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『小説 仮面ライダーキバ』あらすじと感想【過去と現在が交差する、愛と戦いの物語】

仮面ライダーキバ書評記事のアイキャッチ画像

人とは異なる種族、〈ファンガイア〉。

人より遥かに長い寿命と、強い肉体を持つ彼らは、人の姿を模して人間社会に潜み、人間の〈ライフエナジー〉を吸収して殺していた。

そんなファンガイアと戦うのは、人間とファンガイアのハーフとして生まれた少年、〈紅渡(くれない わたる)/仮面ライダーキバ〉。

自らの内に潜むファンガイアとしての欲求に抗いながら、人を守るために戦う渡。

しかし、人間が作り出した兵器〈仮面ライダーイクサ〉の登場により、渡は人とファンガイアの間で揺れ動き、1つの決断を迫られることになる…。

過去と現在の物語が重なり合い、複雑な様相を呈していたテレビドラマ『仮面ライダーキバ』を、リメイクして1冊の小説にまとめた、もう1つの『仮面ライダーキバ』の物語!

こんな人におすすめ!

  • 『仮面ライダーキバ』が好きな人
  • 『仮面ライダーキバ』に興味はあったが、話数が多く視聴し切れなかった人

あらすじ・内容紹介

人に擬態し、人の生命の源たる〈ライフエナジー〉を喰らう異形の存在・〈ファンガイア〉。

人間社会に潜んだ異種族である彼らはしかし、人と同じく誰かを愛し、慈しむ〈心〉を持つ存在でもあった。

種としての特性故に殺しあう両種族は、世界の影で長きに渡る戦いを繰り広げていた。

そんな中で、互いを〈心〉を持った存在として見ることで、愛を育んだものたちが存在した。

天才バイオリニスト〈紅音也(くれない おとや)〉と、ファンガイアの女王〈真夜(まや)〉。

戦いの中で出会った2人は互いに愛し合い、やがて1つの新たな〈命〉が誕生した。

そして22年後。

人間とファンガイアの間に生まれた少年・〈紅渡(くれない わたる)〉は、バイオリンを作りながら1人洋館で暮らしていた。

人間として生き、人間を守る為に〈仮面ライダーキバ〉となってファンガイアと戦う渡。

しかし自らの内に潜むファンガイアとしての欲求は、徐々に渡は苦しめていく。

そんな中で、人間がファンガイアに対抗するための新兵器〈仮面ライダーイクサ〉が完成。

人間とファンガイアの力の差は逆転し、ファンガイアは人を襲わずとも〈ファンガイアである〉という理由のみで虐殺されていく。

人間とファンガイア、双方にルーツを持つ渡は、激化する戦いの中で何を思い、何を決断するのか…。

過去と現在が入り混じり、複雑な様相を呈していたテレビドラマ『仮面ライダーキバ』をリメイクし、1冊の小説に纏めあげた小説版‼︎

『小説 仮面ライダーキバ』の感想・特徴(ネタバレなし)

再現される、各キャラクターたちの個性

僕……この世アレルギーなんだ

今作『小説 仮面ライダーキバ』は、テレビドラマ『仮面ライダーキバ』の物語を再編し、1冊の小説として描き直した作品だ。

この手の作品で1番恐れられるのが、所謂〈キャラ崩壊〉ではないだろうか。

テレビで見ていたキャラクターが、小説になると雰囲気が一変して別人のようになっている、という事態は、テレビ版を視聴していた読者にとっては非常に深刻な問題だろう(些か個人的な感想も入っているが…)。

しかし今作において、その心配は不要だ。

描かれる登場人物たちは、まるで声が聞こえてくるほどの再現度を誇っている。

〈仮面ライダーキバ〉に変身する気弱な少年・〈紅渡〉や、その父親である天才バイオリニストにして女性好きの自身家・〈紅音也〉、そして音也と1人の女性を奪い合う〈ウルフェン族〉の生き残り・〈次狼(じろう)〉などの登場人物たちは、その特性や能力に多少の違いはあれど、声や表情までイメージできるほど、見事に再現されている。

残念ながら、変身アイテム兼マスコットであった〈キバットバットⅢ世〉や〈タツロット〉などは物語の構成上登場しないが、登場するキャラクターたちの再現度は抜群である為、〈キャラ崩壊〉などの不安は抱くことなく楽しむことができるだろう。

交差する、過去と現在のストーリー

僕のお父さんは紅音也といって、バイオリニストだったんだ

そして、『仮面ライダーキバ』という作品が持っている大きな特徴は、重なり合う過去と現在のストーリーにあるだろう。

1986年を舞台に繰り広げられる紅音也の戦いと、2008年の紅渡の戦い。

2つの物語が密接に絡み合い、やがて1つの大きな物語になっていくカタルシスは、凄まじいものであった。

時代を跨いで物語が繰り広げられるこの構造を、今作でも見事に再現している。

運命に導かれるようにファンガイアと戦うことになる音也と、ファンガイアの女王である〈真夜〉の、残酷で美しいラブロマンス。

そして、人間とファンガイアのハーフとして生まれた紅渡の、戦いと苦悩。

その他にも様々な要素が丹念に描写されることで、ストーリー展開そのものの美しさや、物語の構造の巧みさが際立っている。

『仮面ライダーキバ』というテレビ番組のノベライズとしてではなく、1つの小説として高い完成度を誇る作品だ。

あり得たかも知れない、753のもう1つの結末

その命、神に返しなさい

そして、テレビ版『仮面ライダーキバ』において、異様な人気を誇っていたキャラクター・〈名護啓介(なご けいすけ)〉。

登場初期は凝り固まった正義感でファンガイアを倒し続け、物語が進むにつれて〈離せ!俺は名護だぞ!!〉や、〈キックしなさい〉など、珍妙な言動が目立つようになっていき、最終的には〈遊び心〉を手に入れたことで態度が軟化していったこの人物は、ファンから〈753(なごさん)〉と呼ばれるほどの人気キャラクターへと成長していった。

しかし今作に登場する名護啓介は、序盤の独善的な性格のままに最後までたどり着いてしまったもう1人の〈名護啓介〉となっている。

仮に〈遊び心〉を手に入れることができなかった753が、どのような最後に辿り着くのかは、今作の要注目ポイントだ。

今作を読むことで、753の魅力と〈遊び心〉の大切さを、改めて痛感できることだろう。

まとめ

過去と現在を跨ぎ、複雑な様相を呈していた特撮テレビドラマ『仮面ライダーキバ』。

その小説版である今作は、登場人物のキャラクター性や、作中に漂う空気感はそのままに、1冊の小説として見事に完成された作品となっている。

テレビ版を視聴したことがある人は、アナザーストーリーとして読むも良し、テレビ版を未視聴の人は、今作を読んでから予習しておくも良しの、完成度の高い1冊だ。

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