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『ある男』あらすじと感想【愛した人は別人だった。隠されていた過去の傷は愛を壊すのか?】

愛する人がまったく別人だったと知ったとき、その人を愛し続けることはできるだろうか。

「ある男」の謎を探っていくうちに、「私とは誰か」という自分への問いが立ち上がってくる。

「ある男」とは誰なのか。なぜ、過去を変えたのか。

それぞれの登場人物について、「自分だったら」と考えながら読んでみてほしい。

こんな人におすすめ!

  • 「人生やり直せたら…」と妄想したことがある人
  • 「自分がよくわからない」と戸惑うことがある人
  • 「本当の自分」探しにちょっと疲れた人

あらすじ・内容紹介

谷口大祐(たにぐちだいすけ)は、九州の過疎地に移り住み、未経験者ながら林業に就いた。社長が敬服するほどの生真面目さで働き、地元の文房具屋の里枝(さとえ)と結婚するが、自分で伐採した杉の木の下敷きになってしまい39歳という若さでこの世を去る。

夫の死後、妻の里枝は驚くべき事実を知る。亡夫は「谷口大祐」とは別人だというのだ。偽名を使っていただけではなく、「谷口大祐」の過去を自分の過去として語っていたとわかり、里枝は衝撃を受ける。

里枝からの依頼を受けた弁護士の城戸章良(きどあきら)は、「谷口大祐」と名乗った男の過去を探り始める。

「ある男」が誰なのかを探る中で、城戸は過去を変えて生きようとする者たちの存在を知った。複雑に絡んだ糸をたぐり寄せるような調査を通して、「ある男」に反感を持ったり共感したりと感情を揺さぶられながら、城戸は「ある男」の人生にのめり込んでいく

真実に近づく中で、城戸はこれまでやり過ごしてきた自分自身の問題に向き合っていく。

『ある男』の感想・特徴(ネタバレなし)

「ある男」とはいったい誰なのか?「探偵ごっこ」にのめり込む

文房具屋の店番をしていた里枝と出会った頃の「谷口大祐」は、物静かで、年齢に釣り合わないほど無垢な印象だった。

自分と大して歳も変わらなさそうな、もう三十代も半ばらしい大人が、こんなに気持ちよく澄んだ絵を、しかも、戯れに一枚描いてみたというのではなくスケッチブック数冊分も黙々と描き続けている。里枝はそのことに心打たれた。

その男が見せてくれた懐かしい風景が描かれた一枚は、里枝の胸をいっぱいにし、里枝は思わず涙を流す。

ところが、驚いたことに、これまでただ、黙って立っていた”常連さん”は、この時急に、里枝を真っ直ぐに見つめたまま、その目を赤く染めて、同じように涙を溢れさせたのだった。そして、恥じると言うより、何か秘密が露見してしまったかのように慌てて顔を伏せると、近くの商品棚に向かった。

男の気持ちは純粋で嘘がない、ように見える。悲しみに包まれた互いの過去を告白する場面とともに、里枝と男が心を静かに通わせる場面は、そっと触れなければならない宝物のような尊さに満ちている。

しかし、そこで男によって語られた過去は、他人の谷口大祐の過去だったのだ。

「ある男」に好印象を持ちつつある一方で、本当は誰なのか、との疑問は大きく膨らむ。

その後、城戸のいう「探偵ごっこ」は難航し、調査の途上で出会う個性的な人物たちに、城戸も読者である私たちも翻弄されていく。

その中でも異彩を放つキーパーソンは、横浜刑務所で服役中の元詐欺師、小見浦(おみうら)だ。小見浦は、城戸と会ったその瞬間から強烈な個性を放つ。

透明のアクリル板越しに座りながら、小見浦は首を斜めに傾けて、城戸を値踏みするように見ながら言った。少し舌足らずな喋り方だった。愛想は良かったが、俺を馬鹿にしたら殺す、とでも秘かに凄んで見せているような圧迫感があった。

