歴史小説おすすめ10選【偉人の足跡をたどる旅】

歴史小説とは、主要な登場人物が歴史上実在した人物であり、主要な部分がほぼほぼ史実通りに描かれた小説を表すジャンルだ。

似たジャンルである時代小説が「過去のある時代を舞台にした架空の物語」であるのに対し(時代小説にも実在の人物・出来事が登場するケースはある)、歴史小説は「史実に即した物語」という点で大きく異なる。

世界における歴史小説は、古くはシェイクスピアに始まり、19世紀のウォルター・スコットなどに続くが、日本においてその勃興は遅れに遅れた。

変革があったのは第二次世界大戦の真っ只中だ。

「国民文学作家」と呼ばれる吉川英治の登場。

歴史小説の名手・司馬遼太郎の活躍により、歴史小説というジャンルに新しい風が吹いた。

本記事では、そんな歴史小説の中から特におすすめの10冊をご紹介する。

歴史小説おすすめ10選

司馬遼太郎『竜馬がゆく』

まずご紹介するのは、司馬遼太郎の著作『竜馬がゆく』だ。

歴史小説をおすすめするにあたって、この作品だけは外せまい。

歴史上の人物として抜群の知名度を誇り、好きな偉人ランキングでは常に上位にその名を刻む坂本竜馬(龍馬とも書く)だが、その人気を確立させたのは間違いなく本書『竜馬がゆく』である。

 

18歳で黒船来航に直面し、大きな衝撃を受けて土佐藩を脱藩した竜馬。

唯一の師である勝海舟との出会い。

ともに日本を開国へと推し進めた仲間たちとの共闘……。

現代人が持つ「坂本竜馬」像を確立させた作品、『竜馬がゆく』。

歴史小説を語るうえで外すことのできない一冊だ。

司馬遼太郎『燃えよ剣』

続いてご紹介するのも、司馬遼太郎の代表作のひとつ『燃えよ剣』。

幕末最強の武装集団・新選組においてさえ「鬼」と恐れられた副長・土方歳三にスポットを当てた本作は、テレビドラマ・映画・舞台など、さまざまなメディアに翻案されている。

物語は、かつて土方歳三が「バラガキ(乱暴者、不良少年)」と呼ばれていた武蔵国多摩郡での少年時代から始まる。

近在の道場「試衛館」で目録を得る剣の腕前に加え、切れ長の目を持つ優男ぶり。

しかしその実は手のつけられない「バラガキ」で、喧嘩と女遊びに明け暮れる荒れた日々を送っていた。

時は幕末。

京では血生臭い事件が頻発し、その争乱の余波は歳三の郷里にまで否応なく押し寄せてきていた。

やがて、幕府は浪士たちによる護衛部隊「浪士組」の組織を宣言し、この呼びかけに応じた試衛館の門人らとともに歳三も京へと上ることになるのだが……。

吉川英治『宮本武蔵』

はじめに断っておくと、本作『宮本武蔵』の内容の大半、特に冒頭部分はほとんどが吉川英治の創作によるもので、「歴史小説」のジャンル定義にはそぐわない。

しかし、大衆の目を「歴史小説」に向けさせ、同ジャンルの勃興に大きく寄与したという点を高く評価し、この稿で本作を紹介することを決めた。

 

1935年から1939年までの4年にわたって朝日新聞に連載された『宮本武蔵』。

物語は、無数の刀傷も生々しい関ヶ原の戦場で幕を開ける。

西軍として関ヶ原の戦いに参加していたものの、時代には逆らえず、ついには敗れてしまった17歳の新免武蔵(たけぞう)。

彼こそが後の宮本武蔵である。

戦に敗れ、お尋ね者となった武蔵が、いかにして宮本武蔵と名乗るようになったのか。

彼が辿り着いた二刀流の極意とは。

いくつもの因縁で結び付けられたライバル・佐々木小次郎との出会いとは……。

全8巻におよぶ大作歴史物語『宮本武蔵』。

強いばかりではない剣豪の生き様を、ぜひその目に焼き付けていただきたい。

山岡荘八『徳川家康』

260年ものあいだ日本全土を統治し続けた江戸幕府。

その祖である徳川家康の、七十余年にわたる生涯を描いたのが本作『徳川家康』だ。

1950年から17年の時をかけて執筆された本作は、全26巻。

完成までに使用した原稿用紙は17,400枚に上り、マルセル・プルースト著『失われた時を求めて』と並んで「世界最長の小説」としてギネスブックに記録されている。

 

勢いに乗る織田家と超大国である今川家に挟まれ、独立もままならない松平家に生まれた竹千代。

後に徳川家康と名乗り、織田信長・豊臣秀吉ですらなし得なかった天下統一を果たした竹千代少年が育っていくさまが、丁寧な筆致で綴られている。

歴史上あまりスポットの当たらない人物や、弱い存在とされた女性たちの活躍ぶりも見逃せないポイントのひとつだ。

家康をはじめとする誰もが「泰平」を願い、苦難を強いられつつも平和を求める姿は、多くの日本人の心を打った。

さらに、本作は海を超えて韓国・中国でも刊行されており、その両方でベストセラーとなっている。

北方謙三『楠木正成』

日本の国土が二分され、さまざまな歴史的ドラマが生まれた南北朝時代。

本作は、そんな南北朝時代きっての名将・楠木正成にスポットを当てた作品だ。

 

