『陰摩羅鬼の瑕』あらすじと感想【連続花嫁殺害事件に挑むは、榎木津礼二郎と関口巽】

『陰摩羅鬼の瑕』あらすじと感想【連続花嫁殺害事件に挑むは、榎木津礼二郎と関口巽】

白樺湖畔に佇む、〈鳥の館〉。

館の主人である元華族の伯爵、〈由良昴允(ゆら こういん)〉の元に嫁いだ4人の花嫁、〈美菜(みな)〉〈啓子(けいこ)〉〈春代(はるよ)〉〈美禰(みね)〉は、皆一様に新婚初夜か、その翌日に命を奪われる。

そんな由良伯爵の、5度目の婚礼。

今度こそ花嫁を守りたいと願う彼は、〈薔薇十字探偵社〉の探偵・〈榎木津礼二郎(えのきづれいじろう)〉に花嫁の警護を依頼する。

依頼を受け、意気揚々と〈鳥の館〉に向かったものの榎木津だったが、旅先で発熱。

一時的に視力を失ってしまう。

そんな榎木津の同行人として急遽選ばれたのは、陰気な作家の〈関口巽(せきぐち たつみ)〉であった。

かねてより関口の作品、延いては関口自身に興味を抱いていた由良伯爵は、2人を歓迎する。

しかし、挙式に伴って集まった親族たちが集う中で榎木津の放った一言が、事件の始まりを告げる。

おお、そこに人殺しがいる!

こんな人におすすめ!

  • 妖怪が好きな人
  • ミステリーが好きな人
  • 「百鬼夜行シリーズ」が好きな人

あらすじ・内容紹介

白樺湖畔に佇む〈鳥の館〉。

様々な鳥の剥製が飾られたその館の主人、〈由良昴允〉伯爵は、1度も館の外の世界に触れることなく、書物のみを糧に世界を学んだ人物。

5度目の婚礼を控える彼は、とある不安を抱えていた。

これまでの4人の花嫁が、結婚初夜かその翌日に、何者かによって殺害されたのだ。

今回こそは花嫁を守ろうと決意した由良伯爵は、〈薔薇十字探偵社〉の探偵、〈榎木津礼二郎〉に、花嫁〈奥貫薫子(おくぬき かおるこ)〉の警護を依頼する。

しかし、依頼を受け意気揚々と〈鳥の館〉に向かった榎木津は旅先で発熱し、一時的に視力を失ってしまう。

そんな榎木津のサポート役として、急遽〈鳥の館〉へと招かれた陰気な作家、〈関口巽〉。

関口と、関口の作品へ強く興味を持っていた由良伯爵は、関口と榎木津の2人を歓迎。

特に関口は、由良伯爵の望みで、2人で語らう時間すら設けられる。

由良伯爵との会話の中に1つの違和感を覚えながらも、由良伯爵が抱く薫子への誠実な愛情を感じた関口は、なんとしても花嫁を守らなければという思いを強くする。

不安の種を抱えながらも、着々と進んでいく婚礼の準備と、集まり始める親族。

そして一同が会する中で、視力を失った探偵は叫んだ。

おお、そこに人殺しがいる!

これまで花嫁を死に至らしめたのは、誰なのか。

由良伯爵の論理にある、〈疵〉とは何か。

そして、関口が至った1つの真実とは。

物語の再始動を告げる、「百鬼夜行シリーズ」の第8作!

『陰摩羅鬼の瑕』の感想・特徴(ネタバレなし)

〈関口巽〉と〈榎木津礼二郎〉の珍コンビ

おお!そこに人殺しがいる!

今作でメインを張るのは、陰気な作家の〈関口巽〉と天衣無縫の探偵〈榎木津礼二郎〉の2人だ。

関口はこれまで、事件に翻弄されるばかりで、事件の解決や収束に寄与する様な機会は殆ど無かった。

しかし今作では、事件の依頼を受けたはずの榎木津が発熱でダウンし、一時的に視力を失う。

榎木津が持つ、〈真実を見透す目〉には影響を与えない目の不調だが、現実の風景を見ることは出来なくなってしまう。

それ故に、殺人犯の罪の記憶を視たとしても、その罪を犯したのが〈誰なのか〉までは分からない。

にも関わらず、榎木津は〈そこに人殺しがいる!〉などと自由に発言してしまうため、現場は余計な混乱に陥る。

そんな混乱の中で関口は、これまでに見せなかった活躍を見せる。

榎木津は一体、何を視たのか。

関口は、真相にたどり着くことが出来るのか。

『姑獲鳥の夏』以来の、2人で事件に挑む様子は要注目だ。

〈関口巽〉と〈由良昴允〉のダイアローグ

燕雀安んぞ鴻鵠の志を知らんや−である

また、今作で描かれる関口と由良伯爵のダイアローグも、大きな見所だ。

関口の書く小説に、強い興味を抱く由良伯爵。

彼は、関口の書く作品について、自らの置かれた境遇について、儒学について、妻となる薫子への愛情について、語り続ける。

彼は、何を想って関口との語らいの時間を設けたのか。

そして、由良伯爵との対話の中で関口が見つけた、由良伯爵の論理の〈疵〉とは何か。

作中で描かれる2人の会話と、そこから導き出される1つの〈相違〉を、注意深く探してみて欲しい。

作中には、関口の描く小説も!

関口巽は-小説家なのだ

更に今作の大きな見所として、作家である関口が書いた作品、〈獨弔〉が物語中に挟まれる(因みにこの〈獨弔〉は、1998年に、『死の本 The Book of Death』に収録されたものを加筆、修正したもの)。

初めて描かれる関口の作品は、陰鬱な空気感が満ちており、その描写は著者・京極夏彦氏の「 」談シリーズを思わせる。

物語の語り部たる関口の描く、陰鬱な世界も楽しめる作品だ。

まとめ

「百鬼夜行シリーズ」の第8作目にして、新章の幕開けでもある今作は、〈関口巽〉と〈榎木津礼二郎〉が事件捜査に向かうという、第1作目『姑獲鳥の夏』を思わせる様な構成でありながら、更に進化した魅力を放つ作品だ。

これまでの作品以上に活躍する関口や、彼の小説が作中に登場するなど、新たな魅力が多分に含まれており、「百鬼夜行シリーズ」を追ってきた読者にとっても嬉しい要素が詰め込まれている。

シリーズの新たなる幕開けを、存分に楽しんで欲しい。

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