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『白い病』あらすじと感想【不治の病のパンデミックと戦争目前の世界で1人の医師がある条件を提示する】

『白い病』あらすじと感想【不治の病のパンデミックと戦争目前の世界で1人の医師がある条件を提示する】

2020年は本来なら東京オリンピックが開催され、多くの選手たちの活躍に世界中が興奮するはずであった。

だが、新型コロナウィルスによるパンデミックは、オリンピック延期だけでなく、世界のありようを一変させるほどの事態を引き起こしてしまった。

コロナとの戦いは現在進行形で続いており、予断を許さない状況である。

このようなことを一体、誰が予想できたであろうか?

だが今から約80年前。

世界的なパンデミックを予言していた1人の劇作家がいた。

彼の名はカレル・チャペック。

チェコの劇作家であったカレルは「ロボット」の名を生み出した天才でもあり、人造物による人類への反乱という、普遍的なテーマをも生み出していた。

その天才が書いた疫病による群像劇こそ『白い病』である。

そう本書は現代社会への警鐘そのものなのだ。

こんな人におすすめ!

  • 古典SFを楽しみたい方
  • 天才の予言を知りたい方
  • 現代社会を俯瞰的に見たい方

あらすじ・内容紹介

ある時、中国の貧困街で謎の奇病が発生した。

罹ったが最後、首のまわりに白い斑点ができ身体の自由を奪われる。

その後、おぞましい臭いを発しながら肉体は腐りはじめ、苦しみながら死んでいく。

ある者はペスト、ある者は神の罰と嘆くが、そのどちらでもなかった。

なぜか若者は罹らず、50歳以上の人間だけが発病。

予防法も治療法もなくただ死ぬしかない。

人々はこの奇病を白い病と呼んだ。

この様な緊急事態に、大病院の責任者兼枢密顧問官であるジーゲリウス教授は、記者達から立て続けに質問を受けるが、正体不明の「白い病」の対策を立てられずにいた。

一体どうすればよいのか?

そんな中、かつて病院を追い出された田舎医師ガレーン博士「私の治療法を試させて欲しい」とやってくる。

はじめは拒むジーゲリウス教授だったが、他に手立てもない。

試しに病院の13号室をガレーン博士に任せてみるが、結果は予想を翻し、患者はみるみる回復していった。

大喜びするジーゲリウス教授はガレーン博士に治療法の公開を求めるが、ガレーン博士は信じられないことを主張する。

「私の治療法は13号室の患者にしか施さない」と。

困惑するジーゲリウス教授や政府高官達。

だがガレーン博士は、ある遠大な計画を胸に秘めていたのである。

『白い病』の感想・特徴(ネタバレなし)

現代にも通じる普遍的な風刺

本書は、病院の院長で政府の高官でもあるジーゲリウス教授、田舎医師のガレーン博士、専制的な独裁者である元帥、一般民衆のとある家族など多くの人物が登場する。

元々、戯曲だけあって群像劇の要素が強い。

その中でも、父、母、娘、息子の4人家族の反応は、まるで今回のコロナによる一般大衆の動きそのものだ。

旧世代の保守的な人間。短絡的愛国者で好戦派。
善良な人間。弱者にも優しい。
娘と息子 白い病による社会変革を期待する。

白い病は、若者には罹らず、罹った50歳以上の人間は必ず死んでしまう。

その事態に、怒り嘆く父親と罹患の恐れがない娘の反応。

「なぜ50歳以上の人間だけが白い病にかからねばならない。不公平だ」

「若い世代に場所をゆずるため。今の若者にはチャンスがないの、この世の中に十分な場所がないの。若者がどうにか暮らして家族を持てるようにするには何かが起こらないと」

白い病により古い世代が死ねば、若い世代はその空いたポストに就くことが出来る。

まるで現代日本のポジションにしがみつく老人世代と、その事に不満を持つ若者世代との対立を見せられているようであった。

実際、世界も日本もコロナによって、大打撃を受けた業界もあれば、一方で躍進した業界もある。

新旧世代の交代。

良い悪いは別として不謹慎ながらそういう側面がコロナでもあったのではなかろうか?

