2012年10月25日、午前7時32分の31秒から54秒までの23秒間。
その一瞬で地球中に響き渡った〈大いなる悲鳴〉は、人類を3分の1にまで減少させた。
その半年後の、少し持ち直した世界の最中。
どこにでもいない13歳の少年・〈空々空(そらからくう)〉に、1つの出会いが訪れる。
風変わりな少女〈剣藤犬个(けんどう けんか)〉が目の前に現れた時、彼の日常のような何かは終わりを告げた。
人類を救うための〈英雄(ヒーロー)〉して偉ばれた彼は、特殊スーツ〈グロテスク〉を纏い、人類を滅ぼそうとする悪しき〈地球〉と戦うために〈地球撲滅軍〉に参加する。
彼の前に立ち塞がるのは、地球が送り込む刺客・〈地球陣〉や他のヒーロー、魔法少女、そして惑星。
数多の強敵を前に若き英雄は、果たしてどのように立ち向かっていくのか。
そして、その戦いの果てには何が待っているのか。
奇才・西尾維新が描く、新たなる〈伝説〉が始まる。
こんな人におすすめ!
- 西尾維新の小説が好きな人
- アンチヒーローが好きな人
- ダークな作品が読みたい人
あらすじ・内容紹介
〈大いなる悲鳴〉と呼ばれる、謎の現象。
その深く、沈痛な叫び声は地球全土に響き渡り、その悲鳴を聞いた人類の3分の1は命を落とした。
それから半年後。
平常を取り戻しかけた世界に住まう、どこにでもいない13歳の少年・〈空々空〉は、ある日風変わりな少女〈剣藤犬个〉と出会う。
それを機に、平凡ではなかった彼の日常のようなものは、完全なる終わりを告げた。
人類を救う〈英雄(ヒーロー)〉として、人類を抹殺せんと目論む悪しき〈地球〉と戦うことになった彼は、〈地球撲滅軍〉に所属し、激しい戦いに身を投じていく。
倒すべき敵は、人間と同じように考え、人間と同じように行動し、しかし本人すらも知らないうちに人類を破滅へと導いていく〈地球〉の刺客・〈地球陣〉。
空々空は、特殊スーツ〈グロテスク〉を纏い、〈地球陣〉を倒すために戦いの日々を送る。
徐々に激化していく、空々空の戦い。
同じ〈地球撲滅軍〉に所属する他のヒーローや、四国に跋扈する〈魔法少女〉、さらには多くの〈惑星〉を相手取り、空々空はどのように戦っていくのか。
人類を滅ぼそうとする〈地球〉の目的は何なのか。
そして、その戦いの先に、空々空の未来はあるのか。
奇才・西尾維新氏が描く、ヒーロー小説の大長編。
新たなる伝説が今、幕を開ける。
『伝説シリーズ』の感想・特徴(ネタバレなし)
壮大なスケールの戦い
人類を滅ぼそうとする悪しき地球と戦う、ヒーローになってください
今作『伝説シリーズ』は、これまで数多くの作品を生み出し、今なお新たな世界を創り続けている西尾維新氏の作品の中でも、一際壮大なスケールでの戦いが描かれる。
なんせ、敵は〈地球〉なのである。
数々の生命に満ちあふれた〈地球〉が、人類を滅ぼすために攻撃を仕掛け、それに対抗するため〈地球撲滅軍〉が影で〈地球〉を倒すために戦っている、などという設定は、常人には中々思いつくことすらできない発想ではないだろうか。
また、人類を葬らんとする〈地球〉の攻撃が、〈大いなる悲鳴〉と呼ばれる叫び声であるなどは、想像の埒外のようにすら思える。
更に、その〈地球〉に対抗する組織もまた、強い個性に満ちている。
主人公属する優れた科学技術を持つ〈地球撲滅軍〉や、四国に本拠地を置き魔法少女を擁する〈絶対平和リーグ〉、海外には〈道徳啓蒙局〉や〈人間王国〉などが乱立し、其々が各々の手段を持って〈地球〉に挑む。
想像を絶する設定とかつてないスケールで描かれる〈地球〉との戦争物語から、目が離せない。
癖が強すぎる、個性的なキャラクター達
そんな発想だから僕は人間を滅ぼすことに決めたんだよ
そんな〈地球〉との戦争に参加することとなったキャラクター達は、皆異様にクセの強い、衝撃的ともいえる個性を持っている。
主人公の空々空は、どのような現実に向かい合っても心が動くことのない、そもそも〈心〉そのものが無い少年だ。
その特性、或いは特異性故に人類を救済する〈英雄〉とされてしまった彼は、〈地球陣〉を抹殺するための〈英雄〉に祭り上げられ、いつ死んでもおかしくない壮絶な戦争に巻き込まれてゆく。
そんな彼を取り囲むメンバーもまた、個性豊かな面々だ。
命がけのギャンブラーや燃える血を持つ戦士、生き残りの達人にマッドサイエンティスト、更にはロクでもないクズの魔法少女。
そして、後の空々空の行動原理に大きな影響を与える少女、〈剣藤犬个〉。
生き残りのための戦略が即死トラップにもなり得る中で、一癖も二癖もあるキャラクター達がどの様に立ち回るのかも要注目だ。
独特な語り口の〈神の目線〉
生きることは戦いだ。戦いである以上、当然、負けることもある。
そして、『伝説シリーズ』全編を通した大きな特徴は、著者・西尾維新氏による独特な語り口での〈神の目線〉だろう。
物語を俯瞰して眺めているこの〈神の目線〉は、キャラクター達とは異なる視点から、各々の行動に評価を付け、別パターンを想像し、剰えツッコミすらも入れ始める。
それだけであれば、似たような作品は多々存在するが、西尾維新氏の持ち味とも言える独特な言葉選びが相まって、時にクスリと笑いつつ、物語をスムーズに追うことが可能となっている。
西尾維新節とでも言うべきこの独特の語り口を、是非とも楽しんで頂きたい。
まとめ
〈悪しき地球と戦う英雄〉という、突き抜けたコンセプトで描かれた今作は、『物語シリーズ』や『戯言シリーズ』でもお馴染みの言葉遊びは健在に、西尾維新氏の作品群の中でも群を抜いて壮大なスケールの作品だ。
西尾維新氏の作品群の中でも際立ったボリュームを誇る新たな〈英雄譚〉を、存分に楽しんでほしい。
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