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『アウシュヴィッツの図書係』あらすじと感想【勇気と希望を忘れなかった、ある少女の物語】

『アウシュヴィッツの図書係』書影画像

『アウシュヴィッツ収容所』

そう聞くと、大量虐殺といった悲しい出来事を頭に思い描く人がほとんどだと思う。

今回紹介するのは、その収容所内で密かに活躍していた、とある少女の話だ。

彼女は秘密の図書係として、アウシュヴィッツ収容所で働いていた。

本を読むことが禁止されている収容所で、なぜ彼女は図書係になったのか?

これは、歴史の教科書には出てこない、1人の少女の戦いの物語だ。

こんな人におすすめ!

  • 本が大好きな人
  • 勇気をもらいたい人
  • 戦時中の様子を知りたい人

あらすじ・内容紹介

1944年、アウシュヴィッツ・ビルケナウ収容所

教育も、本を読むことも禁止され、絶滅収容所とも呼ばれたその場所の一画で、青年フレディ・ヒルシュが率いる学校が密かに開かれていた。

そこで使われている8冊の本を守り、管理していたのは、ディタ・アドレロヴァという14歳の少女。

彼女の図書係としての仕事は、本を貸し出し、修繕し、看守たちに見つからないよう本を隠すことだった。

ある日、ディタは〈死の天使〉と呼ばれている医師のメンゲレに目をつけられてしまう。

メンゲレは、子どもたちを使って酷い実験していると噂され皆に恐れられていた。

ディタは本のことがばれ、罰として自分も実験台にされるのではないかと気を揉むが、持ち前の勇敢さを胸にメンゲレに立ち向かうことを決意する。

劣悪な環境の収容所内で、子どもたちと教師に希望を与え続けた本たち。

生き延びるだけでも困難な状況の中、本を託されたディタの戦いが始まる。

『アウシュヴィッツの図書係』の感想・特徴(ネタバレなし)

秘密の図書係としての仕事

アウシュヴィッツ・ビルケナウ収容所では、本を読むことは禁止されている。

なぜなら、ものを考えることを促すからだ。

そのため、本来収容所内に本が存在しているはずがないのだが、「三十一号棟」と呼ばれるバラックの中では学校が開かれ、そこで密かに8冊の本が隠されていた。

これらの本は、収容所を仕事で訪れた大工や電気工がこっそりと持ち込んだもの。

地図帳や小説、幾何学や心理学の本など種類はさまざまだ。

ディタの図書係としての仕事は、どの先生にどの本を貸し出したかを覚えておき、授業が終わったら本を回収し、1日の終わりに隠し場所へ戻すこと。

表紙が取れそうになっている本や、傷んだ本を修繕するのもディタの仕事だ。

ディタはそれらの本を見つめ、優しく撫でた。縁がこすれ、ひっかき傷があり、読み古されてくたびれ、赤っぽい湿気によるシミがあり、ページが欠けているものもあるが、何ものにも代えがたい宝物だった。困難を乗り越えたお年寄りたちのように大切にしなければ。本がなければ、何世紀にもわたる人類の知恵が失われてしまう。本はとても貴重なものなのだ。

本を大事に扱うディタは、時に本を雑に扱う大人に対してはっきりと意見することも辞さないし、本を服に隠しやすくするため、貴重なパンと引き換えに、ブラウスの内側にポケットを作ってもらったりもする。

そこには彼女の仕事への責任感と、本への愛情が垣間見える。

本をナチスに奪われてはならない。

そんな強い決意が、図書係としてのディタを奮い立たせているのだろう。

ディタの勇敢さと強さ

図書係の仕事は、危険と隣り合わせだ。

前述したように、収容所内では本が禁じられている。

もし看守に見つかれば即処刑は免れない。

だが、ディタは図書係をやめない。

なぜなのか?

あきらめるものか。前を向いて進み、しっかりとやりとげるのだ。

ヒルシュはディタに言った。恐怖を噛みしめて飲み込め。そして進むのだと。勇気ある者たちは恐れを糧にする。図書係は、けっしてやめない。

ディタはとても勇敢な少女だ。

本を守るためなら、自らを危険にさらすことも厭わない。

普通の14歳の少女なら、危険を恐れて図書係なんてやらないだろう。

けど、ディタは身を挺して本を守っている。

危険を顧みず、図書係としての仕事を全うしようとする彼女の強さに憧れる。

また、ディタは自身の疑問を解決するために、見ず知らずの大人に自ら接して情報収集する。

14歳の少女とは思えない行動力だ。

疑問を自らの目と耳で確かめようと奔走する正義感の強さ

劣悪な環境にも負けず、メンゲレをはじめとするナチスの看守たちへの恐怖にも負けない心。

ディタの魅力は、その勇敢さと心の強さにあると思う。

生き抜くために必要なこととは?

この作品は、辛く苦しい環境の中でも生き延びていくために必要なことを教えてくれる。

1つ目は、笑うことだ。

笑いは、どんな時でも心を明るくし、支えてくれる。

ディタは、ある悲しい出来事の後、隠している本の中の1冊を読んで笑っていまい、こんな時に不謹慎だと自分を諫めようとする。

しかし、尊敬するヒルシュはいつも微笑んでいることに気付く。

ヒルシュの微笑みは彼の勝利なのだ。彼の微笑みは目の前の人間にこう伝えている。「そんなことで僕は負けない」と。全てが悲しみに満ちたアウシュヴィッツのようなところでは、笑いは抵抗の武器なのだ。

笑うことで、不屈の精神を相手に示し、自分を奮い立たせることができる。

悲しむことそのものは悪いことではない。

だが、その気持ちに取り込まれてばかりではなく、上手く利用するくらいの気持ちでいることが大事なのだ。

 

2つ目は、今を生きるということだ。

過剰に過去を悔んだり、将来のことを恐れたりしても、今は変わらない。

今のこの一瞬一瞬を大事に、一歩一歩踏みしめるように生きていくことが、どんな困難でも乗り切るコツなのではないかと思う。

 

3つ目は、希望を持つことだ。

未来に絶望しか見出せなければ、人は簡単に病む。

希望を持つことは、生きる糧になるのだ。

ナチスは私たちから何から何まで取り上げたけど、希望を奪うことはできない。それは私たちのものよ。

どんな時でも、希望を胸に前進していくこと。

決してあきらめないこと。

この作品は、そんな大事なことを教えてくれる。

まとめ

事実をもとに、フィクションで肉付けされているこちらの作品。

収容所での苦しい生活の中でも、本を守っていた人たちがいたという事実は、本好きとして感謝してもしつくせない。

本を自由に読める環境に幸せを感じながら、今後も大事に本を読んでいきたいと思う。

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