來るべく8thアルバム
今年の3月には『シン・エヴァンゲリオン劇場版????』の主題歌になっている『One Last Kiss』のEPがリリースされた。
一番最初に同映画の主題歌に抜擢された『Beautiful World』と比較すると、抽象性が高く、言葉数も決して多い方ではなく、その表現もわりとシンプルなものだが、映画とリンクする部分はしっかりと、がっちりとリンクする。
詳細は控えるが、ただの歌詞と思わせておいて、実はただの歌詞ではないフレーズが無数にある。
基本的には”タイアップ”は求められた作品と関連する音楽に仕上げなくてはいけない。
が、キーワードを盛大に盛り込んだり、その雰囲気を寄せすぎてしまえば、作品と楽曲がまわり道なく直結してしまい、楽曲単体としての余白が感じにくくなってしまう。
そういった意味で、『One Last Kiss』には”いかにも”なタイアップ臭さがない。
エヴァに興味が無い人からも愛されるポップスの余白がしっかりと残されていて素晴らしいと思う。
現在、『初恋』以降でオリジナルアルバムとして収録されていないのは『Face My Fears』、『Time』、『誰にも言わない』、『One Last Kiss』に加えて、アニメ『不滅のあなたへ』の主題歌である『PINK BLOOD』の5曲がある。
弾丸が十分に装填されている拳銃、または最も浅くなった時の引き潮、はたまた強い力で押さえ付けられたバネを想像する。
上記の楽曲を立て続けに聴くであろう私たちリスナーの心はどんな場所に連れて行かれてしまうのか、どうなってしまうのか全く想像がつかない。
EPとしてカットされた楽曲がどこまでアルバムに入るか分からないが、強力なシングルが揃い過ぎていて、まだこの世界の形になっていない次の作品が恐ろしくなる。
楽曲の持つ雰囲気がバラバラで、こんなにも主張の強い特徴的な音楽が、しっかりと1枚に纏まるのか不安もあるが、こうして彼女が生み出してきた音楽を紐解いていくと、それが全くの杞憂であることは明白だ。
おわりに
詩集『宇多田ヒカルの言葉』にはメロディーの制約がない。
歌詞を調べるためのWebページともまた違う、詩としての言葉とリズムの奥深さを楽しめる一冊である。
対してインストやカラオケバージョンにあるのは、言葉から解放された純粋な音としての魅力だ。
8枚目のアルバムをさらに楽しむために、宇多田ヒカルの緻密な音と言葉を今一度振り返ってみてはいかがだろうか。
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