「最近ついてないなぁ」「うまくいかないなぁ」と思っている、そこのあなた。
“20個のギフト(物語)“が詰まった短編集はいかがだろうか。
読んだ後に心が癒され、「あした頑張ろう」とパワーをもらえること間違いなし。
目次
こんな人におすすめ!
- 新社会人になる方
- 心温まるお話が読みたい方
- 仕事、恋愛がうまくいってない方
あらすじ・内容紹介
数々の賞を受賞している人気作家・原田マハの短編集。
20個の短編が収録されている。
主人公たち(各物語の主人公には名前がなく、皆一人称)はそれぞれ仕事や恋愛、夢について悩み、うまくいってない状況からスタートする。
その状況は、退職する先輩に厳しい言葉をかけられ闘志が燃えたり。
一緒にいる時間を増やしたいのにいつも15分遅れてデートにやってくる彼に不満を持ってたり。
安定を捨て家族の元を離れて自分のやりたいことに向かって頑張るも、うまく進まなかったりと現実に起こり得そうな苦悩やシチュエーションばかり。
そんな主人公たちは悩んでもがいているうちに、それぞれ“小さな幸せ”を見つけていく。
1つストーリーを読み終えた後に心が温まるギフト(物語)が詰まった一冊。
『ギフト』の感想・特徴(ネタバレなし)
四季・自然の美しさを感じられること
今作の好きなところは各物語ごとに美しい四季を感じられる情景が描かれているところだ。
その情景がストーリーのスパイスとして機能しているように感じた。
例えば『窓辺の風景』より、主人公の“私”が交際相手、お母さん、“私”の交際相手をよく思っていないお父さんと食事しにきたときの窓から見えた情景をみてみよう。
レストランの大きな窓からは、よく造りこんだ日本庭園が見渡させる。
ちょうど窓辺に寄り添うにして、もみじの木が立っている。
きのうの夜遅く降った雨のせいが、葉の赤はいっそう深く、午後の日差しを受けてつややかに輝いている。
千代紙を散らしたような華やか枝葉に、席に着くなり母はため息をついた。
私はこの部分を読んで、もみじの葉がおいしく茂って雨露に濡れてより赤みが増し、日差しによってより光輝いている様子が思い浮かび、日本庭園にある美しいもみじの情景が伝わってきた。
楽しかった思い出も苦い思い出も必ず五感で四季を感じとり、思い出として記憶に残るものだ。
“私”含め4人のぎこちない食事の思い出も、このもみじの情景と一緒に思い出として引き継がれていく未来も想像ができた。
いくつかの物語を読んで日本の自然、四季の美しさ、その美しさを味わえるありがたみを改めて実感した。
うまくいってないときこそ気づきにくいこと
生きていると、立て続けにトラブルが起きることが多々ある。
ついてないこと、っていうのは、たいてい、いっぺんに起こる。(中略)
全部、天気のせい。
じゃなくてわかってる。
ほんとは、自分のせい。(『この風がやんだら』より)
今作を読み終えた後にちょうどついてないことが続き、主人公の“私”がこぼしたこの言葉を思い出した。
“私”と同じことを思っていたのだ。
そして「嫌なことしか意識が向いていなかったのではないか」ということに気がついた。
気持ちを落ち着かせて1日を振り返ってみたら、ついていないことのほかにも通りすがりの子供に笑顔で手を振ってもらえたり、職場で何人にもありがとうを言ってもらえたりといいこともたくさんあった。
“私”の思ったことを思い出したことによって、そんな当たり前ではない幸せを見逃していることすら気づきにくいことをストーリーを通して教えてもらえた気がする。
嫌なことがあったときこそ意識も視野を広くしていきたい。
他人の幸せを考えて行動できる素敵な登場人物たち
今作に出てくる登場人物はみんな、まわりの人のことを考えて行動するタイプの人ばかり。
『聖夜、電車に乗って』より仕事、遠距離恋愛を頑張っている主人公の“私“は自分へのご褒美として赤のチェックのウールコートを買ったものの、1人きりのクリスマスになり、聖夜の夜、電車で綺麗で仕事もプライベートも順風満帆そうな雰囲気のOLさんがプレゼントを持ってる姿を見て幸せそうだと思い、卑屈になっていた。
そんなOLさんがプレゼントを電車に忘れたのを見て、自分が正しい行動なのか迷いつつ、すぐに電車に降りて駅員さんにプレゼントを忘れ物として届けたのだ。
自分にないものを見て羨ましくなったり、疎ましく思うことを経験することはあるだろう。
しかしどんな相手でも“私”みたいにどうしたら困った人を助けられるかは考えることはできるはずだ。
“私”が駅員さんに忘れ物としてプレゼントがOLさんの元に戻ってきて欲しいという思いも書かれてあり、彼女の人の幸せを考える気持ちはやはりすてきだと思った。
どんな状況であろうと、自分のことだけでなく、まわりのことにも気を配り、思いやる気持ちを忘れずにいたい。
まとめ
20個のギフト(物語)は1個1個、誰もが感じたことある嬉しい、悔しい、寂しい、楽しいが描かれているので、共感する内容が必ず1個は見つかるだろう。
そして、「いいことがない」と思っている人も、身近なシアワセはそばにあることに気づかされるはずだ。
今作を読み終えた後、私は “心のギフト”をもらえたような気分になった。
ここまで読んでくださったあなたにも、そんなギフトが、届きますように。
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