「大家族」という言葉を聞いてどの位の人数を想像しますか?
昨今、大家族というとテレビでも取り上げられるほどの珍しさですが、この本に出てくる家族は本当に多いです。
家族と聞くと、成長するにつれて目の上のたんこぶの様に負担を感じてしまうことがあると思いますが、この本を読むと、家族がいることの良さや有難みが感じられるのではないでしょうか。
あらすじ・内容紹介
東京の一角に佇む「東京バンドワゴン」という名前の古本屋にまつわる物語。
文化文明に関する些事諸問題なら、如何なる事でも万事解決
という明治から続く家訓があり、さまざまな問題を解決していきます。
この物語に出てくる家族は「大」のつく8人家族で、実に多くの人物が入り乱れます。
この本屋さんの主であり曾祖父の堀田勘一。
江戸っ子気質で喧嘩っ早いですが、義理と人情が深くて孫に甘いおじいちゃんです。
元は堀田勘一の父、堀田草平が興した新聞社が、当時の社会的弾圧により志半ばで倒れ、家業の古本屋を継いだことから話が始まります。
『東京バンドワゴン』の感想(ネタバレ
ご近所さんや親類、友人などを含む賑やかな人間関係
堀田草平の
世の森羅万象は書物の中にある
という持論から様々な家訓が生まれました。
本は収まるところに収まる
食事は家族揃って賑やかに行うべし
等。
しっかりと家族全員がこれらの家訓を守っている。
時代錯誤に感じるかもしれませんが、妙に納得できるのも面白い所。
そして、この本には堀田家の家族だけではなく、色々な「家族」が登場してきます。
とても複雑なので、頭がこんがらがったら読み飛ばしてもらっても構いません(笑)
勘一の孫の堀田 青(あお)と、後に夫婦となる大学生の槙野すずみは「牧原みすず」と名前を変えて、亡き父親の槙野春雄の秘密を探りに東京バンドワゴンにアルバイトとしてやってきます。
不信感を持っていた堀田藍子(勘一の孫)や堀田家の面々に近づきます。
そして、勘一の曾孫の花陽(かよ)とは異母姉妹。
花陽は藍子の娘でもあることが分かったのです。
また、青も父親の堀田我名人とは本当の家族ではなく、父親の愛人関係の池沢百合枝という女性が本当の母親で、我名人と亡くなった妻との間には堀田 紺(こん)という息子がいます。
この紺は、この堀田家の中で唯一サチと話せる人物で、息子の研人(けんと)は気配だけは感じることが出来るようです。
仏壇のおりんを鳴らすことで、その存在を目に出来るのですが、いつの間にかフッと消えてしまいます。
堀田家だけで物語が回っているのではなく、ご近所さんや親類、友人に至るまで様々な人々が複雑に絡み合って物語が進行していきます。
亡くなった家族らが温かく物語を紡ぐ
物語は全て1人の人物が遠く離れた所から見守り、話を紡いでいます。
亡くなった曾祖母、堀田サチです。
彼女も勘一と夫婦になるまでに複雑な過去があるのだが、それはまだ別のお話。
彼女の言葉を借りるならば、
この<東京バンドワゴン>を営む堀田家に嫁いできて60年。それはまぁいろいろとありましたけどね、年寄りの昔話はまたいずれということで。
亡くなった家族が物語の登場人物の1人として、各章ごとにしっかりと絡んでいます。
サチさんの語りから始まり、終わるこの物語の温かさも感じられます。
他には、堀田我名人(勘一の息子)。
伝説のロックシンガーが発するのは愛。
LOVEだねぇ
は、物語の根幹を示す言葉です。
物語は続くいつまでも
実はこの物語、1冊で終わりません。
この後にも続編があり、シリーズとして続いていきます。
登場人物が続々と増えていき、堀田家も徐々に増えていきます。
本書以降はビートルズの名曲がタイトルになっていきますが、1冊読み終えると、何となく意味が見えてくると思います。
まとめ
「おすすめの本を教えてほしい」と言われら、個人的にとてもハマってしまった本書を推薦しています。
同じく中毒的に気に入ってくれる人が現れることを期待しています(笑)
『東京バンドワゴン』シリーズがどこまで続けていくかを見届けるのもとても楽しみです!
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