想起させられる、〈スプラッタ/ジャッロ〉

突如現れた何者かにより、次々と人が殺されていく。

血が飛び肉が舞い、想像を絶する苦痛の中で息絶える犠牲者たち。

そんなグロテスクな情景を楽しむのが、〈スプラッタ〉や〈ジャッロ〉と呼ばれるジャンルだ。

※ジャッロとは、スプラッタの中でも〈犯人当て〉の要素がある作品を指す。

ここでは、そんな肉体的苦痛による恐怖を取り扱った作品を紹介する。

『殺人鬼(覚醒編/逆襲編)』綾辻行人

『館シリーズ』を始めとした数々の本格ミステリー小説を手掛ける、綾辻行人氏によるスプラッタ・ホラー。

ストーリーは至ってシンプル。

第1作目となる〈覚醒編〉では陰惨な伝説の残る双葉山に登った、とあるグループのメンバー達が。

続く第2作目〈逆襲編〉では山の近隣の街の住人達が、人知を超えた〈殺人鬼〉によって次々と虐殺されていく。

〈殺し方の見本市〉のような殺害シーンの数々は、文字を追うだけで相当に痛々しい。

また、本格ミステリーの数々を生み出した綾辻行人氏である以上、ただ残酷なだけの小説には留まらない。

官能的とすら思える残酷描写で読者を幻惑しつつ、場面の彼方此方にとある仕掛けを施してある。

著者が張り巡らせた罠に留意しながら読むことで、二重にも三重にも楽しめる作品だ。

『殺人鬼−覚醒編』綾辻行人 あらすじと感想【殺す!殺す!兎に角殺す!!】『殺人鬼―覚醒篇』綾辻行人 あらすじと感想【殺す!殺す!兎に角殺す!!】 『殺人鬼―逆襲篇』あらすじと感想【再び襲いくる、伝説の殺人鬼‼︎】『殺人鬼―逆襲篇』あらすじと感想【再び襲いくる、伝説の殺人鬼‼︎】
『殺人鬼‐‐覚醒篇』の基本情報
出版社 角川書店
出版日 2011/08/25
ジャンル ホラー
ページ数 349ページ
発行形態 単行本、文庫、電子書籍

『スラッシャー 廃園の殺人』三津田信三

『のぞきめ』の著者、三津田信三氏によるジャッロ・ホラー。

前述した綾辻行人氏の『殺人鬼』は手持ちの凶器での殺害シーンが多いのに対し、こちらは刃の付いた巨大な振り子や鉄の処女など、大掛かりなギミックが多いのが特徴。

また、舞台となる〈魔庭〉の描写にも拘っており、断崖絶壁に繋がるドアや迷路のように入り組んだ構造などが丹念に描写されている。

退廃的な美しさを湛えた舞台で繰り広げられる惨劇は、まるで1つの芸術品のよう。

加えて物語各所には、媒体を問わず古今東西の様々なホラー作品のオマージュが盛り込まれている。

巻末に掲載されている、ホラー映画製作者・阿見松ノ介氏の解説を読むことで、どのシーンがどの作品のオマージュなのかも分かるため、新たな作品との出会いの場にもなってくれる1冊だ。

『スラッシャー 廃園の殺人』あらすじと感想【スプラッタ作品への愛が溢れる、戦慄のジャッロホラー】『スラッシャー 廃園の殺人』あらすじと感想【スプラッタ作品への愛が溢れる、戦慄のジャッロホラー】
『スラッシャー 廃園の殺人』の基本情報
出版社 講談社
出版日 2012/09/14
ジャンル ホラー
ページ数 400ページ
発行形態 単行本、文庫、電子書籍

書き手にコメントを届ける

記事の感想や追加してもらいたい情報のリクエスト、修正点の報告などをお待ちしています。
あなたの言葉が次の記事執筆の力になります。