ある眠れぬ日曜の晩、『関ジャム 完全燃SHOW』というテレビ番組を見ていた。あるシンガーソングライターのパフォーマンスに釘付けになった。あいみょんさんである。
控え目に言って、カッコよかった。さらに、色々と曲を聴いてみると、歌詞も最高に良いことに気付いた。
具体的に言えば、予定調和がなくスリリング、それでいて温かみも感じる言葉選び。こんな衝撃は、女性シンガーでは家入レオさん、コレサワさん以来である(←私は結構惚れっぽい男)。
もちろん直接聞いたことはないけれど、映画や本から、たくさんの言葉やセンスを吸収してきたに違いない雰囲気がある。
あいみょんさんを知ってから1年ほど経ち、是非とも彼女の楽曲を、自分が今まで読んできた本とペアリングさせてみたい!との衝動に駆られ、この企画に立候補したのであります!
それでは参りましょう、アラサー男子の視点で選ぶ「あいみょんの歌詞と音楽が頭の中で鳴り出す本5選」!!
目次
愛を伝えたいだとか
「結局のところ君はさ どうしたいの? マジで僕に愛される気あんの?」
「ろうそく炊いて バカでかいケーキがあっても 君が食いつくわけでもないだろ」
(作詞:あいみょん)
余裕があるのか、ないのか。子どもなのか、大人なのか。グレーゾーンな言葉遊びが味わいになっている曲。
「上から目線のようで、実は好きな人に主導権を握られている」という幸せも表現されているなー、と思います。
ところで、この曲をぜひ聴かせてあげたい、(小説世界の)サラリーマンがいるんですよ・・・
(ちなみに冒頭の「健康的な朝だな」を聴くと、三浦しをんさんの『まほろ町』シリーズに登場する星くんのことも思い出します)
愛を伝えたいだとか×青木祐子『これは経費で落ちません!経理部の森若さん3』
「貸し借りなし、イーブンな関係を望む」「顔を覚えられたらそのお店にはいかない」「会社の飲み会には基本不参加、夜は家でDVD」…美人で優秀、そしてマイルールでガッチガチな完璧ライフを送っていた森若さん。しかしそんな日常に、風穴を空けるような出来事が次々起こり…。
ポジティブすぎる営業マン「山田太陽」との出会いもそのひとつ。それでも経理部の森若さんは、人生初の恋人を「イレギュラー」とバッサリ(笑)。
大抵の女子とは要領よく付き合えるのに、なぜ森若さんだけは攻略できないのか?太陽は戸惑いながらも、その難しさを楽しんでいる様子。『愛を伝えたいだとか』は、彼の幸せなぼやきが聞こえてくる主題歌です。
青木祐子『これは経費で落ちません!経理部の森若さん3』のあらすじ
森若沙名子、28歳。経理一筋6年目。仕事とプライベートはきっちり分けたいと思っている。そんな沙名子に、広報課の室田千晶が相談があると言ってきた。千晶は化粧品会社から転職してきた契約社員で、好感が持てるいい子だ。千晶が来てからは、ショールームも飾り付けられ来客も増えた。しかし彼女は、社内で浮いている。一部女子社員からは嫌われてさえいて…?
(BOOKデータベースより引用)
マリーゴールド
「本当の気持ち吐き出せるほど強くはない
でも不思議なくらいに 絶望は見えない」
(作詞:あいみょん)
もう会えない人との思い出は、相手の個性が強烈なほど、意外と霧がかかってモヤモヤとしているものだ。
映画のワンシーンに迷い込んでいたかのように現実味がなく、だからこそ幻想的に振り返ることができる。
そんなひと夏の経験を閉じ込めたかのようなラブソングが『マリーゴールド』である。
まあ、ただ単に、振り回されまくって記憶が曖昧なだけかもしれませんが・・・(笑)
マリーゴールド×吉本ばなな『TUGUMI』
「団欒なんてゲロが出るほど嫌い」だけど、本気で好きになった人には「ソフトクリームをぐりぐりなすりつけたくなる」破天荒少女、それがつぐみです。
『マリーゴールド』を初めて聴いたとき、麦わら帽子をかぶるつぐみの姿が、一瞬見えたような気がしました。
病弱で気まぐれだから、いつも会えるわけではない。次に手を放したら、どこかに消えていってしまうかもしれない。そんな儚さも、曲の世界観に合っていると思います。
吉本ばなな『TUGUMI』のあらすじ
病弱で生意気な美少女つぐみ。彼女と育った海辺の小さな町へ帰省した夏、まだ淡い夜のはじまりに、つぐみと私は、ふるさとの最後のひと夏をともにする少年に出会ったー。少女から大人へと移りゆく季節の、二度とかえらないきらめきを描く、切なく透明な物語。第2回山本周五郎賞受賞。
(BOOKデータベースより引用)
漂白
「この街で少し愛することを覚えた
また会いに来てね 馬鹿馬鹿しいほどに 私は恋をしていたわ」
(作詞:あいみょん)
心が洗われるような曲。人との別れだけでなく、街を離れる感慨も歌っていると解釈しました。だから卒業や転職の時にもオススメです。
仕事も人間関係も、終わりの足音が聞こえるようになって、やっと自分の本音に気付くことってありますね。
漂白×碧野圭『書店ガール7 旅立ち』
かつて本屋の存続のために戦い、「吉祥寺の女傑」と呼ばれた書店員・理子。しかし、マネージャーとして店舗の整理に関わると、逆に反発される立場になってしまいます。
もう一度、本と人とをつなげるために、自分はどうするべきか。理子だけでなく、シリーズに登場した「書店ガール」たちが、本への愛を試されます。
本や人への愛が感じられなければ、書店も図書館も空虚な本棚です。良い本と出会える場所なら、きっと真っ白な気持ちで帰ることができると思います。
碧野圭『書店ガール7 旅立ち』のあらすじ
中学の読書クラブの顧問として、生徒たちのビブリオバトル開催を手伝う愛奈。故郷の沼津に戻り、ブックカフェの開業に挑む彩加。仙台の歴史ある書店の閉店騒動の渦中にいる理子。そして亜紀は吉祥寺に戻り…。それでも本と本屋が好きだから、四人の「書店ガール」たちは、今日も特別な一冊を手渡し続ける。すべての働く人に送る、書店を舞台としたお仕事エンタテインメント、ついに完結!
