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『これは経費で落ちません!1経理部の森若さん』原作小説あらすじと感想【何事もイーブンな働き方ってなんか良いかも】

『これは経費で落ちません!1経理部の森若さん』あらすじと感想【何事もイーブンな働き方ってなんか良いかも】

会社を経営していく上で、なくてはならない経理部門。

しかし、経理部が頑張ったところでお金は生まれない。

無駄な経費を削減することができても、会社の花形はお金を生み出す営業部であって、経理や総務の様な管理部門ではないという考えが根付いているが、本当に営業部だけがスゴイのだろうか?

『これは経費で落ちません!』シリーズは、経理部で働くアラサーのOLさんが主人公の少しコミカルなお仕事小説。

2019年には多部未華子さん主演でドラマ化された作品だが、「面白い!」とかなり好評だった。

本書を読むにあたって、専門的な知識は一切不要。

事務職や経理の仕事が未経験の方でも、馴染みやすく楽しめる作品になっている。

こんな人におすすめ!

  • 独身生活を楽しんでいる
  • オンとオフはしっかり分けたいタイプ
  • 「経理ってどんな仕事なの?」と思っている

あらすじ・内容紹介

入浴剤や化粧品などのバス用品を製造販売する中堅企業、天天コーポレーション経理部所属の森若沙名子(もりわか さなこ)27歳・独身。

好きな言葉は「イーブン」、座右の銘は、「ウサギを追うな」(意味:余計なことには手を出さず、自分がすべきことに集中しなさい)。

仕事とプライベートをきっちり分け、業後や休日に職場の人と食事や飲みに行くなんてことは極力しない主義。

職場内でも彼女の連絡先を知る人は、ほとんどいない。

平日は会社の制服を着て真面目に完璧な仕事をし、休日はネイルや映画と自分のために時間を使うのが彼女のモットー。

年齢=彼氏いない歴だが、1人暮らし生活を満喫している。

入社5年、経理畑一筋の経理部員として、日常の経費精算、帳簿作成から後輩指導に至るまでを担当する沙名子だが、決して平和な仕事だけではない。

横領疑惑、社内のトラブルなど、天天コーポレーションの様々な人間模様を描いたエンタメ系お仕事小説×ヒューマンドラマ。

『これは経費で落ちません!1経理部の森若さん』の感想・特徴(ネタバレなし)

シンプルでサッパリとした森若さんの仕事スタンス

社会に出て仕事に慣れてくると、自分は何のために働くのか?今の仕事は本当に自分がやりたい仕事なのだろうか、ライスワークなのかライフワークなのか…。

考え出したらキリがないくらい、仕事についてあれこれ考え出すことが増える。

転職を考えるきっかけにもなるだろう。

会社にも、他人にも。与えた以上のものは求めず、求められた以上のものは与えない。

仕事をバリバリこなして昇進を望むキャリアウーマンタイプでもなければ、隙あらば仕事をサボる不真面目タイプでもない。

でも、仕事ができちゃうタイプなのが森若さんだ。

きっちりと働いて責任を果たし、働いた分の給料を適正にもらい、自分のために使う。

彼女にはすごくシンプルでサッパリとした仕事スタンスが確立されている。

サバサバと割り切り、彼女の様に物事を考えられたら、仕事で神経をすり減らし、心が消耗することもなくなるのではないか。

仕事のことで悩んで疲れたとき、気が付けば森若さんの様な割り切った考えが脳裏をよぎり、自分の中の行動指針や判断基準の1つとして組み込まれる様になっていた。

仕事のできる1人の女性として、森若さんを尊敬している。

シリーズを全作読んだ今でこそ、森若さんに憧れを感じているが、「少し人間味の薄い機械的な人」というのが読者である私の第一印象だ。

「愛嬌」なんて言葉は、彼女の辞書には存在していないのかもしれない。

誰かに媚びることもなければ、偏見を持って接することもない。

我々読者は、文章に表れた心の声を沙名子の本音として知れるが、それを表に出すことはない。

まるでロボットの様な感じだ。

しかし、シリーズが進むにつれ、次第に森若さんの人間らしさや可愛さを感じる場面が増えてくる。

初期では、「大人的対応が完璧に出来る人」、「完璧すぎて隙がなく、少し近寄りがたい人」であった森若さんも、1人の人間であり、「女性なんだ!」、と少し親近感が湧いてくる。

好きな言葉は「イーブン」に共感!?

