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『旅猫リポート』原作小説あらすじと感想【一人と一匹が旅をする理由】

『旅猫リポート』あらすじと感想【一人と一匹が旅をする理由】

あらすじ・内容紹介

この本の評価
読みやすさ
(4.5)
面白さ
(4.0)
装幀の美しさ
(4.5)
感動度
(5.0)
総合評価
(4.5)

みなさんこんにちは。

今回は福士蒼汰さん主演で映画化した、有川浩さんの「旅猫リポート」をご紹介させていただきます。

この本は絵本版も刊行されています。

小説版、絵本版、どちらもイラストは故・佐藤さとるさんのコロボックル物語を手掛けた村上勉さんです。

今にも飛び出して来そうなナナのイラストが印象的ですね。

有川さんは、佐藤さんからコロボックルシリーズを受け継ぎ、2014年に「コロボックル絵物語」を、翌年にはその続編である「誰もが知ってる小さな国」を上梓しています。

主人公は八の字のぶちと7の形のカギしっぽを持つ雄猫ナナです。

後に彼の飼い主になる、宮脇悟(ミヤワキ・サトル。ナナ視点では「サトル」と表記)との出会いから物語は始まります。

注意
以下、ネタバレ注意です

ナナのユーモラスな語り口

この本で特に印象的なのは、主人公ナナの猫であるがゆえのユーモラスな視点で語られる一人称です。

我輩は猫である。名前はまだ無いーと仰ったえらい猫がこの国にはいるそうだ。

冒頭がかの有名な夏目漱石の「我輩は猫である」のオマージュであるところをみると、かなり意識して書かれたのではないかと思います。

ナナの言葉を少し引用しましょう。

野ざらしで車を置いてあるくせに、猫に踏まれるのは勘弁ならんというのは、いったいどういう了見なんだろう。

猫にとって、踏みしめられるところはあまねく天下の公道だというのにね。

うっかりボンネットに足跡なんか残したら、奴らはやっきになって追い立てに来る。

サトルがナナに海を見せるシーンでは、行ったり来たりする波を見て、明らかに海を怖がるナナの姿が滑稽に描かれています。

この地鳴りのような音は何?
何か聞いたことのない種類の音がするよ?何なのこの圧倒的な重い物音

(略)「ほーらナナ、海だよ~。波が面白いね~」

面白い!?面白いって何!?この圧倒的なエネルギーを持った大量の水の永久運動が面白いって、人間ってどんだけ能天気なの!?

ナナには、海が圧倒的なエネルギーを持った大量の水の塊のように見えているんですね。

猫目線で世界を見ると、人の目線では見ることができない、様々な様子が見えてきて面白いです。

道中で出会う人と動物たち

さて、そんな旅猫リポートなのですが、出てくる登場人物もまたユニークなんですね。最初に出会うのは、サトルの幼なじみである澤田幸介(コースケ)です。

「猫を引き取ってほしい」とサトルから連絡があり、彼は奥さんに了承を得てからナナを引き受けようとするのですが、どうやらただならぬ事情があるようです。

実は生まれつきコースケはアトピー持ちで、子供の頃に猫を飼うことは叶いませんでした。

それだけではなく、彼はナナがサトルのところに来る以前に出会った猫、ハチのことも覚えています。

ハチのことはコースケにとって、大きな影を落としているようです。

二番目に出会ったのは、吉峯大吾(ヨシミネ)です。

無骨で逞しい姿をした彼には、少々荒っぽいところがあります。

なんと彼は、会っていきなりナナのいるケージのほうへ手を突っ込んで、ナナの首を掴み、ずるずると外へ連れ出してしまったのです。
(※もちろん、絶対にしてはいけません。)

「ななな何すんだこの野蛮人

その時のナナとサトルの慌てようは必見です。

ヨシミネは茶トラの子猫を飼っています。その名もズバリ、「チャトラン」。

まっすぐすぎるネーミングが、ヨシミネの性格を表しています。

この茶トラ、ヨシミネが首根っこを捕まえると、足がてれーんと伸びます。

このいかにも「役に立ちそうにない」子猫に、ナナはヨシミネの「ネズミを獲ってきてほしい」という気持ちを律儀にくみ取って、茶トラに狩りの構えを叩き込むのです。

その後どうなったかは、最終章にて描かれています。

さて、そんなヨシミネ。

実はここに出てくる登場人物の中で、最も過去が重い人物です。

三番目に出会うのが、登場人物中、最もひねくれた性格をしている杉修介(スギ)です。

そのひねくれぶりが表されているのがこの一文ですね。

「何でお前は不幸なのにいい奴なんだよ」

彼はあることからサトルに対してコンプレックスと嫉妬を抱いているのですね。

それを飼い犬である虎丸(トラ。ナナは虎丸のことをあまりよく思っていませんので「犬野郎」と呼んでいます)も、飼い主の気持ちを読み取り、ナナに向かって吠えたて、反抗してきます。

スギがサトルに対してひねくれた態度を取るもうひとつの理由に、彼の妻である千佳子の存在があります。

そして、そのことをよく理解しているのがモモという淑女のような猫です。

ナナは、スギを守ろうとする虎丸の行動がいまいち理解できません。

そこで、モモは彼が抱いた疑問に対してヒントを言うのですね。

ごめんなさいね。うちのご主人は、たぶんあなたのご主人よりも、少し気持ちが弱いのよ。

ナナはモモが話したことに納得できていませんが、彼女は自分のご主人が、「自分よりサトルのほうが魅力的である」ということを受け入れていないということを言っているのでしょうね。

サトルの真の目的

ここで、ふと疑問が湧きます。

どうしてサトルは大切にしていたナナを手放すのでしょうか?

また、どうしてサトルはナナと旅をしようと思い立ったのでしょう?

その理由は最後に明らかにされます。

この本の大きなネタバレになるので、後半の登場人物の紹介はあえて省かせていただきました。

彼の秘められた理由が明かされたとき、あなたは「大切な人たちに会いに生きたい」と心から望むことでしょう。

主題歌:スピッツ/さすらい

スピッツのさすらいです。

奥田民生さんのカバーで、出川哲朗さんの番組で話題の一曲です。

「さすらおう、この世界中を」というサビが、歌っていてとても気持ちがいいですね。

おるたなというアルバムに収録されています。

伸びやかに歌うオリジナルの奥田民生さんバージョンも素敵ですが、ここでは私個人の趣味で爽やかな草野マサムネさんバージョンを紹介します。

晴れた日に聴きたくなる、旅にはもってこいの曲です。

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