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『何者』原作小説あらすじと感想【頭の中で考えるうちはいつだって何者かになれそうなのに】

『何者』原作小説あらすじと感想【頭の中で考えるうちはいつだって何者かになれそうなのに】

朝井リョウが就職活動中の学生たちを描いた小説を再読して、悶えた。

私自身も就職活動をしていたころに感じた不安や黒い気持ちが蘇る。

頑張りたいけど、何を頑張ればいいのかわからない。

就職活動は、自分を測る基準がよくわからなくて不安だった。

頑張りをアピールする学生が、鼻につく。

というか昔の自分みたいだな。

かといって就職活動をしないと振り切れるほど、人と違う何かが自分にあるとも思えないし。

そのうち友人に内定が出て、内心焦る。

当時の感情が蘇り、打ちのめされた。

ぜひあなたも読んで、一緒に打ちのめされようぜ!

こんな人におすすめ!

  • 就職活動に悩んでいる人
  • 他人を観察したり、分析したりする癖がある人
  • 何者かになるために、つい肩書きで武装しちゃう人
  • 自分は会社員以外で生きていける何者かであると思っている人

あらすじ・内容紹介

主人公拓人(たくと)は、就職活動を開始した大学生だ。

おちゃらけている友人、光太郎(こうたろう)とルームシェアをしている。

光太郎の元カノである瑞月(みづき)に、拓人はひそかに思いを寄せているのだが…。

ふとしたことから彼らは、瑞月(みづき)が留学中に知り合った理香(りか)の家で就活対策会議を始める。

就活は団体戦とばかりに、「エントリーシートをみんなで見せ合おう」とやる気満々の理香。

一方、理香と同棲している隆良(たかよし)は、就職活動の在り方や世の中に疑問を呈する。

流されたくない、俺らしく生きると口にするものの…。

選考が進む友人に対する嫉妬心粗探しが、細かい描写ににじみ出る。

基本的に拓人の目線で進む物語であるが、SNS(Twitter)の投稿が絶妙なタイミングで挟まれている。

就職活動だけでなく、SNSに表れる見栄やちょっとした粗探しをする様子も生々しい小説である。

『何者』の感想・特徴(ネタバレなし)

あるある!「私頑張っています」が鼻につく、肩書き武装の意識高い系!

序盤から鼻についたのが、理香。

いかにも「私頑張っています!」とアピールせずにはいられない感じ。

インターン!海外留学!ボランティア!

学園祭実行委員会広報班班長!

(実行委員会「会長」でないところが絶妙だと思った。

主人公から彼女をみた、

TOEICに海外留学にインターンに、両手が武器でいっぱいのその姿は、開戦が待ち遠しくてしょうがない兵士のようにも見えた。

というセリフに、ニヤッとしてしまう。

きっと今まで学級委員や生徒会長ばかりやっていそう。

自分が花道を進むと信じて疑わない感じが溢れていそう。

さらにグループディスカッションまで進んだ際にも、武器を振り回している。

私は海外の企業でインターン経験がありますが、向こうの考え方を日本でも取り入れるとするならば―。

といった具合に、ことごとく自分の肩書きとつなげて意見を述べているのだ。

グループディスカッションのあいだ、小早川理香という人間そのものの意見は、一つも出てこなかった。

留学をした小早川里香、インターンをした小早川里香、広報班長を、海外ボランティアをした小早川里香。

「誰、あんた。」と思わず突っ込みたくなりそう。

よく言い当てているなと思った主人公のセリフがこちら。

名刺に並べてあるような肩書を盾にしないと、理香さんは何も話せないんだと思った。

たった数十分のグループディスカッションの間に、理香さんは自分自身ではない何者かにたくさん憑依していた。

何者かに憑依。

この小説のタイトルは、実によくつけられたとぞっとした。

でも「学生時代に頑張ったこと」を飾って、あれもこれもと武装したつもりになってしまうのも分かるけれど…。

穿った見方ではあるが、もしかして「就活仲間」も彼女にとっては武器の1つだったりして?

と、理香のこのつぶやきを読んで感じてしまった。

就活仲間のみんなで飲み会中!

お互いに刺激し合ってるなう。

こうしていると、受験と就活は団体戦ってホントなんだと思う!

#飲み最高 #就活がんばろ #頼れる仲間達 #って飲みすぎ(笑)

暑苦しいハッシュタグだこと。

「刺激しあえる仲間」がいる自分を見せたいのか?とも感じてしまった。

「仲間」に内定が出たときの反応も見ものである。

とちょっと毒づいたけれど、不安を頑張りで打ち消そうと必死なところが同族嫌悪なんだな。

 

あと理香が通う、大好きな就職課の描写が何度読んでもたまらない。

就職課には、内定者ボランティア、と呼ばれる人たちが常駐している。

就活生のどんな相談にも乗ってくれる内定者ボランティアはみんな、首から小さなカードをぶら下げている。

そこには、その人の名前より大きな文字で、内定先の企業名が書かれている

ここは笑った!