沙名子は、イーブンという言葉が好きである。フェアという言葉よりもわかりやすい。

入ってくるものと出ていくものが同じであること。差し引きゼロ。すべてにおいてどちらの負担にもならないこと。

簿記を習ったことのある人や、経理の仕事をされている方は共感するのではないだろうか。

かつて簿記を習った際、同じ気持ちを味わったことがある。

「こう、数字がぴったりと合った瞬間って気持ちいいですよねえ。

あたし、イーブンって言葉が好きなんですよ。経理台帳とか見てて。左右が同等で、どっちにも傾いていない状態って、超すっきりします」

森若さんの後輩で、広報課から経理部へ異動してきた真夕(まゆ)のこのセリフに、経理部員一同が驚いた。

経理の仕事をしている人はみんな、「イーブン」が好きに違いない。

貸借対照表は、借方(かりかた)と貸方(かしかた)の合計金額が必ず一致する仕組みだ。

もし、合計が合わない場合は、どこかが間違っていることを意味し、一致するまで計算を繰り返しながら、間違いの原因を突き止めなくてはならない。

すぐに解決すれば良いが、果てしない作業になることもあり、これがとても大変なのだ。

だからこそ、借方(貸借対照表の左側を指す)と貸方(貸借対照表の右側を指す)の金額がスパッと合ったときは、とても気持ちが良いし、ホッとする。

私も確かにイーブンが好きだが、それはあくまで、帳簿上の話である。

帳簿上はそうであっても、人間関係までも「イーブン」とは味気なくないか。

働きやすそうな天天コーポ―レーション経理部

誰だって、仕事で失敗をすることはある。

人間だもの、仕方ない。

人の成長に失敗はつきものだ。

あなたは今の職場で自分がミスをしたとき、それをフォローしてくれる同僚や先輩、上司がいるだろうか。

自分が後輩を育てている教育係の立場の人ならば、そういう環境を整えてあげられているだろうか。

初めて仕事中にコーヒーを買ったのは、経理部に来て数週間目のことだった。

勇太郎が入力した数日分のデータを、真夕がうっかり消した。

経理室の空気が凍りついたそのとき、沙名子が真夕に、封書と小銭入れを握らせたのだ。

ピリピリとした空気の中で、「大丈夫だよ。」と言ってくれる人がいたとしても、申し訳ない気持ちでいっぱいで、居心地が悪くなる。

だが、いつまでも凹んではいられない。

真夕がミスをしたとき、森若さんは機転を利かせてくれた。

真夕を外に出し、気持ちを落ち着かせている間に、先輩方は手伝う準備をしてくれていた。

怒られることは仕方ないとしても、助け合える環境があるのだ。

森若さんの先輩にあたる経理部の勇太郎も、仕事のできる人間だ。

大抵、仕事の出来る人ほど、出来ない人の気持ちが分からなかったりするものだが、天天コーポレーションの経理部員は、仕事も出来る上に、相手の気持ちもよく分かってくれるのだろう。

あのとき以来、外で買うコーヒーは、息抜きと同時に自分へのいましめ、失敗にひきずられずに仕事へ向かうガソリンである。

会社員の多くは、1日7~8時間を就業時間として時間労働をしている。

集中力を保ちつつ、与えられた役割を果たさなければならないが、メリハリをつけたり、たまの息抜きも必要であろう。

真夕は仕事が立て込み、集中したいとき、自分へ気合をいれるために外でコーヒーを買ってくるようになったが、経理部のみんなはそれを知っているし、咎められることもない。

森若さんが真夕の仕事のひっ迫度合いをはかるバロメーターにもなっている。

まとめ

もし、経理部が不正に気付かなかったら、その会社は将来どうなるだろう?

たかが1枚の領収書、小さな不備だとしても、経理にはストッパーとしての重大な役割がある。

経理部が組織に新たな利益を生み出せなくても、経理の仕事はカッコイイし、誇れる仕事だ。

森若さんと近い職種で働く者として、話に入り込みやすく、シリーズの新作が出るのを毎回楽しみにしている。

作中で、森若さんの同期として登場する入浴剤研究員の鏡美月(かがみ みつき)の入浴剤開発話などが盛り込まれたスピンオフ作品『風呂ソムリエ』もあわせて読むと、シリーズをより一層楽しめるだろう。

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