かつて隆盛を誇った鎌倉幕府の姿はすでになく、滅亡も目前という時代。

至るところで乱世の兆しが見られ、世間が混乱を極めるなか、大志を胸に抱いて力を蓄える男がいた。

彼こそが南北朝時代の雄・楠木正成である。

倒幕の機が熟したと見るや立ち上がり、寡兵を率いて強大な六波羅軍へと戦いを挑んだ楠木正成。

戦国の動乱のさなかを生き抜いた男たちの、胸に迫るストーリー。

門井慶喜『家康、江戸を建てる』

続いてご紹介するのは、これまでとは少し違った観点で歴史に迫った作品、『家康、江戸を建てる』だ。

作者は直木賞受賞経験もある作家・門井慶喜。

5編からなる連作短編集で、2019年1月にはテレビドラマ化も果たしている。

本作では、当時の権力者・豊臣秀吉によって関東への国替を命じられた徳川家康が、荒れた低湿地帯を拓き、徳川260年の礎を築いていくさまを「治水工事」「貨幣鋳造」「飲料水の確保」「江戸城の石積み」「天守の建設」の5つの側面から描いている。

何もない湿地帯が、いかにして日本最大の都市へと変貌を遂げたのか。

小説愛好家だけでなく、地理・土木愛好家の方にもご満足いただける一冊だ。

朝井まかて『眩』

これまで、武士や侍を主人公に据えた歴史物語をご紹介してきたが、本作『眩(くらら)』は天才女絵師・葛飾応為にスポットを当てた作品だ。

破天荒な行動と、その天才的な筆運びで知られる葛飾北斎の娘として生まれた応為。

大きすぎる父の存在は、同じ道を歩むと決めた彼女にとって、時に疎ましく、時に眩しすぎるほどの強烈な光だった。

「この世のすべてを色で表現したい」と願い、「絵だけを描いてすごすこと」を生涯唯一の望みとする応為だが、周囲の人間とのしがらみが彼女を苦しめる。

父の存在に悩み、恋に悩み、時には大火や地震などの天災にも翻弄されながら、60代に至り、ついに「吉原格子先之図」で辿り着いた境地とは……。

この「吉原格子先之図」は、著者・朝井まかてに強い衝撃を与え、『眩』の執筆を決意させた作品でもある。

「吉原格子先之図」は本作の装丁にも用いられているので、ぜひその目で応為の描く世界をお確かめいただきたい。

北方謙三『三国志』

ここまでは日本を舞台にした歴史小説をご紹介してきたが、以降3作は海の向こうに目を向けてみよう。

日本人作家による『三国志』と聞くと、北方謙三派と吉川英治派に分かれるのではないだろうか。

吉川英治著の『三国志』が物語性の強い『三国志演義』を元にしているのに対し、北方謙三著の『三国志』は、正史である『三国志』を原典に取っている点で大きく異なる。

さらに、吉川三国志では登場人物の造形も大胆にアレンジされて大衆向けな内容となっており、より日本人受けする蜀にフォーカスしている。

それに対し、北方三国志では特定の主人公を置かず、劉備や諸葛亮らをはじめ、曹操や孫権、呂布など、節ごとに各勢力の主要人物にスポットを当てているのも特徴だ。

 

魏呉蜀の三国に分かれ、熾烈な争いが繰り広げられた三国時代。

荒れた時代を生き抜いた男たちは、誰もが一筋縄ではいかない強者ばかり。

武と勇のぶつかり合い、策謀に次ぐ策謀など、中国ならではの圧倒的スケールで描かれた戦国の世界は圧巻の一言だ。

ダニエル・デフォー『ペスト』

歴史上の出来事は、なにも人間だけが引き起こすものではない。

本作『ペスト』もその典型で、のちに「ロンドンの大疫病」として知られることになる、1655年に起きたロンドン最後のペスト大流行を主題に据えたものだ。

 

「H.F.」を名乗るひとりの男が綴った観察録の形を取った本作。

一節によると、この「H.F.」なる人物はデフォーの叔父であるヘンリー・フォーをモデルとしており、叔父から伝え聞いた話や日記を元に執筆されたと考えられている。

地道な調査を重ねたデフォーは、出来事が起こった地域、通り、家を特定し、犠牲者の数も具体的な数字で表した。

こうした詳細な情報が物語に信憑性を与え、1655年当時のロンドンの混乱ぶりを肌身で感じさせてくれる。

300年近くも前に発行された『ペスト』だが、コロナ禍で混乱を極めた現代にもどこか通じる作品だ。

佐藤賢一『小説フランス革命』

フランス革命を取り扱った歴史小説は数多いものの、その大半が悲劇の王妃マリー・アントワネットにスポットライトを当てたものだ。

一方、本作『小説フランス革命』が焦点を当てているのは革命そのもの。

ミラボー、ロベスピエール、デムーラン、ダントン。

理想の社会を追求し続けた革命家たちが、己の人生を賭して戦いに身を投じ、そして散っていくまでが緻密に描かれている。

なぜ民衆は蜂起したのか。

革命はどのようにして終息したのか。

全12巻を通じて描かれるフランス最大の歴史のうねりは、一度読み始めたらのめり込むこと間違いなしだ。

おわりに

歴史上の人物の存在を、時に荒々しく、時に生々しく描き出す歴史小説。

教科書で見たときにはただの文字列でしかなかった偉人の姿が、出来事の全貌が、小説を読み終えるころには、ごく身近な存在として感じられるようになっているはずだ。

読むだけで歴史と触れ合うことができる歴史小説。

偉人たちの足跡を、ともに辿ってみてはいかがだろうか。

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