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『きのうのオレンジ』あらすじと感想【オレンジの登山靴の思い出。生きるために前を向こう】

『きのうのオレンジ』書影画像

もしも自分の両親や兄弟姉妹、同級生や職場の同僚など、自分の身近な人が、大きな病気になったら、あなたはどう受け止めるか。

きっと冷静にはいられないだろう。

もし、病気になったのが自分であったら、より現実を受け止められないだろう。

年齢が若ければ若いほど、「なぜ」「どうして」という気持ちが先走るかもしれない。

今回紹介する藤岡陽子さんの『きのうのオレンジ』は、胃ガン宣告を受けた33歳男性とその家族による物語。

ガン宣告による、不安や恐怖、怒りを感じる描写がある一方、地元岡山で家族と過ごした優しい思い出と共に、主人公がガンと向き合っている。

少しであるが紹介したい。

こんな人におすすめ!

  • 優しい物語を読みたい人
  • 身近な大切な人たちが健康に過ごしていることを願う人

あらすじ・内容紹介

辛い胃痛の検査結果を聞くため、大学病院へ来ていた33歳、飲食店勤務の笹本遼賀(ささもと りょうが)は、医師からこう告げられた。

悪性です。…悪性腫瘍でした。

まだ30代前半の若さでガンと診断されると思っていなかった遼賀は、呆然とする。

決して不摂生な生活を送っているとは言えない自分が、なぜがん宣告されなければいけないのか。

恐怖や不安におびえる中、入院準備のために戻っていた自宅に一つの荷物が届く。

それは弟・恭平(きょうへい)が送ってきたオレンジ色の登山靴。

中学卒業のころ、亡き父と恭平と行った登山で恭平と二人遭難したときに履いていた靴だった。

靴を見て、その登山で初めて「死」を意識したことを思い出す遼賀。

しかし、あの登山では生きて帰るために、ひたすら前に進んでいた。

そして、ガンから逃げ出さないことを決心する。

ガンと闘う遼賀を、母・燈子(とうこ)、弟・恭平、大学病院で再会した高校の同級生で、看護師の矢田泉(やた いずみ)の視点も交えて送るハートフルストーリー。

『きのうのオレンジ』の感想・特徴(ネタバレなし)

ガンを宣告された人の悲痛な叫びと闘病のリアルな描写

遼賀はまだ33歳。

ガンなどの大病を患うには、まだ若い年齢だろう。

どうして、おれなんだろう。

煙草は吸わない。アルコールもつき合い程度。普段はできるかぎり自炊をして、時間のない時はスーパーの総菜を買って食べる。睡眠時間が日によって違うことを除けば、この年で病気になるような生活は送っていないはずだった。

それなのに、胃がんになった。

どうしておれなんだろう……。

このセリフには遼賀の悲痛な叫びを感じた。

また、ガン宣告以降も、抗がん剤治療の副作用や、身体を蝕む痛みの描写も事細かに、感情的に描かれている。

わたしは幸いなことに、これまで大きな病気をしたことはないので、完全に共感できるとは言えない。

だが、自分に置き換えたとき、遼賀の叫びは決して他人事ではないと思った。

そこにリアルさを感じる。

15歳で経験した冬山での遭難

遼賀が「死」を意識したのは、ガン宣告で2度目だ。

初めて「死」を意識したのは、15歳の時、亡き父と弟・恭平と那岐山へ登山したときだった。

久しぶりだったが、これまで3人で何度も登山をし、冬山も経験していたが、恭平が足を踏み外し、腕を掴もうとした遼賀も一緒に転落したのだ。

転落でけがも負った二人は、持っていたテントを張り、救助を待つことにした。

遼賀は、この時のことを次のように回想している。

「雪山に恭平と二人で取り残された時、おれはいったん死を覚悟したんだ。いや、もちろん生きて戻るつもりだった。でも、もしここで死んだらということも真剣に考えた。生きるか死ぬか。自分が生き残れる確率は五十パーセントだと思ってたんだ。」

生きて帰れるとは思っていても、けがによる身体の痛みや不安は襲っていた。

そうでなければ救助を待っているときに、死んだときのために両親への手紙を書かないだろう。

実際は、恭平がより怖がっていたため、遼賀は不安を表に出さないようにしていたという。

この時の記憶は、遼賀はガンを患ってから、何度も回想する。

それは、身体の痛みが激しい時は「死」を連想させる出来事としてだけでなく、生きようと前に進んでいた自分を思い出して、前向きに治療を受ける出来事としても捉えている。

感情の起伏は一進一退かもしれないが、遭難事故は決して負の側面だけでない。

身近な人から見た遼賀

全5章とエピローグから成るこの小説は、第2章で遼賀の母・燈子、第3章で同級生の看護師・矢田泉、第4章で弟・恭平の視点から、遼賀の闘病生活がつづられている。

その中で、母・燈子と矢田泉は、「遼賀」という人間をこう感じている。

遼賀は細やかで、たとえば庭を囲む垣根が壊れていたら、こっちが頼んだわけでもないのに修理してくれるような心遣いがあった。(中略)まだ小さな頃からあの子の身近はなにもかも調和がとれていて、友達とのトラブルも燈子が覚えている限りは一度もない。

ただの同級生……。高校生の頃、どんな時も穏やかで、誰にでも親切な遼賀を見ているのが好きだった。目立った所は特にない。当番でもないのに焼却炉にゴミを持っていったり、水槽の掃除をしたり、開きにくくなった窓の建て付けを直したり。内申書に記載されない仕事を、自分以外の誰にも気づかれずにやっていた。

2人から見ても、遼賀は決して目立つ存在ではなかったが、人が気づかないところに気付く優しい人柄を感じる。

心優しい遼賀がガンを患って苦しんでいる姿に、世の中の無常さを覚えてしまう。

しかし、心優しい遼賀だからこそ、母、恭平、矢田泉、そして職場で遼賀を慕ってくれたアルバイトの高那裕也(たかな ゆうや)も遼賀を支えようとしているのが伝わる。

まとめ

ひと昔前と比べても、がん患者の生存率は格段に上がった。

しかしそれでも、まだ、がんは死に至るイメージが強いと思う。

宣告された本人も、その周りの人間もショックを受けるだろう。

本書はガン患者の闘病の様子を、繊細に描写していると思う。

しかし、この本はただの笹本遼賀という人間の辛い闘病記ではない。

死を覚悟してこの手紙を書いた十五の時から十九年間、自分は何も変わっていないなと思う。新聞に載るほどの良いことも悪いこともせず、特に目立つこともなく生きて……。山に生える、一本の木のような人生だ。

でも、間違いなく自分は幸せだった。過去の笹本遼賀が感じていた幸せを、その後十九年間、同じように感じ続けてこられたように思う。

病気を通じて、振り返った自分の人生。

「自分は幸せだった」というフレーズから、読んでいてどこか心安らかになれると感じた。

涙を流さずにいられない場面もあるが、読後は心優しくなれる本だと思っている。

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