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『とりつくしま』あらすじと感想【死後、モノにとりつくことで見えてきた景色】

『とりつくしま』あらすじと感想【死後、モノにとりつくことで見えてきた景色】

大切な人を亡くした時に襲ってくる、心の中にぽっかりと大きな穴が空いた様な感覚。

これが現実だと受け止めきれず、全身から力が抜けていく。

周りの声さえ聞こえず、気がついたら時間だけが過ぎていく行き場のない喪失感。

遺された人間にとっては、もう二度と味わいたくない辛い経験。

 

見送った人間は誰しも心の中で「天国で安らかに過ごしてください。そして、私たちを見守っていてください。」と願うだろう。

そして、「あの人はきっと近くにいる。」と感じる時がないだろうか。

では、旅立った人間はどうか。

すんなりと、自分が死んだことを受け入れられるのだろうか。

大切な人を置いて先に旅立ってしまった者は、「自分がいなくても大丈夫!」と安心できるまで傍で見守っていたいのではないだろうか。

こんな人におすすめ!

  • 大切な人と中々会えない
  • 辛い別れを経験した
  • なんだか寂しい

あらすじ・内容紹介

この世に未練を残したまま旅立った後、1度だけ身体の代わりに大切な人の身近なモノにとりついて様子を見守ることができる。

そのような状況になったら、あなたは何を選びますか。

ただし、生き返ることや、既に魂のある生物(動植物等)にはとりつくことができない。

とりついたとしても、自分から何かを発信することはできないなど、一定の制約はある。

ある人は妻の日記と答えた。

別の人は図書館員のネームプレートを選び、お母さんとよく行っていた公園のジャングルジムを選ぶ者もいた。

とりつきたい目的や、とりつく先も十人十色。

歌人・東 直子(ひがし なおこ)による、あの世で「とりつくしま係」と「とりつき契約」を交わした11人のほんのり切ない短編物語。

『とりつくしま』の感想・特徴(ネタバレなし)

とりつき契約とは?

「君は今、なりたいモノに、なれるのです。なりたいな、と思ったモノを一つだけ、言ってみてください」

自分は本当に死んだのか、何で死んだのかもよく分からない状況下で、「とりつくしま係」と名乗る者に突然話しかけられた。

この世に未練を残し、旅立って来た者にしかとりつく機会を与えられない魅惑のひと言。

この甘い誘惑に乗るか乗らないか。

とりつくしま係は、てのひらをこすりあわせて、その間から一枚の半透明の紙を出現させた。

「これが契約書になります。これに、息を吹きかけてください」

契約内容(とりつくモノ)が記載された半透明の用紙に息を吹きかけると、気がついたときには契約したモノにとりついている。

とりついたモノが半分以上消えてしまうと、この世から消え、他のモノにとりつくこともできない。

消えるリスクもあるが、それを承知でとりつくしまの途を選んだ者の心残りとはなんだろうか。

死を受け入れるきっかけ

あの世に着いてすぐ、自分の死を受け入れられる者は、そう多くないだろう。

不慮の事故や病気と死因は様々であっても、やり残したことをゼロにして逝くのはどれだけ難しいことか。

心残りは、むちゃくちゃある。だって、あたし、まだ十四歳だったんだよ。嘘でしょって、感じ。嘘にしてほしい。嘘にしたい。嘘だと思う。

自分の死を認めたくない人がとりつくしまになって体感するのは、自分が存在しなくなった日常である。

少々残酷だが、自分がいなくなった世界でも、他の人は生きていける。

それが現実だ。

悲しみを乗り越えた新しい生活を目の当たりにすることで、「あっ、自分は本当に死んだんだ。」と実感するのだろう。

理想と現実のギャップ

とりつくしまになったとしても、自分の想像とは違う光景を見る場合がある。

身体は無くなっても感情は生きている。

とりついたことで、見たくなかったものを見てしまい、辛くなることだってある。

違う。そのくちびるを、手を、受けるのは、あたしなのに。いやだ、こんなの。見たくなかった。こんなの。見なくちゃいけないなんて、地獄だ。とりつくしまなんて、もらうんじゃなかった。

それがどんなにショックで辛いことであったとしても、泣くことや、声を発して気付いてもらうことすらできない。

とりつくことが、その人にとって必ずしも良い結果に繋がるとは限らない面も妙にリアルに描かれている。

まとめ

大切な人と会えず淋しい日々を過ごされている方、突然の別れで辛い思いをされた方の元へ届けたい1冊として紹介させていただきました。

いつ・どこで・何が起こるか分からない日々の中で、後悔をしない生き方をしたいとも思いますが、大切な人を失ったとき、本書のように近くで見守ってくれていてほしい。

きっと、とりつくしまは存在していると思わずにはいられない作品でした。

死後も大切な人を想う気持ちは消えないでしょうし、健やかな日々を過ごすことを願ってくれていると思います。

この世で生きる私たちは、そんな人たちを忘れないようにしたいですね。

よろしければ、死後、自分の存在が消えてなかったことになってしまう死者の国を舞台に、家族愛を描いたディズニー映画『リメンバー・ミー』も併せてお楽しみください。

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