小見浦の登場によって、静かに流れていた物語は大きくうねり出す。このあたりから複雑に絡み合う人間関係を整理しつつ、読み進めるといいだろう。

いくつもあるこの小説の味わい方の最初の一つが、「ある男」の謎をめぐるミステリーとしての複雑な仕掛けに迷うことだ。

気持ちが楽になる「三勝四敗主義」

城戸の調査に協力するのは、谷口大祐の元カノ、後藤美鈴(ごとうみすず)。全体としてシリアスなテーマで展開するストーリーに、美鈴は少し違った風を吹き込んでくれる。

城戸は、一目で美鈴に好感を持つ。

美人だな、と城戸は正直に思った。ゆったりとした黒いニットに、かなりダメージのあるデニムを穿いていて、ソウルというより、ロックっぽい格好だった。

美鈴の率直で自然で、それでいて諦観を含んだようなものの捉え方は、城戸に新しい視点を与え、読者の私たちをも魅了する。

「わたしの人生のモットーは、“三勝四敗主義”なんです!」

それでは負け越してるよ、と訂正しようとした城戸に、美鈴はその通りでよいと言う。

「ううん、三勝四敗でいいんです。私、こう見えても、ものすごい悲観主義者なんです。――真の悲観主義者は明るい!っていうのが、わたしの持論なんです。そもそも、良いことを全然期待してないから、ちょっと良いことがあるだけで、すごく嬉しいんですよ。」

勝ちにこだわるからこそ、常に満足できない。そんな力んだ考え方とは対極にある”三勝四敗“主義は、なんとも軽やか。気負いのない美鈴のスタンスは、過去の傷の制約を受けず、偏見からも自由だ。

小説の後半、愛と過去についての印象深い考えを、美鈴はさらっと述べる。その言葉に、城戸だけでなく読者も救われた気持ちになるだろう。

他人の傷を生きて自分を問い直す

誰にも変身願望はある。

しかし、城戸は、自分の過去を捨て去って、まったく違う新しい人生を生きた”X”に、恐らくは、そこはかとない憧れを抱いていた。

城戸には、あったかもしれない別の人生への憧れだけではなく、「ある男」の人生をなぞる必然性を感じていた。

「他人の傷を生きることで、自分自身を保っているんです。」
本当は直接、自分自身について考えたいんです。でも、具合が悪くなってしまうんです、そうすると。

なぜだろう。城戸に限らず私たちは、直接自分のことを考えるのが苦手だ。不思議なことに、他人の問題なら、少し冷静に考えることができる。弁護士という職業の城戸ならなおさらだろう。

城戸は「ある男」を探るうちに、これまでやり過ごしてきた自分自身の問題に、不器用ながら向き合おうとする。私たちも、「ある男」を追う城戸の背中を見ることによって、自分自身についてようやく問い直すことができるのかもしれない。

ところでこの小説は、「ある男」の過去がわかって終わりではない。「ある男」に関わりを持った人たち、里枝、勤務先だった会社の社長の伊東、そして城戸は、「ある男」の傷をそれぞれの方法で受けとめ、自分の人生の一部分として取り込んでいく

血のつながりはないが「ある男」を父親として慕っていた、里枝の長男の悠人は、文学の力によって、父の本当の過去や自分の置かれた現実を受け入れようとする。純粋な優しさに溢れたその姿には尊いものが感じられ、心動かされる。

まとめ

「ある男」は誰なのか、なぜ「谷口大祐」として生きたのか。里枝は幸せだったのか。城戸は自身の抱える問題に踏み込めたのか。この小説を読んで、ぜひ確認してほしい。

登場人物に感情移入し共感することは、彼らの人生や傷を生きることに近い。

私たちは本を読むことによって、直接向き合うのが難しい自分の人生やその問題について、より深く考えられるようになるのかもしれない。

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