(BOOKデータベースより引用)
今夜このまま
『体が帰りたいと嘆く 「いかないで」って叫んでくれる人がいればなあ』
(作詞:あいみょん)
都会の喧騒は寂しさを紛らわせてくれるけど、根本的な解決にはならない。
行動力のある人は沢山いるから、比べるとつい自分を責めてしまう。
そして、結局は「指先から始まる何か」に期待する。ただそれは家でもできる。
帰らない理由を作るのは難しい。
今夜このまま×益田ミリ『すーちゃんの恋』
指先で始まる出会いと言えば、やっぱりスマホ!SNS!といきたいところですが・・・あえてガラケーユーザーな主人公をセレクト。
細かいこと気にし過ぎ!ひとりごと多すぎ!な、すーちゃん。でも、みんなが日々感じているけれど、表現できていなかった感情を「言語化」しているんです。そこはあいみょんさんにも通じるな~と思います。
そんなすーちゃんに、読書家なら誰もが夢見る(?)素敵な「出会い」が巡ってきます。返信をさりげなく気にするすーちゃんを、応援したくなること間違いなし。もちろん、LINEじゃなくて普通のEメールです。
益田ミリ『すーちゃんの恋』のあらすじ
カフェを辞めたすーちゃんの転職先は保育園。子供たちに囲まれて調理師として働き始めて5ケ月。37歳になったら結婚して子供を産んで、「お母さん」として生きていると思っていたのに、結婚どころか、彼氏もいない。そんなある日、すーちゃんに訪れた久々の胸の「ときめき」。これは恋? すーちゃん、どうする!? 共感のベストセラー4コマ漫画。
(BOOKデータベースより引用)
マトリョーシカ
「あいつの全てを知り尽くし 尻に敷いてしまいたいわ
良い子のふりしたマトリョーシカ 2つめの顔を見せましょうか」
「近いうちに愛されるかな、私、私」
(作詞:あいみょん)
「尻に敷いてしまいたい」と「近いうちに愛されるかな」の二面性。
強気と弱気が交互に顔を出す、まさにマトリョーシカで遊ぶような一曲。
声の抑揚、絶妙に韻を踏んだ歌詞と、キレッキレな表現力が光っています。
マトリョーシカ×太宰治『斜陽』
「没落貴族の娘」から「恋の革命戦士」へ・・・かず子のたくましき変貌ぶりには、マトリョーシカも真っ青です。
ネタバレになるので詳しくは言えませんが、「なぜ、私が、うれしかったか。おわかりにならなかったら・・・殴るわよ?」には鳥肌が立ちました。手紙だから殴れるはずもない。しかし、その文章には真に迫るものが確かに感じられる。
「人間は、みな、同じものだ」 いや、生まれ方が同じでも、滅ぶ時に見せる”顔”は全く違う。
太宰治『斜陽』のあらすじ
直治が南方から帰って来て、私たちの本当の地獄がはじまった。
〝斜陽族〞という言葉を生んだ名作。没落貴族の家庭を舞台に麻薬中毒で自滅していく直治など四人の人物による滅びの交響楽が静かに始まる。
破滅への衝動を持ちながらも“恋と革命のため”生きようとするかず子、麻薬中毒で破滅してゆく直治、最後の貴婦人である母、戦後に生きる己れ自身を戯画化した流行作家上原。没落貴族の家庭を舞台に、真の革命のためにはもっと美しい滅亡が必要なのだという悲壮な心情を、四人四様の滅びの姿のうちに描く。昭和22年に発表され、“斜陽族”という言葉を生んだ太宰文学の代表作。
(BOOKデータベースより引用)
まとめ
いかがだったでしょうか?
あいみょんさん自身はまだ10代なのに、合わせた小説は『TUGUMI』を除き、ことごとく大人の女性が主人公でした。特に意識したわけではないのですが、幅広い世代の「物語」にフィットする歌手であると思いました。
あなたも、あいみょん×本が織り成す、自分だけの青春世界に浸ってみてください。
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