いまいち仕事に身が入らない。
慣れた業務をこなして漠然と働いている。
分からないことをそのままにしたり、知らないことに対して見てみないふりをして、つい避けてしまうことも。
そういう経験はないだろうか?
本書は、そんな方に働くこととは何かを考えさせ、やる気を満たしてくれる一冊だ。
こんな人におすすめ!
- 医療に興味のある人
- 自分に自信をつけたい人
- 仕事に対してなかなかモチベーションが上がらない人
あらすじ・内容紹介
これは、リハビリテーション病院で働く看護師、玲子(れいこ)がリハビリナースとして患者一人ひとりとじっくり向き合い、手術や特殊な治療器具等を使わず、人の手で患者を治すということ、そのためにチームで働くことの意義を見出していく物語だ。
リハビリテーション病院とは、病気の山は越えたが、後遺症が残ってしまった患者が、それを克服すべく、リハビリの専門職(理学療法士、作業療法士、言語聴覚士)の指導の下、自分自身と向き合いリハビリに励みながら生活をしている場所である。
主人公の玲子は看護師になって2年目のプリセプター(新人教育係)だ。
彼女自身は看護師として成長、成熟していくイメージが今一つ湧かなくなっていた。
新人の頃とは違い、仕事に慣れて、やるべきことを多少早くこなせるようになったが、それは成長ではなく、スキルアップをすればよいと考えるが、何をもってスキルアップを目指すのかも曖昧になっていた。
しかし、この仕事にやりがいがないと思っているわけではなかった。
患者が必要としている身の回りの援助を行うこと、看護という仕事に意味がないはずがなく、やりがいに満ちたことであっても、未だにうまく実感できていない自分に戸惑っていた。
そして、新しく赴任してきた若い医師・小塚太一(こづか たいち)からふいに問いかけられた言葉に答えられなかった。
『ナースコール! -こちら蓮田市リハビリテーション病院-』の感想・特徴(ネタバレなし)
患者の支えになるという役割
リハビリテーションとは、「リ(再び)」「ハビリテーション(適した状態になる)」という意味だ。
この物語に登場するのは看護師だけでなく、医師やリハビリの専門職等、患者に関わる病院内のスタッフは様々でそれぞれの役割も違う。
医師はリーダー的要素が強く、治療における舵取り役を担う。
リハビリの専門職は各々が専門的に行う治療があり、看護師は日常生活のサポートを行う、といった役割だ。
ある時、玲子は理学療法士のさおりから、
ほら、私では、患者さんの不安とか、悩みとか、きっとちゃんとわかってあげられないし。それはいつも傍にいる看護師さんには敵わないから
と言われる。
この一言がきっかけで患者さんの心の声を聴き、解決の糸口を見つけられた。
そこで改めて彼女は、自分がいる環境の良さに気づき、その有難みを実感することになる。
ないものねだりな自分の思い
玲子は患者に対して、何も出来ていないという自分のふがいない思いを同期である作業療法士の朱里(あかり)に打ち明けた。
感謝されたいっていうんじゃないんだけど、やっぱりあかりとかはさ、患者さんから頼られているでしょ。私はさ、どうすればいいんだろうなぁって
これを聞いた朱里は、玲子に対して、日頃から感じていた思いを打ち明ける。
技術的なことはさ、お互いいろいろとあると思うけど、私が羨ましいって思うのは、患者さんに寄り添えるってことなんだ。近いっていうか、近づいていいっていうか
看護師である玲子とは違い、医師やリハビリの専門職は患者と過ごす時間や場所も限られ、常に一緒にいるわけではない。
どこかで線引きをしている。
しかし、看護師は患者に近づくことを許された存在であると同時に本音を聴き、不安や不満も受け止めねばならないという位置にもいる。
患者の心
患者さんは目に見える病気だけを患っているわけではない。
自分の気持ちが分かってたまるか、というのは、自分の気持ちをどうかわかってほしい、と同じだな。
わかってくれるのは、家族や友人とは限らない。むしろ、今はその方が難しい部分もあるだろう。
患者の心の中は誰にも分からない。
分からないからこそ話を聴いて、一緒に泣いたり笑いあえる存在が必要だ。
その役目は病棟内で看護師をおいて他にはいない。
患者は日々、心身ともに良くも悪くも変化がある。
小さな変化を一つ一つ見逃さないように気を配ることは看護師だけでなく、病院で働く職員全員に求められる要素だ。
リハビリって、こう、過去と未来をつなぐための方法であり、期間であるんだなって。過去に、大きな傷を負った人が、未来に向かってどう歩いていくのか。
今まで通りには進めないかもしれないけど、泣いたり、頑張ったり、自分の力だったり、誰かの支えたり、全て使って立ち上がって、前より強くなって未来に向かっていくためのものなんだって
玲子は幸せな環境に身を置いているのだとはっきりした言葉で伝えた。
でもね、少しわかってきた気がするんです。私のしていた勘違いが。私が探すべきなのは、場所じゃなくて、人なんだって。その人たちといるってことが居場所。そうでしょ?
以前は、ナースコールに振り回されるだけの玲子だったが、今はそれが患者一人ひとりからの声だということに気づけた。
それを聞き漏らさずに声に応えることで、みんなの輪の中に居ることが出来る。
そして、自分の声を届けたいとも思えた。
まとめ
「患者を良くしたい」という思いをもったチームの集まりがリハビリテーション病院にはいる、ということを本書を通して伝えたい。
関わっているすべての職種の一人ひとりが自分のできる役割を見つけて働いている。
たとえ病気をもってしまったとしても、やり方次第では、可能な限り元の状態に近づけるように支援してくれる人たちがいることを知ってほしい。
1人だけのパワーは小さくても、個々のパワーが集まれば、大きなパワーになる。
そんなエネルギッシュな人々の働く姿をこの物語から読み取っていただきたい。
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