本書の予言の1つである。

 

また父と母の会話も非常に興味深い。

ある時、この4人家族が住むアパートの上階で、老婆が白い病にかかってしまう。

その際、母は「1人暮らしだからスープでも持って行ってあげようかしら」と善意をみせる。

しかし父は即座に、

「感染しちまうぞ!お前が優しいばっかりにうちにまで病気を運んでくることになる。ぜったいダメだ!廊下も消毒することになる」

と大反対。

白い病による恐怖と混乱と忌避。

コロナに怯えるどこかの街で見た光景ではなかろうか……。

作品が書かれた頃の世界情勢

作者カレル・チャペックはチェコの出身。

そしてこの作品が描かれたのは1937年。

第一次大戦直後のヨーロッパは「もう戦争はごめん」と平和主義になっていたものの、この頃になると、世界大恐慌をきっかけに、暗雲たち込める情勢となっていた。

植民地を持つ国々は閉鎖的なブロック経済を建設。

その一方イタリアのムッソリーニにより成功したファシズムは、政情不安なドイツへ輸入され、さらに急進化。

アドルフ・ヒトラーという怪物を生みだすこととなる。

ヒトラーの勢いはとどまる事を知らず、軍事、外交、政治を駆使しその勢力を拡大。

そして1930年代後半。

ヒトラーの計略により、チェコは大国イギリス、フランスの妥協もあって領土割譲を余儀なくされ、ドイツにズデーデン地方を奪われ、加えてスロバキアも分離することとなってしまう。

こういった経緯もあってか、カレルは反ナチスの精神が非常に強かった。

本書に加えて、彼のこの時期の作品『山椒魚戦争』でもナチズムや戦争を痛烈に批判している。

ガレーン博士の平和思想VS元帥

物語を端的に説明するならば「白い病の治療法をただ1人知るガレーン博士が、治療法を武器に国の独裁者や世界の統治者へ平和を希求する話」である。

人々が白い病で死んでいくのにガレーン博士は、貧しい人にだけしか治療法を施さない。

なぜなのか?

このことについてガレーン博士は偽善者となじられるがこう反論する。

「では人々が殺し合いをするのを放っておくのか?あらゆる人間の命を救う事が医師として義務であり、戦争を防ぐことも医師としての義務である」

こう言うとガレーン博士は、世界の統治者や金持ちや一般民衆に宣言をする。

  • 世界のすべての統治者は攻撃兵器を廃棄し、すべての国々と恒久平和条約を結ぶこと。
  • もし統治者がこれを拒むのならば、各国の一般市民は運動を起し統治者に働きかけること。
  • そうなれば統治者も平和条約を結ばざるを得ないし、その時こそ治療法を教えよう

つまりガレーン博士の目的は、世界から戦争を根絶するために、世界中の統治者に無理やりにでも平和条約を締結させることであった。

そのための駆け引きの道具が、白い病の治療法なのである。

ある時、政府高官に、

「たった一人で平和を実現できるとお思いか?」

と問われるガレーン博士だったが、彼はこう答える。

「私には強力な仲間がいる。白い病という恐怖が」

その後、ガレーン博士の宣言にイギリス民衆が動き、イギリスの軍縮が達成される。

他の国々でも民衆が、統治者に対し平和条約締結の要求を始めるが、ただ1つの国、つまりガレーン博士の国だけが軍拡を始める。

なぜならガレーン博士の国は、指導者である元帥が支配する独裁国家だったのだ。

元帥は、群衆を大演説で熱狂させると、他国への侵攻を開始しようとする。

ここに平和を求めるガレーン博士と、戦争による勝利を求める元帥の最後の戦いがはじまるのであった……

まとめ

疫病と戦争。

一見別物であるかのように思われるこの2つの災厄。

歴史上、死という負の面がある一方で、社会変革・技術進歩という正の面があったと考えるならば、これら2つは似ているのかもしれない。

ただ戦争は疫病よりも「人間の力」で防ぐことが出来ることも忘れてはならない。

カレルは、疫病に翻弄される人々と、それを己の野望に利用する独裁者を描くことで、人間の愚かさを我々に訴えた。

作中出てくる、元帥はヒトラーそっくりであり、そのためカレルはナチスから追われることとなる。

そして画家であった兄ヨゼフもナチスにつかまった後、収容所で殺されてしまった。

ちなみにカレル自身は1930年後半、病気で亡くなっている。

 

ガレーン博士はしがない田舎医師で、幼いくらいの理想主義者かつ平和主義者である。

現実世界で、ガレーンのような主張をしても「たわごと」と一蹴されてしまうかもしれないが、だからこそカレルは物語を通して、ガレーン博士の口から、カレルの大いなる叫びである平和への願いを主張したのであろう。

 

現在、コロナの災厄が続く中、大国同士の勢力争いから国際情勢は非常に危険な状況になりつつある。

我々は「白い病」を知ることで、カレルの平和への願いを、コロナの混乱下でも胸にとどめることが出来るのではなかろうか?

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