著者は、能町みね子さん。
デビュー作は『オカマだけどOLやってます。』
性同一性障害であり、体は男性、心は女性。
女性の振りをして企業にお勤めされ、ランチタイムなどは「わかる~!!」なんて、男性には到底わからないであろう女子トークをされておられた方です。
そんな、能町みね子さんですが、2007年、戸籍においても女性となり、イラストレーターやエッセイストとしてメディアで活躍。
難病の体験を綴った大野更紗さんの『困ってる人』のイラストや週刊文春のエッセイ『言葉尻とらえ隊』の執筆などもされています。
さて、自分を出せない人見知りの能町みね子さんが編集者から出された企画は、「知らん人んち行ってメシ食う企画っておもしろくないスか?!」。
不承不承、色濃い人々37人と出会い、その方のお宅で夕飯をご馳走になるというドキュメンタリーが始まった。
こんな人におすすめ!
- 自分が人と違うことで悩んでいる方
- 友がみなわれよりえらく見ゆる日の方
- 他人がどんなものを食べているか気になる方
あらすじ・内容紹介
シングルさんの部屋を訪ねて、いつも作っているごはんをいただき勝手にくつろぐ厚顔ルポ。21世紀のひとりぐらしの全貌がここに。
『ひとりごはんの背中』の感想・特徴(ネタバレなし)
ポジティブなスーパーウーマン
世の中には完璧な方がいて、仕事も肩書も立派、収入なども申し分なし。
「落ち込んでる時間ってムダっぽくないですか?」なんて、超前向きポジティブ思考。
お家は素敵で料理も得意。
そんなスーパーウーマンを訪れた日には、ドンと落ち込む。
自分の不甲斐なさの沼にはまり、消化器官に不調をきたす。
苦手な食べ物も多いから、素敵なメニューとわかりつつも美味しく頂けない。
そんな自分が嫌になり落ち込む著者。
自称:堂本剛の彼女
テレビで初めて見た瞬間に交際開始(本人談)~中略~バイトの給料を全部つぎ込み「ガラスの少年」を50枚買って、愛媛で配り歩く。
そんな10代を送った現在28歳の女性がおもてなししてくれたのは、「具ナシ100均うどん」だ。
部屋に客人を迎えた時お茶を出したりしない。「飲み物ないんです」という。
この気遣いのなさが、著者には居心地がいい。
職業はアイドルのマネージャー。
アイドルに惚れ込んだからこそ、アイドルファンの心理がわかるそうです。
漫画家のすぎむらしんいち先生と清野とおる先生
清野とおる先生のお宅にお邪魔します。
清野先生は、高校の頃からの暗黒時代の日記を持ってきてくれた。
カッターでズタズタの表示。
中身は小さい文字がぎっしり。
いやー。いまは生活も安定しているのですが、鬱々したときはこれを読んで、今はまだマシだと思うようにしているのですよ
(※清野先生は壇蜜さんと結婚されて一躍有名になりましたが、そんな暗黒時代もあった事がわかります。)
そんな清野先生が作ってくれたのは、インスタントラーメン「辛ラーメン」と豆腐を煮たもの。
万能ネギが散らされておりました。
お豆腐はお住いの赤羽のお豆腐屋さんのおばちゃんが定期的にくださるようです。
間接照明をつけ、
「うれしいですよ。僕んちでこんなにくつろいでくれて。」
清野さんが言ったが、私もそう思った。もう取材だか何だかよく分からないけれど、人んちで料理を食べてだらだらくつろぐのは気持ちがいいということを、すぎむら先生というゲストを迎えて改めて思った次第であります。
まとめ
世の中にスタンダード、セオリーあれど、ちょっとほじくってみたら、みんな同じようなもの。
悩んだり、心が真っ黒になったり、すべてを放り出したくなったり。
それでも、ご飯は食べられる訳で。
本書で紹介されているのは37名。
個性豊かな面々ではありますが、実際のキャリアなんかは素晴らしかったりもします。
教育哲学を語る元高校教師、舞台ではタキシードのミュージシャンが作る得体不明の物体。アーバンライフの傍ら不倫トーク炸裂のヘア&メイクアップアーチスト。
社会的にしっかりされている方が、しっかりしたプライベートを送っているかというとそうとも限らないと知らされます。
現に、自己肯定感低めの能町みね子さん。
実は東京大学卒という才女。
能町みね子さんフィルターがかかると市井の人々がキラキラ個性を発揮します。
この記事を読んだあなたにおすすめ!
『あやうく一生懸命生きるところだった』あらすじと感想【頑張ることに疲れてきたあなたへ】
書き手にコメントを届ける