自分が学生のころも全く同じ制度があって、確かに名前より内定先の企業名に目が行くようなネームプレートだったな。

こういう細かい描写で、就職活動の思い出が蘇る。

いるいる!既存のレールに乗らない意識高い系!

理香と同棲している隆良(たかよし)も鼻につく。

就職活動や会社員として働くことを否定して、「個人として生きる」俺にご満悦の様子。

「俺は就活や就職に向かない」という持論から、次第に主語が大きくなる。

原発があんなことになって、この国にずっと住み続けられるのかもわからないし、どんな大きな会社だっていつどうなるのかわからない。

そんな不安定な世の中でよく就職活動ができるよな…といった具合で、いちいち彼は主語が大きいのだ。

どうせこの人はどんな時代でも、「バブルがはじけて」「コロナウイルスが蔓延して」といった具合に、大きな主語で語るのだろうな。

何様のつもりよ。

つい心の中で、隆良に毒づきながら読んでしまう。

ここでの主人公のセリフが痛快だった。

就職の話をしていたと思ったら、いつまにかこの国の仕組みの話になっていた。

そんな大きなテーマに、真っ向から意見を言える人はいない。

こんなやり方で自分の優位性を確かめているとしたら、隆良の足元は相当ぐらぐらなんだろうな、と俺は思った。

うわ、よくぞ言った!

会社員として働く人たちがいるから、みんなの今の生活が成り立っているのに。

いつの間にか社会問題にすり替えながらも「だから就職活動や会社員ってアホらしい」と小馬鹿にした姿勢で、自分は誰かと違うと思いたいのだろうか。

「就職活動や会社に向かない俺」を気取るのは勝手だ。

だが会社員として一生懸命働いている人たちへ、まったく尊重がなくてカチンとくる。

「就職するタイミングも自分の人生のモットーも何もかも、会社のほうに合わせていくなんて、そんなの俺は耐えられない。

どれだけ自分の思い通りに世界が回っていると思っているのか。

俺は流されたくないんだよね、就職活動っていう、なんていうの?見えない社会の流れみたいなものに」

少しは、流れない性格を心配したほうがいいのではないか。隆良。

「流されるんじゃなくて、俺は俺で生きていきたいから」

会社に合わせたところでなくなる「俺らしさ」なんて、とっとと流されてしまえ。

「俺はみんなと違う何者かである」と思いたくて仕方がないお年頃かしら。

いやいや、実によくつけたタイトル「何者」だ。

脳内毒づきが加速する中、またまた主人公がよくも代弁してくれたと思ったのは、

どうして、就職活動をしている人は何かに流されていると思うのだろう。

みんな同じようなスーツを着て、同じような髪型にするからだろうか。

誰がみてもつまらないマナー講座を笑える自分の感性は鋭いと思っているからだろうか。

というセリフだ。

よく言った。

紋切り型の就職活動批判をする人たちが、大切にする「個性」ってなんだろう。

しかし就活に向けて意識が高い理香と、就活しないことに意識が高い隆良と価値観が真逆に見える。

真逆のようでなぜ、この2人が同棲までしているのか。

ここは本編で、主人公の分析に期待したい。

出た出た!「自分は見えている」と思う意識高い系

この小説、なにがすごいって、合間に挿入されるTwitterのつぶやきが生々しい。

さらに主人公が、ある登場人物の裏アカウントを特定するシーンがたまらない。

その裏アカウントのつぶやきとして、

その場にいる全員で協力して、面接という空間を演出しているという感覚。

どうしても自分は、自分のいる環境を俯瞰してしまう癖があるから、冷静になってしまう。

それがよくないのかもしれない。

うわ、就職活動が茶番と感じるのは、わからなくもない。

だが茶番であろうが、求められた茶番をこなせるかがひとつの通過儀礼ではないのだろうか。

「一歩も二歩も引いたところから自分を見られる俺、すごい」と酔っているだけに思えた。

このつぶやきに続いて、主人公のかつての演劇仲間である烏丸ギンジ(からすまる ぎんじ)のつぶやきが並べられているのも面白かった。

主人公と一緒に演劇をしながらも、仲間割れをしたギンジ。

彼が他の舞台を見た感想として言った、

セリフの使い方にリアリティないとか、演出家は演者の長所を引き出せていないとか、どこか客観的になってしまう。

でも、創り手ってそういうもんなんだって、最近はそう思うようにしている。

という言葉。

あぁこちらにも「客観視せずにはいられない自分」が転がっている。

「客観視している自分すら客観的に見ちゃうぜ!」って、どこもかしこも評論家気取りか。

…と、主人公のツッコミに便乗し、脳内で常に毒舌ツッコミを入れながら読み進めていた。

すると衝撃のラストが待ち受けていた。

殴られた。

何か、ちんけなプライドが。

まとめ

就職活動をしてから10年経った今読んでも、ズキズキした。

自分の中にある「人と違う何者かになりたい」という自己顕示欲を、嫌というほど実感する。

登場人物に毒づいたのも、自分の痛い部分をつきつけられた感じもある。

結局何者にもなれなかったよ。

読んだあなたは、何者かになれたかな。

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